断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

先週の長期金利の話

2013-05-26 23:48:48 | 日銀ウオッチ
先週は、長期金利(および株価)の乱高下で
かなりの話題にあふれていたが、

正直、株価がこんなすばやく調整に入るとは
思わなかったし、
長期金利がこんな早い時点で
上昇に転じるとは、予想していなかった。

おいらは別に株もやらないし、
アベノミクスの短期的な政策の効果にも
さほどの興味はないので、
この種の話題にはあんまり関心がないのだが、
(と、いっても、銀行の貸出金利に関しては
会社の仕事に直接かかわってくる話なので
そうほっかむりを決め込むわけにもいかないが)

長期金利が上昇したといったって
それが単に長期国債の価格が下がったというだけの話なら、
さしてどうでもいい話で、
日銀が買い支えればどうにかなる。
「どうにかなる」と、いうのはどうでもいい、ということではない。
とりわけ、これが市場メカニズムに対する全面的な介入であり、
価格操作以外の何物でもない、ということには
留意する必要があると思うが、しかしそれはともかくとして、
いくら国債の価格が日銀によって買い支えられても、
長期プライムレートとの乖離幅が大きくなれば、
当方としては、落ち着いていられない。

要するに、長期の貸出金利と
長期国債の利回りの関係というのは、
いくら裁定取引により結びついているとは言っても、
調達金利と運用金利の関係にある短期のインターバンクレートと
短期のプライムレート、さらににはそこにスプレッドを上乗せした
実際の貸出金利の間の関係とは意味が違っている。
長期金利が下がった、といっても、
それが単に国債の価格が上がったことを意味しているだけであるなら、
つまり、
期待インフレ率も加味した適正な長期貸出金利と貸付人が考える金利と
国債の金利の間に乖離が生じれば、
いくら国債金利が安くても、末端での貸出金利は
ますます上昇することになる。
期待インフレ率は、もちろん、現時点での中央銀行の金融政策と、
将来の金融政策の予想によって左右される部分が大きい。
国債の長期金利を引き下げようとして
ベースマネーを増やせば増やすほど、
将来インフレになるリスクは高まる。
そうなれば、当然、末端のリテール長期貸出金利は高くなる。

ただ、末端で貸し出しを担当している金融機関が
実際のベースマネーの増加に対し、
実際にどの程度のインフレ予想を持っているのかは
ホントのところ、良くわからない。
大体、期待インフレ率の上昇が
長期金利の上昇に結びつく、といった場合、
実際にインフレが起これば、実質金利に対して
インフレ率を加味して名目金利を決定する、というのは
理屈としては分かるものの、
インフレ率が高くなれば、(通常の場合であれば)中央銀行が
金融引き締め政策を行うことで、
これに対処しようとするわけだが、

これが、通常の金利水準の中での
金利の引き上げであるなら、
これが実質金利より高い水準に引き上げられたとしても
物価の上昇と相殺される形で
期待名目金利にはそれほど影響を与えないのかもしれないが
(そうなのか?)、
金利がゼロ近傍まで下がっている中で
さらに量的緩和を続け、
そして日銀当座預金残高が所要準備率の
数倍になってしまった中で、
何らかの理由で中央銀行が金融引き締めを実行しなければならない羽目に
追いやられたら、
いったい金利はどこまで上昇することになるのだろうか、
そんな展望は、全く描けないように思うのだ。
実際には、準備預金がすでに所要準備の数倍に上っているこの上で
さらにベースマネーを増やしたところでインフレに転じるとは
簡単には信じられないが、
しかし、これだけ超過準備があれば、
インフレが起こらない場合でも、
何らかのゆがみが生じて、中央銀行が
金融引き締めをしなければならなくなる可能性は
否定できないと思う。(具体的に、何が起こるかは、
とても予想できるものではないが。)

この場合、リテールの長期貸出金利は
ある程度、固まった水準で上昇することになるのではなかろうか。
あるいは、金融機関にも競争があるので、
すべての金融機関が過剰準備を抱えている中では
容易に長期貸出金利を引き上げることなど
できないかもしれない。
しかしながら、仮に貸倒引当金の水準を現状のままにし、
「金融検査マニュアル」の正常化が
近い将来図られることになれば
(それをしなければ、とてもではないが、
日本経済の成長など、
あり得ないだろう)
たとえ、すべての金融機関が超過準備を抱えている状態であっても、
リスクに見合った金利を取ることにならざるを得ない。
その場合、多くの金融機関が過剰な超過準備を抱えている、ということが
金利の引き上げ要因になるのか引き下げ要因になるのか、
見当つかないのである。
もちろん、最終的には
インフレの兆候が見えるようになれば、
長期金利は上昇し始めるだろう。
しかしながら超過準備は金利(とりわけ短期だが、長期とて
影響ないわけではない)を引き下げる効果もある。

現在、金融機関は
本当にインフレの兆候を何か嗅ぎ取っているのだろうか。
そうではなくて、単に、
アベノミクスによって不動産投資が増えたのに対応して
長期金利を引き上げただけなのだろうか、
それとも、何かもっとよくない予想があって、
それで引き上げられたのだろうか。

住宅ローンにしろ
長プラにしろ、
上昇に転じたとはいえ、
そんな驚くほど急激に上昇しているわけではない。
せいぜい、去年の夏ごろの水準にすぎない。
問題は、これだけ日銀ががんばって
長期国債の買い支えをしているのに、
長期金利が上がってしまった、
あるいは買い支えをしているからこそ
長期金利が上がってしまった、ということではないのか、という点だ。
これが問題になるのは、
次には、
長期金利の指標となるものが、存在しなくなってしまう、
ということだ。
国債金利と貸出金利は、裁定取引により結ばれているとはいえ、
調達金利と運用金利という関係にはない。
日銀による露骨な市場介入によって国債価格が買い支えられれば
指標を失った長期金利が
どのような動きをするかは、
全く予想がつかなくなってしまう。
これは、今度は実物投資のための長期資金を必要とする側から見れば、
極めて重大な問題になりうる、
と、いうことを、
日銀も政府も、少し考えてみてはいかがだろうか。


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