SIA人物紀行

◇フォトデッセイ◇ アジアに抱かれる 韓国編

パク・ワンソさんの短編「親切な福姫さん」では、儒教社会の男性優位な家族観のなかで、子供たちのために耐えて生きる女性の半生が描かれている。 自己主張の強い私たち団塊世代の女性から見ると、何とももどかしい限りだが、 パク・ワンソさんの人気ぶりからすると、韓国ではこうした辛抱強い女性が、自分 の母親への情や哀れみにも通じる共感でもって、受け入れられているのも確かなようだ。 主人公の福姫さんは、 . . . 本文を読む


◇フォトデッセイ◇ アジアに抱かれる タイ編

 政情不安の中、バンコクヘ出かけた。  タイは仏教国だ。けれど街角や建物の片隅に立つサムパプンと呼ばれるミニ寺院に祀られているのは八百万の神々。ヒンドゥ教の礼拝所も街の大通りに並び、象の頭を持つガネーシャ神が、線香や添え物を悠然と見下ろしている。若い女性たちがその前で跪いて祈っていた。  一神教世界と違い、境界線や区分というものが曖昧なのは、宗教だけでなく性においても同じで、男女が明 . . . 本文を読む


◇フォトデッセイ◇ アジアに抱かれる モンゴル編

  遊牧民の生活は草を追って移動する。家畜の数は草の繁り方次第、その家畜の数によって草原に暮らす人間の数も限られてくるのだから、つまりは草本位制とでも言おうか。  近年その草が少なくなってきている。乾燥が進み、ウランバートルから遥か南に広がっていたゴビ砂漠は、いまこの街を呑み込む勢いで北上しつつある。  街の中に立っていると、突然人々が騒ぎ始めた。ふと一方の空を見 . . . 本文を読む


◇フォトデッセイ◇ アジアに抱かれる 中国・上海編

  上海を訪問した去年12月の時点では、まだ中国のギョウザ問題は起きていなかった。  凄まじいスピードで成長を続ける上海で、人々は何をどう食べているか、に単純な興味があったし、常住人口が1800万人といわれる大都市で、富裕層から低賃金の労働者まで、飢えることなく食べることができる奇跡を、この目で確かめてみたいと思い、今回は「食」をテーマにしたのだった。  都市の景 . . . 本文を読む


◇フォトデッセイ◇ アジアに抱かれる マレーシア編

 マレーシアという国のイメージはとても掴みにくい。 世界遺産はマレー半島には一つもなく、いまひとつ写真で世界にアピールしにくい。少し前までクアラルンプールのツインタワービルが世界一の高さを誇っていたけれど、それも台北の101ビルに抜かれてしまった。戦争の暗い過去においても、日本との関係においても、ビルマやベトナム、フィリッピンほどには強い印象はなく、シンガポールと較べても、国のイメージがくっきりと . . . 本文を読む


◇フォトデッセイ◇ アジアに抱かれる 台湾編

 台湾の海洋少数民族タオ族は、台東から小型飛行機で二十分の沖合いに浮かぶ蘭嶼(ランユイ)島に住んでいる。作家シャマン・ラポガンさんは、この島を拠点に自らの民族のアイデンティティを、伝承的神話的作品として発信しつづけている。島で生まれたのち台北で勉強し、民族の大切さに気づき、タオの地へと戻ってきた、いわばインテリ。  彼の文学に近づくためには、タオの労働に付き合うしかなかった。まずは山に入って . . . 本文を読む


◇フォトデッセイ◇ アジアに抱かれる ベトナム編

 アメリカがベトナムから敗退して三十年、ドイモイ政策で市場経済を導入したこの国は、オートバイに恋人を乗せた若者で溢れていた。ハノイのホン川に夕暮れが迫るころ、川岸ではラブシーンが繰り広げられ、市内の公園ではカップルが、光の届かない場所を選んで身を寄せ合う。  パン屋の店先では、フランス統治時代からの伝統を受け継いだフランスパンの香りが、通行人の鼻腔をくすぐる、かと思えば、映画館では入り組んだ不 . . . 本文を読む