思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

2010年の御柱祭・下社山出し

2010-04-13 23:59:19 | その他趣味
を10日(土)に日帰りで観てきた。
が、さすがに日帰りとなると前回の3日間通しで観たときよりも内容は薄かったが、まあそれでもこの祭の独特の雰囲気は感じられた。
以下の15枚の写真とともに振り返る。


10日は少し寝坊して出遅れて、木落し坂の南側には12時すぎに着いた。とりあえず木落しを観たかったので、この日は2本実施した木落しの1本目(秋宮四)には間に合った。が、有料観覧席の券を事前に買って持っている人以外の一般の見物客は坂の真下に入場や通行を規制している状態で、最寄りのJR下諏訪駅から40~50分歩いてきた僕も含めたタダ見の人たちはこのように坂が辛うじて拝める程度にしか見えなかった。
事後報道によると、この日は晴れていたこともあって氏子・観衆の合計で23万4000人の人出があったそうで、出遅れるとこうなるのも仕方ない。もう少し早い時間に来れば坂の左側に移動もできたが、どちらにせよ木落しの瞬間を観ることはきない。
ここにいた数人から、「(御柱祭を)宣伝しすぎ」とか「(有料席で優遇する)旅行会社のツアーを組みすぎなんだよ」とかいうわがまま? なぼやきも漏れていた。まあその言い分はわからなくもないが、全国的に有名な祭はどうしてもそのように商業的な面が先走ってしまう。僕のような他所者の一般人はその隙間を突いてゆくしかない。



で、だったら坂の上はどうなのかと思い、少し手前から上へ行ける回り道があったので登り、その途中から坂の近くに分岐するほうへ登り詰めると、坂の上の様子や御柱の進むか否かを指示・判断する赤旗・白旗・緑旗の振り方も辛うじて観られる場所があった。
僕は前回もこの角度から木落しを観たこともあるが、しかし今回は前回の御柱の滑りが悪いという反省から木落し坂を05年に改修して坂の形状が若干変わったこともあり、そのぶん規制線も10m以上下げられていて、人垣があると観にくい。爪先立ちで腕を上に伸ばしてデジカメやビデオカメラを向ける人多数。でも1本目が落ちる瞬間はなんとか観るというか感じることはできた。
この右下の斜面の木々の隙間から観ていた見物客も結構いた。



木落しが終わると、次(春宮一)の木落しの準備が始まるまでに少し移動できる時間があるので、坂の落ち口をこのように観察することもできる。上から見下ろすと、下方の有料観覧席との距離感はこんな感じ。その観覧席が、地元民優先で事前販売されてネットオークションでも高値で転売されてしまうくらい人気のあるところ。
木落し坂の改修は具体的には坂の窪みを埋めてさらに笹を植えて御柱の滑りを良くした、ということは小耳に挟んでいたが、前回の土だらけの坂と違ってちょっとした笹原みたいな坂になっていた。



2本目も上から観ようと思ったが坂の下の状況も確認したかったので2本目は下から観ることにして下り、坂の北側へ移動。
最大で2時間待ちだったという下諏訪駅とここを結ぶシャトルバス利用で帰る見物客の流れに逆らって坂へ移動する途中、救護所に救急車が出入りもあった。ちょうどケガ人が運ばれてきたところ。
木落しではケガはつきもので(過去に死者も出ているくらい)、こういった施設も必要。設備の目視はできなかったがAED以上の救命的処置もできるようになっていたはず。諏訪と岡谷の病院から医者(この日は外科・内科・神経内科・整形外科の計6名)が数人駆り出されて担当していた。



(3枚目の写真の小川より奥側の)有料観覧席は売り切れで入れないので、無料で観られるところを探すと救護所の裏手があった。だが、木落し坂の上と下しか見えず、御柱の動きは見えない。もうここは妥協して、今回は持参した双眼鏡で氏子たちの動きを遠目から観るしかない。まあ空気感とか歓声とか雰囲気はそこそこ楽しめる。
ちなみに、写真前方に立っている人たちがいるが、その奥が坂の下で、このように立たれると全然見えないよ、とほかの見物客から注意され、結局は後方に下がってしゃがんで観ていた。このような行為はこの場ではひんしゅくもの。
なお、後日報道によると有料観覧席付近に3000人分の無料観覧の場所も設けていたそうだが(前回は僕もそこで1本観た)、連日、当日朝7~8時頃には満杯になったそうで。やはり前回よりも1日単位で見ると人出は増えたか。



2本目の木落しの直後の土煙が上がった御柱の様子。たしかに速度は増していたようだが、落とすタイミングが上の写真のようなではわかりにくく、あまりよく見えなかった。
ちなみに、御柱に数人が乗りながら坂を滑降するのだが、その最前列に乗る「華乗り」が最も勇敢で名誉な役割。だが滑降中に大半の乗り手は振り落とされ、柱に粘り強くしがみついて残る人は稀。しかも柱を落とした直後にその華乗りの名誉な位置を奪おうとするほかの氏子が毎回いて、そこで華乗りを守る役目の氏子とその他の不届きな氏子とが落ちた直後から数十秒間は乱闘騒ぎになるのだが、これがその瞬間。ズームで撮るとわかりにくいけど。肝心の木落しではなくこちらの人的な、この場を借りたちょっとしたケンカ? でケガする人もいるようで。
なお、後日報道によるとこの日1本目の秋宮四の華乗りは僕と同じ34歳の方だったそうで、ずっと大人な祭だと思っていたのに僕ももうそんな歳になったのか……、と複雑な気分。



木落しが終わって規制が解除されて、再び坂の上に移動。上社と同様に木落し前に御柱の後方の追掛け綱を固定するための柱が設置されている。下社のほうがこういったものにも解説板を付けたりして観光資源として活用に積極的。



観るのは木落しだけというのもつまらないので、曳行コースを遡り、翌日に木落しを残している3本の御柱を観に行く。でもこのときで17時前だったので、うち2本の曳行はすでに終わっていたけど。曳行と木落しを同時に観るのは無理なので、日帰りの場合はどちらかに絞らないと。
沿道のいくつかの民家では、このように家の前の玄関や車庫の前におそらく氏子がむやみに立ち入らないようにという牽制の意味でロープを張っている光景もちらほら見かけた。



下社の曳行の木落し前のもうひとつの見所に「萩倉の大曲」というのがある。長さ17m前後もある御柱を、この左カーブを曲がりながら通過させる結構難儀な場所。前回はここも観た。路面の茶色っぽい跡が御柱が通った軌跡。ここは特に曳行中に御柱の真横に棒を持って多数張り付いて方向転換させる梃子(てこ)衆の腕の見せ所。
ちなみに、上社の曳行コース前半にも「穴山の大曲」という、もうちょい緩い右カーブとこのくらいの左カーブが連続する箇所があり、そこも通過も迫力あり。



さらに遡ると、最後の秋宮一(秋宮の4本の御柱のなかで最も大きなやつ)の曳行が予定よりも1時間半押しでまだ続いていたので、辛うじて観ることができた。御柱が大きいだけに、綱引きに参加する氏子の人数もほかよりも多かったかも。この日の17時30分の終了まで見届けた。
で、男綱・女綱を観ると、いくつかの結び目のところにこのように路面との摩擦からの保護のために古タイヤをくくりつけている様子はどの曳行でも見られる。



曳行中の曳き子の全体像はこんな感じ。御柱は写真左奥。綱は100m以上あるか? 大きな御柱だとこのくらいの規模になる。



赤色の法被は、御柱の曳行に欠かせない木遣りの人々。彼らが一回一回、「さあ~ みんなで~ 力を合わせて~ お願いだ~」とか、長唄を唄うというか鳴いて氏子の意思統一ができないと御柱を動かせないので、ここはこのタイミングで鳴いたほうがよい、とか、長時間の曳行で疲れてくる氏子の士気が落ちないように盛り上げつつ流れを常に掴んでまとめる必要がある、と思う(僕が前回から各地で曳行を観た実感からすると)。しかしあまりに鳴く間隔が空きすぎると、早く進みたくて気が急いている氏子たちからは「木遣りー、鳴けー!!」などと適宜ツッコミが入ったりもする。
真ん中の方はたすきを見ると木遣りコンテストで日本一の方だそうで。今回のこの秋宮一を担当している下諏訪地域は特に木遣り保存に力を入れているようで、若手の育成というか伝承にも積極的。たしかにほかの地域よりも巧いかも。木遣りは老若男女やっている様子は各地域で見られるが、小学生も結構多い。
ちなみに以前、諏訪出身の藤森慎吾(オリエンタルラジオ)が小学生のときに子ども向けの木遣りコンテストで優勝したことがある、という自慢話をテレビ『笑っていいとも!』のレギュラー出演初期に披露していたが、やはり上社よりも下社の地域(特に諏訪湖周辺)のほうが盛んかと。



曳行終了後に、多くの見物客は帰って静かになった木落し坂を三度覗く。ここまで5本の木落しが終わり(翌11日は残りの3本)、そうなると笹はかなり剥げている。



木落し坂の左右に登下降できる階段があり、そこから全長100mで最大斜度35度とよく紹介されるこの坂のほぼ中間の斜度が最もきつい箇所を見る。スキーの上級者コース並みか、上から見ると壁みたいだな、と見物客もよく口にしていた。
落ち口は25度程度だが、そこから徐々に急になって、たしかに崖っぽいかも。そんな坂に重量7、8tもの大木をあえて落とす必要のある祭が御柱祭。



下社の曳行の起点の、偶然? にも雑誌『BE-PAL』10年5月号特集の44~45ページでも触れていた棚木場(たなこば)は今回は時間切れで行けなかったが、帰り際に終点の注連掛(しめかけ)には行った。ここに11日夜現在で8本の御柱すべてが到着して、来月8日の里曳き開始まで仮置き状態となる。氏子も見物客も記念撮影する様子がよく見られる。特に写真の、春宮の4本のなかでは最も大きな春宮一が人気がある。
たぶん今月いっぱいの黄金週間前半までだったら、里曳きでまた散り散りになる8本の御柱をここで同時に静かにゆっくり観て触れるので、行ける方は行くと面白いかも。


という感じだった。前回の経験上、日帰りだと消化不良になるかと思ったが意外に楽しめた。

でも、木落し見物はもうちょっと見物客寄りに便宜を図れないものかなあ(「共同建設」というプレハブ小屋の建つ位置とか)とか、沿道でよく見かける出店の相変わらずのぼったくりぶりとか(例えばビール1本500円なんて、麓の酒店や西友でもっと安上がりになるし)、見物客のマナーとか、ツッコミどころはいくつかあったけど。まあほかの祭事でも観られる問題点か。

そういえば観に行った前日の9日(金)に、別件で偶然録画していたテレビ『情報ライブ ミヤネ屋』で、その日の15時すぎにあった春宮三の木落しを生中継していたのを夜に観直したが、初日のほうがまだ木落し坂の笹が摺り減っていない状態で御柱の落ちる速度もより速く、そのぶん迫力があった。木落しだけ観るのであれは初日が最も良かったかなー。NHKや民放の他局も、もちろんLCVも中継車が来ていたが、日本テレビ系列が独占生中継だったなんて、良かったじゃあないか。

来月の里曳きはどの日に観に行くかは、直前に予定が変わりそうなので未定。それぞれ2日ずつは観に行きたいけどなあ。どうだろうか。