**アカシアの木蔭で**

流れていく時間と逆らわずに流れていく自分を、ゆっくりペースで書いて行こうと思います

老人に対するネグレスト

2007年01月28日 | 病棟
昨夜遅く入院してきたおじいちゃん。
訪室して 驚きました。
まるで浮浪者のようなのです。
・・・確か 息子・娘が付き添ってきてたよね?

主訴は ご飯が食べられなくなったこと。
バイタルも安定してるし、それでは 身体保清から始めましょうか。
まず 手浴。手を握って話がしたいから。
まっ茶色に濁るお湯。
顔中に伸びきった髭は・・・
「お髭は伸ばしているの?それとも伸びちゃったの?」
こくりと頷く。丁寧に剃刀をあてていく。
それから 全身清拭に取り掛かるが、服の下は痣や傷だらけ。
一体何度転んだんだろう。髪の中にも切れた後がある。
お尻には硬くなったうんちが お団子になってこびりついている。
赤黒く汚れた皮膚は ちょっとやそっとでは綺麗にならない。
何度もお湯を熱いものに換えながら 落としていく。

一時間格闘して 臭いは薄くなった。
こざっぱりして 別人のようだ。
よし、これで外来の胃カメラに出せる。

検査終了。胃に異常なし。
気になることを外来婦長が言っていた。
「ガスコンドロップをね、惜しむように最後の一滴まで啜ってた」
「食べられない」主訴に 違和感を覚える。
もしかして何日も食べさせてもらってないのかもしれない。
食事をゆるめの全粥キザミ食にしてもらい、
食事介助で観察する。

・・全量摂取。菜っ葉もかまぼこもお澄ましもむせない。
それより 私の胸が詰まったのは、
ゆっくり話しかけながら食べさせていたら
おじいちゃんの瞳から涙が流れていたことだ。
鼻すすりながら 食べてる。
お腹がすいていたのに 自力で食べられなかったのね。
誰も手伝ってくれなかったのね。

怒りを家族に向けた私の発言に、助手さんが なだめてくれる。
「子供たちだって 一緒に暮らしていなければ
 助けられないことが多いんだよ。
 老夫婦二人暮しの危険を掬い取れない社会が悪いんだよ。
 だから、この状態も受け入れようよ。」

深呼吸して いつものスマイルに戻る。

放置は ネグレストと呼ばれるれっきとした虐待だと
社会は家族はきちんと分かっているのだろうか。
弱者を救い上げられない社会は
責任の曖昧な虐待を行なっているのだと私は思っている。

超温厚と言われている私の憤り、察してください

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1 コメント

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今晩は^^ (めりる)
2007-01-30 00:07:07
ずいぶん前に薔薇のことでカキコさせて頂きました。
宮崎のめりると申します。
時々お邪魔させていただいております。

この記事を読みながら涙が出てきました。
と言うのは、横浜の友人(多発性硬化症)
が宮崎の病院に入院できる事になり、
入院から退院までの一年間、
手助けをしてきました。

一昨年の11月に入院して、去年末に退院して
横浜に帰っていきました。

家庭環境により、友人も宮崎にやってきた時には
ひどいものでした。
でも、病院のヘルパーの皆さんがとても
良くしてくださって、
生活レベルは改善されていました。
しかし、入院半ばからリハビリの先生の
いじめを受けることになり、
本人も私もかなりのダメージを受けました。
悲しみが怒りに変わったのも事実です。

なりたくてなった病気じゃないし、
老いたくて老いた訳じゃない。
このおじいちゃんの心の叫びが
マムさんに通じて、良かったね~おじいちゃん
と思いました^^

お休みなさい

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