Short Stories

「SIA Short Stories」とは?

作家高樹のぶ子が、Visit SIAの中でアジア各国の作家と触れ合い、共鳴しあうことによって生まれた短編小説です。

SIA Short Stories

vol.10芳香(ハルム)日記Fragrant Harum Diary (English)

SIA最後の訪問国はインドネシアでした。この国は90%がイスラム教徒で、バリ島を中心に住むバリヒンドウ教徒はわずかです。日々、イスラムの攻勢を受けています。けれどこのバリ島には、生死も対立も懊悩も「匂い」の中に溶かしてしまう不思議な力があると感じました。バリヒンドウと共存する土着の神々もまた、「匂い」を食べているそうです。湿度は高く、古木も石も建物も苔むし、独特の匂いを発散しています。とても性的でもあります。そんなバリ島の自然に身を置いているとき、この「芳香日記」が生まれました。

vol.9ニームNeem (English)

インドは一筋縄では行かない国です。技術の在る部分は世界の最先端を行く一方で、路上で寝起きする人たちも多い。カースト(身分制度)やジャーテイ(出自や職種の上下)といった閉鎖性も依然残されていて、それらがヒンドウ教の教義と絡んで、実態の把握だけでも困難な状態です。そんな国に乗り込んだ私は、自分自身を放り投げたくなるような喪失感と疲労感を覚えました。そして、この「ニーム」が生まれました。ひとつだけはっきりしたのは、「条理の中に生きる先進国の人間を、インドはとことん疲れさせる」ということです。

vol.8唐辛子姉妹The Chili Pepper Sisters (English)

韓国編では、ソウルのお隣の町、クリ市にお住まいの、女流作家パク・ワンソさんの「親切な福姫さん」を取り上げました。パクさんは、あと少しで80歳というご年齢とは思えないほどの、カワイイ女性でした。どうぞこのサイトの映像を御覧ください。 「親切な福姫さん」のテーマは恨(ハン)でしたが、実際には恨を超えた中年女性たちが印象的でした。 私は思いきり対照的な短編「唐辛子姉妹」を書きました。大まじめな姉妹の会話を お楽しみください。

vol.7トモスイTomosui (English)

タイは仏教と王室と、そして性がオープンな国です。性に対する意識が厳格ではなく、第三の性と呼ばれる存在に対して、比較的鷹揚に受け入れられています。 西洋のキリスト教社会と比べて、仏教世界は、古い教典に「人類には4つのジェンダーがある」と記されているように、ある意味豊かです。今回のサイアで取り上げたカム・パカーさんの短編「ぼくと妻」も、男女の区分けだけでは不可能な恋愛関係が描かれています。わたしもまた、これに応えて、妖しく不思議な性の世界を描いてみました。

vol.6モンゴリアン飛行 Mongolian Flight (English)


「男の三つのお話(ダシドンドク)」
モンゴルの夏は、様々な規模のナーダムが行われます。国を挙げてのナーダムもあれば、村ごとの小規模のものもあります。そのほとんどは、草原が美しい6月から7月にかけて行われ、相撲と弓矢と競馬の三種競技です。子供たちにとっては、草原で生きて行く力と知恵を養う大きなチャンスです。この三つの競技を素材とした、寓話性に富む短編連作です。

vol.5 Casting Out (English)

上海で今もっとも注目を浴びている女流、潘向黎さんの作品「謝秋娘よ、いつまでも」は、女性レストランオーナーの、半生を描いた短編です。上海は今、凄まじい高度成長のただなかにあり、女性がバリバリ働いていますが、同時に、時代のうねりの中で男性も社会体制も信じることができず、ひたすらクールに生きるしかない女性の哀しさとたくましさを描いた作品です。では、男はこの激動の中でどう生きているか、が私の短編になりました。一点の赤が、読後の皆様の脳裏に残ることを期待します。。。

vol.4どしゃぶり麻玲 Malei in the Rain (English)

第4回SIAは、マレーシアです。「どしゃぶり麻玲」はマレーシアの中国人マイノリテイ作家リー・テンポさんの「写真の中の人」に触発され、また、クアラルンプールを訪問した折の、豪雨の体験から生まれました。

「写真の中の人(リー・テンポ)」
【あらすじ】金蓮嬌は、クアラルンプールの古い写真館のことなら何でも知っていた。人生の折々に写真館で写真を撮ってもらうから。平凡な結婚にあきたらず、若い男と出奔し、堕ちていく金蓮嬌の人生を、写真館を舞台にノスタルジックに描いている。

vol.3四時五分の天気図 The 405 Weather Chart (English)

第3回目は、台東から小型飛行機で二十分の離島、蘭嶼(ランユイ)島の作家シャマン・ラポガン氏の「天使の父親」に共鳴して生まれた作品、「四時五分の天気図」です。

「天使の父親(シャマン・ラポガン)」
【あらすじ】少数民族タオ族である父親は、いつも酒に浸っている。娘の誕生日に、タコやシャコガイを採るために、素もぐりで海に潜るが悲劇が待っている。悲劇は次々にやってくるが、どんな悲しみも、奇妙な明るさを帯びていて、生も死も、すべてが繋がった大自然の一部だと感じさせる、心優しい短編。

vol.2ジャスミンホテル Jasmine Hotel (English)

第2回目は、ベトナムの女流作家、チャン・トゥイ・マイ氏の「天国の風」に共鳴して生まれた作品「ジャスミンホテル」です。

「天国の風(チャン・トゥイ・マイ)」
【あらすじ】ダンス教室をめぐる父親と娘のそれぞれの恋愛を描いている。 父親の恋愛はベトナム戦争の影を帯びて、失意の中にある。 娘の恋愛は現代的なプレイボーイに傷つきながらも、家族への愛を失わない。 物語は風が吹きぬける茶店で繰り広げられる。

vol.1天の穴The Hole in the Sky (English)

第1回は、フィリッピンの作家、グレゴリオ・C・ブリアンテス氏との交流の中で生まれた「天の穴」。これは、ブリアンテス氏の「アンドロメダ星座まで」に共鳴し生まれた作品です。

「アンドロメダ星座まで(グレゴリオ・C・ブリアンテス)」
【あらすじ】ルソン島のラルラックに住む12歳の少年ベンは、映画と星空が大好き。恵まれた家庭で育ちながらも、夜空を見上げているとき、ふと、未来への不安がよぎる。作者の少年時代の柔らかな感性が、少年ベンに重なる。