アルバニトハルネ紀年図書館

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『蔵の宿』第40巻/西ゆうじ・田名俊信

2009-10-22 | 青年漫画
 
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西出と塚原さんが互いに恋し合っているというのがメインの第40巻ですが、その前に挿入されている二つのエピソード、狙われる拓也と箸遣いのできないお客様のお話の内、後者が私はとても好きです。

第458話〜第460話は、生きていれば小学生の息子を去年亡くした須田様ご夫婦のお話。
名所が多く、チェックインの遅れた須田様ご夫婦は、まるで親子のように仲良く海水浴に来ていた蔵元と拓也と偶然会い、蔵の宿へ案内される。真っ直ぐで優秀な拓也を気に入った須田様の奥様は、この子が母子家庭と知る。
亡くした自分の息子と同じ名を持つ拓也を養子にしたいと突然の申し出をする須田様、母の奈々子さんはそれを断る。

蔵人達を召集し、チェックアウトした須田様の行動を見守れと命じる蔵元。「相手は蔵の宿のお客様だ あくまでも見張るだけだ」。
須田様が嘘を吹き込んで拓也をさらおうとする一部始終を見ていた女将は、バカなことをしたと泣き崩れる奥様に、また蔵の宿においで下さいと笑いかける。


第461話〜第462話が、箸遣いのできない、盛岡様の娘の話。
親子で林田さんの屋台を訪れる盛岡様。林田さんは、来月末に嫁ぐという娘の英恵の箸遣いを見て、その時は何も言わなかった。
食事の席に祝いの酒を持ってきた女将は、父親に一献注ぎ、娘が杯を差し出すと黙って酒を引っ込める。自分は酒が飲めるし、その酒は自分の結婚を祝っての物ではないのかと言う娘に、「そのつもりでございましたが やめさせていただきます」と。「そんなひどい…箸遣いのマナーをなさる方に飲まれては このお酒がかわいそうです」。
気分を害し、席を立っていなくなる娘。父から悩みを聞く女将。

親の言うことは聞かなくても、他人の言うことは聞くのが人間だと女将。
なぜ自分に箸遣いを教えてくれる前に死んじゃったのと、月夜を見上げ亡き母を思い出す娘の前に現れたのは林田さん。「それは違うざ 英恵ちゃん」と。28歳は大人だと。子供なら親のせいにしてもいいが、二十歳を過ぎたら箸をちゃんと使えないのは自分のせいだと。
自分は何も言わなかったが、お城の屋台でひどい箸遣いを見て心の中で見下したと、林田さんの本心を聞かされた娘は、女将の言葉が嫌味ではなく自分を思ってのものだと知る。

第40巻の後半が丸ごと、塚原弥生さんとその師匠、西出のエピソードです。
初めて塚原さんが蔵の宿に来た時はあんなに怖かったのに、穏やかな顔になっていると笑う拓也。蔵元夫妻と夕飯をとりながら、いつの間にか福井が大好きになっていたと言う塚原さん。
人力車を引いて西出の元で剣の修行をするという生き方を選んだ塚原さんを、自分達がお預かりしているお嬢さんには違いないと、一度親御さんに挨拶すべきではないかと蔵元夫妻が話していた矢先、彼女の両親が娘を追って福井に来る。
娘が「車引き」をさせられていると激怒する父。「先生に対してその失礼な態度は何よ 謝って」と言い返す弥生。

越前に残る、古流の富田流、幸田隆三とかつて剣を交えていた弥生の父。娘の師匠に相応しいかどうか、西出と勝負をすることに。

勝ち負けではなく、西出という「武士」を知って父が引き下がるのが良かったですね。



お薦め度:★★★★☆
作中では9年が経過し、名実共に名女将となった茜。
相手がお客様であっても、間違っていることは間違っていると、毅然と言える女将が素晴らしい。
「正しさ」というのは決して時代の価値観と共に変わってしまうものではなく、日本人が古来より持ち合わせている美徳と礼節とに根ざしたもので、この漫画が描く「心」は何十年経過しようと褪せることはない。そう思います。


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