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『ゴルゴ13』第157巻/さいとう・たかを

2010-07-31 | 青年漫画
  
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ここ数日、『サバイバル』を文庫で揃えだしたりして(第3巻まで買った)私の中では「さいとう・たかをブーム」です。

ゴルゴの最新刊。


『コルタン狂想曲』。表題作。
コンゴ民主共和国のブニアで再会する、岩國スーパーメタルの社長と、マウシオ族の鉱山技師、ンガシャ。
反政府ゲリラと戦うためにマウシオ族を動員できるのはンガシャだけだと、岩國鉄夫は懇願する。ゲリラ発生の根底には貧困があり、鉱山から出るコルタンが貧困を解消する。有意義な事業を達成しようと。

岩國が連絡をしていた、不可能を可能にする男は眼前に現れてくれるが、依頼キャンセルの通知メールの着信が確認できず、口頭でキャンセルを伝えにきただけだと岩國の頼みを断る。だが「お前の希望の半分は叶う事になるだろう……」と言い残す。

ジャパン、大手町では第三世代携帯の市場に参入しようとしている企業が、大手プロバイダーが買収したインフラを使用する第一号の端末を完成させる。しかし資材調達部が端末の量産は不可能だと、コルタンから得られるレアメタルの安定供給ができない現実を説明する。

鉱石を適正価格で買い取ることが貧困の解消に繋がるという岩國の信念の前に、森には呪いがあると言う呪術師が立ちはだかる。

旧東ドイツ領土内の商店で、第二次大戦中のワルサー・シグナルピストルの発展型であるシュトゥルム・ピストルと、当時の榴弾を買うゴルゴ。

自ら銃を持ち、ゲリラに制圧された鉱山を奪還しようとする社長に、その情熱はどこから来るのかと問うンガシャ。父から聞かされた、資源が枯渇して戦争へと進んでいった日本の歴史だと答える岩國。

岩國とンガシャが攻撃を開始しようとした時、呪術師の言葉に呼応するように「ゴリラの呪い」が起こり、ゲリラは壊滅する。
岩盤の下敷きになった岩國は、Gは自分より先にゴリラの保護団体から、ゲリラの排除を依頼されていたのだと知る。そして、アフリカを資源によって幸せにしようとしていた自分の行いには根本的な誤りがあったのだと気付いて息絶える。

岩國の死により、日本は世界の携帯電話市場を独占する望みを絶たれるが、岩國の死に祝杯をあげていた2社のCEOは、次は命を奪うという警告を受ける。

2004年10月作品。



『ペイ・バック』。
現在のベルリン、教会で二人の初老の男が出会う。お茶を勧められた男は、それがロシアン・ティだと気付き、相手はジャムとウォッカ入りだと答える。彼らは共通の友人であるエルンスト・ヴィッツの墓参りに来ていた。
墓前に先客がいて、その老婆は死んだ息子の墓石の前で泣き崩れていた。
婦人から「エルンストの娘が殺される」という話を聞く二人。テレビでは、カフェテリアに逃げ込んだ男たちが人質を取って立てこもっていると報道されていた。
エルンストの友人として放ってはおけないと言う二人。路上でチンピラに絡まれ、お互いのナイフを褒め合い、互いの完璧なドイツ語と英語に感心し、二人の男は相手の正体に気付き、「テッド」「スラーヴァ」とファーストネームで呼び合う。
冷戦時代、東西のスパイが交換されたグリーニッカー橋で顔を合わせていた古い想い出。カンパニーと第四局を共に引退していた二人は、共通の友が天から自分達を呼び寄せたのだろうと、何としてもエルンストの娘を救出しようと現場へ向かう。

現場で指揮を取っている警官から強引に捜査資料を見せてもらい、犯人の二人が独立系テロ組織の人間だと知ったテッドとスラーヴァは、逃走用の車が用意されても人質の命の保障はないと焦る。犯人の片方が手を真っすぐに伸ばして人質に銃を向けており、リボルバーを構えたもう片方が確実に人質を射殺するための保険になっている。二人同時に、心臓ではなく脳を一撃で狙撃しなくてはならない現状に、数え切れないほどの命を奪ってきた元CIAと元KGBは、無力さを噛みしめる。
かつて組織にいた自分達が活かせる利点が一つあると気付くスラーヴァ。「あの男」に連絡する手段を知っている。

スイスからベルリンへ到着したゴルゴは、この依頼はお前たちの「旧職」と関係があるのかと問う。自分の無力さを思い知らされた元工作員の無念の選択だと答える依頼人。彼らの目が嘘をついていないと見抜いたゴルゴは、依頼を引き受ける。

亡き友の墓前で、奇跡が起きたと報告するテッド。すべては彼の計算通りだったのだと、一瞬に起こった出来事を自分なりに解釈するスラーヴァ。我々が無力なのではなく、彼が「特別」なのだと、かつての東西の工作員はささやかな祝杯をあげようと提案する。

2004年5月作品。



『欧亜の狭間』。
アンカラ、トルコ共和国。MIT(トルコ国家情報局)次官は、ささいなミスで解雇された博士を訪ねる。今回のPKK(クルド労働者党)の停戦終了宣言は無視できないと。「コペンハーゲン基準」を満たしたかどうかの判断が下される2004年末まで、EU加盟が悲願の我々はテロの被害に万が一にも遭いたくないと。
ボスポラス海峡は陽動で、本命のBTCパイプを狙うつもりだと気付き、クルド人を煽動した男のアパートに向かう二人。しかしMITはゴルゴがトルコに潜入していたことを掴んでおらず、標的の男は既に狙撃されていた。依頼主が誰なのかはわからない。いずれにしてもトルコと利害の一致するどこかの大国だろう。
背後にはアメリカのイラク攻撃で中東以外の石油ルートが脚光を浴び、国内にクルド人を抱える国々と、産油国から消費地にどうやって石油を運ぶかなどの多くの問題があり、もはやトルコの運命はトルコだけが握ってはいない。

2004年8月作品。



お薦め度:★★★★☆
冷戦が終わり、引退した東西の工作員の友情を描いた『ペイ・バック』はとても良かった。
先日の米露のスパイ交換は見物でした。「やっぱり『橋』で交換するのか!」(笑)

自由主義陣営の繁栄は、常に小国を翻弄し、貧困国の犠牲の上に成り立っている。


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