TVドキュメンタリーSIA
ここ、「映像で見るSIA」では、これまでのSIAの活動を映像でご覧いただけます。
テキストだけでは伝えきれない、人々の喜び、怒り、悲しみ、楽しみを高樹のぶ子氏と一緒にご体験ください。
※掲載の動画はRKB毎日放送株式会社が製作・放送の「ムーブ2006」「ムーブ2007」「ムーブ2008」「ムーブ2009」「ムーブ」を、WEB SIAのために再編集したものです。
第十話:匂いを食す神々
〜作家・高樹のぶ子が浸ったインドネシア・バリ島(インドネシア)〜
(2010年10月31日放送)
福岡在住の芥川賞作家・高樹のぶ子(64)がアジアを巡り、文学を通して異文化に浸るというプロジェクト『SIA=Soaked in Asia』。10回目の最終回は、多民族・多言語のインドネシアを訪ねる。この国で高樹が選んだ作品は、バリ島在住のオカ・ルスミニ(43)著『時を彫る男』。高貴な家に盲目で生まれた男が、触覚や嗅覚を頼りに独自の審美観を創造し、木彫家として成功する。家族は彼の妻に誰もが美しいと讃える兄嫁の妹を勧めるが、彼は誰も美しいとは言わない身体障害者の召使いを選ぶという粗筋だ。
オカと会い、小説の背景を探る際、高樹は湿潤な気候ゆえに、様々なものが放つ匂いに着目。より濃い匂いを求めて、バリ島ならではの霊媒師やバリダンスの踊り子たちに会いに行く。そのなかで「主人公に実在するモデルはいなかった」とオカは言っていたが、高樹は耳が聞こえない夜盲症の木彫家にも会う。無音の世界に生き、目も見えなくなる夜でも、彼は妻を他の女性と即座に区別できるそうだ。抽象的だが生理的に訴えてくる匂いと、土着の精霊信仰が絡み合うバリのヒンズー教に、高樹は自らがSIAのテーマと課した「知識を超えて愛するために」の方策と意義を発見する。
第九話:神々よ、あなた方は無力です
〜作家・高樹のぶ子が見たインド〜(インド)
(2010年4月25日放送)
SIA9カ国目に高樹のぶ子が訪れたのは、インド。経済大国に変貌したインドだが、今でも身分制度や女性・子供への虐待などは根強く残っている。2人の女性と子供達に出会った高樹はこの国の陰を見た。
ジャスビールさんは妊娠7カ月。今回が初めての代理妊娠だ。謝礼は夫の年収の5倍以上。夫や家族に命じられて生活費を稼ぐために代理母になる女性も多い。本人の意思に関係なく、自らの身体を危険にさらさざるをえない下級カーストの女性の悲しさに、高樹は貧困と女性の地位の低さなどインドが抱える問題の重さを感じた。
「ナバジョティ」は虐待される女性の保護と自立支援のために設立されたNGO。ここには夫からの暴力や金銭要求に悩む主婦達がやってくる。彼女達は教育を受けていないため夫に依存せざるを得ない。インドでは、女性が男性にダウリーと呼ばれる持参金を渡す習慣があり、立場の強い男性が女性に大金を要求することがある。これを断れば暴力やいじめで事件になることもある。持参金を断ったシャムレシュさんは、夫との縁を切り、自立を目指して「ナバジョティ」で裁縫の練習に励んでいる。
インドでは「子どもは金になる」という考えがあり、子供達は国内や近隣諸国で売買され、強制労働や売春をさせられるケースも多い。高樹は孤児たちを保護し共同生活させる施設を訪問した。今では笑顔で暮らしている子供達だが心の傷は深い。人は誰もが平等であるという神の教えとは矛盾するインドの現実。経済発展を遂げた光の陰で、輪廻転生を信じ、現世を堪えて生きる女性や子供達に触れ、高樹が感じた思いとは?
第八話:恨をバネに恨を超える
〜作家・高樹のぶ子が見た韓国〜(韓国)
(2009年10月25日放送)
SIA8カ国目に高樹のぶ子が訪れたのは儒教の国、韓国。経済成長を遂げ、平均寿命も81歳となった韓国だが、出生率は1.1と世界最低に、離婚率も90年代後半から急増し、共に日本を抜いている。
高樹が対談したのは作家パク・ワンソさん。パクさんの作品『親切な福姫(ポッキ)さん』は韓国で30万部というベストセラーだ。主人公のポッキさんは、貧しかった60年代に仕事を求めて上京するが、後に夫となる雇用主に強姦されて妊娠し、前妻の子供も育てながら男性優位の夫婦関係に耐え続けて生きてきた。パクさんは、今の繁栄の陰には、女性の伝統的な犠牲精神があると言う。作品の最後で、ポッキさんはずっとお守りのように持っていたアヘンの缶を、川へ投げ捨てる。そこに文学的意味を感じたという高樹は、配偶者や自分自身、或いは、時代に対して積もりに積もった恨み、『恨(ハン)』に着目し、この小説が現代の韓国で広く読まれている理由を探る。
韓国ではひとたび結婚となると日本とは大きな違いがある。若者たちが口々に結婚したくないと答えるなか、高樹は、やはり前の世代の女性たちが忍従を強いられたことに影響していると感じる。何人もの人の話を聞くうち、子供の頃アヘンが家にあったというイム・スヨンさん(28)と出会う。小説に涙したというイムさんは、ポッキさんに祖母や母の葛藤を重ねて読んだという。若いイムさんの中にも見た『恨』。高樹は輪郭こそハッキリしないが、確かに掴んだ『恨』というものを帰国後のエッセーに綴り、サイアデーの会場で語った。
第七話:性を越えた性
〜作家・高樹のぶ子がタイで見た"性の壁"〜(タイ)
(2009年4月12日放送)
今回7回目のSIAの地に高樹のぶ子が選んだのはタイ。ここで高樹は3人の「性同一性障害」を持つ人々と触れ合う。
一人目は今20歳のオーイさん。高樹は性別適合手術の前日から付き添い、性について語りあう。高樹自身も、その手術に立ち会うことにより、性同一性障害を持つ人々にとって、性はもっとも大切な存在の根拠であり、自らの基本的なアイデンティティであり、手術はそのアイデンティティを確かなものにするために行われているのだと改めて実感する。
二人目は65歳のケーンさん、タイで二人目の性別適合手術を受けた人。ケーんさんが性別適合手術を受けたのは、今25歳になる養女を受け入れた時。ケーンさんは、地域のボランティアを通して地域の人々からの信頼を得ている。どんなに悪い状況の中でも、よい人間として生きていればみんなから尊敬されるものだとケーんさんは語る。
三人目はブッタワナラーム村の村長チュチャートさん。チュチャートさんは、性別適合手術を受けることなく性同一性障害を受け入れて生きてきた。村長のところにはひっきりなしに村民が相談に来る。父親であり母親。男であり女。チュチャートさんは両性を持つことの新しい意義を高樹に感じさせてくれる。
第六話:草原の国 風の子どもたち
〜作家・高樹のぶ子の見たモンゴル〜(モンゴル)
(2008年11月2日放送)
SIAの六回目、高樹のぶ子は草原の国、モンゴルを訪れる。「草原の国」と称されるこの国も近年の乾燥化が進み、環境は思った以上に苛酷である。
広い国土に今でも昔ながらのゲルというテントに住み、放牧で暮らす人々は多いが、各ゲルの脇には太陽電池があり、ゲルの中にはテレビや携帯電話、草原の暮らしも急速に変わりつつある。国の人口の約半分をしめる、首都ウランバートル。その人口は今なお拡大している。
高樹は、モンゴル児童文学の第一人者、ダシドンドク氏を訪ね、ウランバートルから車で10時間のブレクハンガイ村を訪ねる。今はウランバートルに暮らし、移動図書館で全国を廻るダシドンドク氏ではあるが、作品の多くは自然豊かなこの村で生まれる。モンゴルの子どもたちは自然の中で自然を愛しながら育つ、と語る。
モンゴル第三の都市、エルデネト。その郊外に様々な理由で身寄りをなくした子どもたちが暮らす施設、エネレルセンターがある。1990年の民主化、自由経済への移行の過程で社会が混乱し、家庭が貧しくなり、多くの子どもが捨てられた。辛い過去を持つ子どもたちの力強く生きる姿。「この国の未来は、子どもたちがどんな夢を見ることが出来るかにかかっている。」と高樹は語る。
第五話:食べることは生きること
〜作家・高樹のぶ子の見た上海〜(上海)
(2008年4月13日放送)
SIA5カ国目に高樹のぶ子が選んだのは中国、上海。人口1800万人、沸き立つような中国躍進の最中、ダイナミックに変化、膨張を続ける街。この上海に浸るべく今回据えたテーマは「食」。このエネルギーの源は食にあるのかも知れない、食べること、生きること、そしてそれを支える女たちのパワーがあるのではと高樹は言う。
上海に住む女流作家、潘向黎(パン・シャンリー)氏との再会。今回3月22日に開催されたSIA=DAYでも取り上げた彼女の作品。「謝秋娘よ、いつまでも」はレストランの女性オーナーが主人公、文化大革命時に深い心の傷を負った女性が仕事での成功を収めていく物語。仕事の成功と女性の幸せの両立の難しさを描きながらも、女性のしなやかな強さを感じさせると二人は語り合う。
次に高樹が訪れたのは、お茶を使った料理の店を開き成功した女性。今の成功があるのは文化大革命のつらい時期も夢を諦めなかったからだと語る。変わりゆく上海で、女性たちのしなやかな強さが花開く。
高樹は二軒のごく普通の家庭を訪れる。働く妻を支える職を探す夫、文化大革命のときに離れ離れになった家族を支えた母の味。社会進出する女性と家を支える女性、いずれも今の上海の成功を支える女性の姿だと高樹は感じる
第四話:モザイクの輝き
〜作家・高樹のぶ子が見たマレーシア〜(マレーシア)
(2007年10月14日放送)
SIAの四回目となる今回、高樹のぶ子はマレーシアを訪れる。マレーシアはマレー系、中国系、インド系の人々で構成された多民族国家だ。高樹は、これら異なる民族が溶け合っているのか、うまく住み分けて生活しているのか知りたいと語る。
隣接する各宗教の聖地。たとえ距離は近くても、それぞれに別な空気が流れる。異なる民族が一緒に暮らすからこそ、民族のアンデンティティが際立つことを高樹は感じる。
経済格差緩和のためマレー人を優遇する政策「ブミプトラ」や1970年代からのイスラム復興運動により、少数派の中国系・インド系は大きな限界と壁を感じている。国立大学の入学枠も極端に制限されているため、優秀な人材は海外への留学を余儀なくされる。中国系作家リー・テンポ氏もその影響を受ける一人である。彼は生活のために教師を行っていると語る。最近は同じ中国語圏の台湾や中国本土に希望を見出している。
世界に対立の構造が進む中、それぞれの民族が自らの言葉、宗教、生活習慣を頑固に守りながらひとつの国となるマレーシア、闘うより棲み分け、共存の道を模索させているものは何なのか?
第三話:四時五分の生と死
〜作家・高樹のぶ子が台湾の孤島で見たもの〜(台湾)
(2007年4月8日放送)
高樹のぶ子は、台湾本島から30分ほどのランユイ島に向かっていた。3回目の今回、高樹を惹きつけたのは、ここ台湾だった。
ランユイ島は台湾の南東に位置する人口4000人、少数民族のタオ族が暮らす島だ。島の周囲は40キロ、1時間もあれば1周出来る。かつては、半農半漁、自給自足の生活だったが、今では仕事や進学のため、台湾本島で暮らす人が多い。昼間からお酒を飲み、盛り上がるおばあちゃんたち。高樹は自然とその輪に加わっていた。みんな片言の日本語をしゃべる。日本が台湾を統治していた、20世紀前半、この島でも日本語教育をしていたからだ。
タオ族の作家、シャマン・ラポガン(Syaman Rapongan)。彼は伝統的なタオ族の生活をベースにした小説を数多く出版している。かつては彼も大学に進学するため島を出た。しかし、自らの文化を知らないことに愕然としたかれは、「ほんとうのタオ人」になるため、32歳のときに家族と一緒に島に戻ってきた。今では執筆の傍ら、海にもぐって魚も獲っている。
高樹のぶ子は、1週間島の人々と生活を供にした。原始と近代化が共存する島、生と死が共存する島で、高樹が見たものは……。
第二話:一夜妻で母になった
アメリカと闘い傷ついて……(ベトナム)
(2006年11月26日放送)
気温40度、湿度80%を越える熱帯の地、作家、高樹のぶ子が次に選んだのは、ベトナムだった。大河メコン川は、マルグリッド・デュラスが自らの少女時代を描いた小説「愛人」の舞台。高樹はずっとこの地を訪れたいと思っていた。
今回の旅のテーマは戦争と恋愛。道路の真ん中にテントを立てて、宴会が行われている。どうやら結婚披露宴のようだ。どこにでもある幸せな風景。今のベトナムは、自由に結婚し子供も生むことが出来る。しかし今から30年前、ベトナム戦争当時はそのどちらも容易ではなかった。
ここベトナムでは、他国による植民地支配や度重なる戦争が、人々から自由な恋愛を奪ってきた。女流作家チャン・トゥイ・マイ(Tran Thuy Mai)との対話で、そう実感した高樹はさらに深く戦争の影へふみ込んでいく。戦争で視力を失った画家と一夜妻でシングルマザーとなった元女性兵士、戦争に翻弄された2人。高樹は、そこに悲劇だけではない、人間の強さとたくましさ、そして愛を感じた……。
第一話:カミリンの星の下で
〜作家・高樹のぶ子が感じたフィリピン〜 (フィリピン)
(2006年4月2日放送)
1月でも30度を超える熱帯の地、フィリピン、マニラに高樹のぶ子はいた。
2005年10月、高樹は九州大学の特任教授に就任。講義の代わりに、半年に1度、アジアで書かれた1つの小説を選びその作家との交流や、訪れた場所で高樹が感じたことを作品として発表する。そのプロジェクトは「アジアに浸る(Soaked In Asia)」という英語の頭文字を取って「SIA(サイア)」と名づけられた。5年で10カ国をめぐる壮大な計画、その1回目がフィリピンだった。
小説を通してその国を感じたい、それが作家、高樹のぶ子流のアプローチだった。
高樹はこの地で書かれた沢山の小説を読み、ある作品に興味を持った。その作家、グレゴリオ・C・ブリヤンテス(Gregorio C. Brillantes)。執筆をはじめた大学時代から、数々の著名な賞を受賞したフィリピンを代表する作家だ。高樹が興味を持ったのは、彼の初期の作品「アンドロメダ星座まで」。
高樹はグレゴリオ・C・ブリアンテスとともに、この小説の舞台となったカミリンの町を訪れ、星空を見上げる。そこで2人が見たものは……。









