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高樹のぶ子のSIAブログ

2008年07月17日 / 芥川賞

料理と受賞者

 いま、羽田にいます。これから戻ります。


 ヤンさんと対談してきました。
これはぜひ、8月6日に発売される「文学界」を読んでください。


 ヤンさんと話していて、思わずすごいな、と思ったのは、芥川賞の選考結果を待っているあいだ、担当の編集者に、自宅で手料理をふるまっていたことです。
料理を作る、というのは、かなり心に余裕というか、楽しい気分が必要でどきどき、はらはら、胸が締め付けられる状態だと、そんな気分にはならないものでしょう。その料理が、とても美味しかったと、担当編集者は言ってました。
私はあらためてヤンさんが中国女性だと思いました。
私もかつて、3回も芥川賞にノミネートされて落とされました。
その3回とも、自分で料理して、一緒にまっている人にふるまうなんて気分ではありませんでした。
ヤンさんは言いました。
「こんな素晴らしい文学のお祭りに参加できていることが、うれしくて、嬉しくてたまらなかった・・」
落とされる不快や身構えとは無縁の、彼女でした。
日本人作家にとっての芥川賞とは、別の意味があったのかもしれません。
対談の間も、ただ嬉しさがほとばしっていました。


苦労はこれからなのかも・・・


                                             高樹のぶ子

コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )

« 受賞者と乾杯 馬とイヌ »

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コメント
 
 
 
それはたいした女性でしたね。 (ISO)
2008-07-17 21:04:42
ご苦労様。
楽しく料理をしながら選考結果を待っていた、のお話しはやはり中国の人のセンスですね。
北京出身の女友達も幸せの感情を、明るくコロコロ鈴が鳴るように語ります。
もちろん中国語ですから、何を言っているのか詳しくは判りませんでした。
日本もそんな感じで話しましたが、中国語とリズム感が全く違っていました。
かなり、いろいろと大変な生活をされていたのかも知れませんね。
恐らくこれからが、大変な作家でしょう。


 
 
 
なんとも深い味わい (乃阿 一葦)
2008-07-17 22:55:23
ブログで、受賞作が発表されるまでの1コマを選考委員が書く。
正に、ネット社会の恩恵!
ほんとうに、かつてこのようなことはなかったのですから。

かつての文士たち。私小説の歴史。芥川賞! 貧乏でないと、苦労、苦悩を背負っていないと、そこから生まれないと文学作品ではない。直木賞、大衆文学。娯楽小説、推理小説、サスペンス、SF、ファンタジー・・

遠藤周作氏は、小説は小なる説だ。大なる説ではない、といって・・。肩の力を抜くようなユーモアをも。

高樹さんも、そのような日本の風土の中で、独自の世界を切り開いてきた。今、選考委員として、その重みを感じているはず。

そして今、中国人女性の書き手が芥川賞を受賞!
芥川や太宰、そして、菊池寛は、どのような思いを懐くでしょうか?

ああ、むべなるかな!

    乃阿 一葦拝
 
 
 
楊逸さんにお願い! (P.R.)
2008-07-18 11:02:15
妙なことを申しますが、芥川や太宰、そして、菊池寛になりかわって(ほんとのところはまったくわかりませんが)芥川賞を受賞するほど日本語に熟達され、しかも中国語はバリバリの母国語である楊逸さんにお願いがあります。是非日本の漢文を勉強して、僕に漢文を教えてください。そして漢文のテキストを中国語で発音して欲しいのです。僕はその発音を一生懸命真似したいです。
日本の漢文という科目は、物凄く変です。テキストはれっきとした中国語なのに、まったく中国語の発音をしないのです。だから、漢文の授業を受けている高校生達は、自分たちが中国語(勿論現代の中国語ではありませんが)を勉強しているとは、夢にも思っていないのではないでしょうか。
僕は、長年大学でドイツ語を教えてきましたが、ドイツ語のテキストを見ながら、ドイツ語の発音を一語も発しないで、日本語でその文法と意味ばかりを教えていると同じようなものです。これは狂気の沙汰です。
こうしてみると、日本は、なんと中国語の恩恵を受けてきたことでしょう、しかもそのことをまったく意識せずに。
それもそのはず、われわれの祖先、つまり弥生(渡来)人は、中国人であり、彼らは、水田稲作と金属ばかりか、中国語と漢字をもたらしたのですから。われわれは、そのことを十分自覚すべきだと思います。そうすれば、現代の中国に対する見方もずいぶん違ったものになるでしょうに。
 
 
 
楊さん再考。 (ISO)
2008-07-18 14:23:54
こんにちは。
高樹さんは三回も?それはそれは修行になりましたね。(苦笑)

楊さんのコメント「在日中国人の中だけで生きるのではなく、日本の主流に入るには小説を書くしかなかった」の発言を少し調べたり考え直してみました。
彼女は23才から地理学の専攻でしたね。
地理学は地区の調査観察し、いろいろと研究応用する学問です。
楊さんの発言の僕が違和感を持った後段、「日本の主流に入るには小説を書くしかなかった」は単にこの「主流」は正直さだけでなく、中国当局に対するコメントだったとも考えられます。
推測ですが彼女は恐らく、今でも中国当局を背負ってるのかも知れませんね。
明るい芥川賞受賞者も有り得る状況が、これからも人の人生にあるのでしょう。

折しも芥川龍之介の遺書の直筆が見つかり、近代文学館(生田勉設計)で初公開とのニュース、「人生は死に致る死との闘いである」と子供に宛てたものも。
僅か35才では勝手過ぎた言葉。


 
 
 
日本語の恐ろしさ (昭和のマロ)
2008-07-19 09:20:26
 楊さんのコメント「日本の主流に入るには小説を書くしかなかった」は、言い方を替えれば「日本語が分かることで日本人になる」ということでしょうか。

 日本で生活している韓国の呉善花さんが言っていますが、日本語に上達しようと思えば、意味ではなく<言わんとするところ>を悟るセンスが必要となる。
 この<わかる>体験がある程度習慣となったときに、人はきっと日本人になる。
 これがテクニックだけで習得できる韓国語との違い、つまり日本語の恐ろしいところだと言っています。
(詳細はわがブログ「昭和のマロ」のなるほど!と思う日々(1)をご覧下さい)

 高樹のぶ子先生、いかがでしょうか。
 
 
 
文学界掲載情報・・・ (ビー玉)
2008-07-22 00:00:38
ありがとうございます。
週末から今日までネット環境になかったもので、今日21日、この記事に気づきました。必ず買って拝読致します。

そうですか、ヤンさんは料理が御上手なのですね。
それにしても、余裕というか、大物というか・・・。

今後の御活躍がまた、楽しみになりました。

昨日の某紙に、芥川賞選考の講評が、高樹先生談として掲載されていました。ヤンさんの作品を受賞作とすることを渋った選考委員がいらっしゃったと書いてありましたが、それは、やはり日本語の表現の精巧さに関する熟成度の難点が問題なったからでしょうか。

努力を惜しまず、読み続けられる作品の書ける作家になられることを御祈りしています。
 
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