和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

動物詩集。

2008-09-17 | 詩歌
秋ですね。詩などどうですか?
室生犀星著「動物詩集」。各詩についている挿画は恩地孝四郎。表紙もそうです。 分かりやすい詩が並びます。 詩の下に、恩地孝四郎の挿画が描かれております。 恩地孝四郎といえば、版画ですが、版画家らしい 律義な虫の描き方が伝わります。 ということで詩を二つ引用。

   ぶんぶんむしのうた

 だいじな
 ぶどうの葉はたべるし
 おにはをうんこだらけにする
 ぶんぶんむしのかなぶんぶん。

 木をゆすると
 ぽとぽとおちて
 あながあればあなに

 草のかげにかくれてしまふ、
 どうにもしょうのない
 やんちやん ぶんぶん。


   こほろぎのうた

 こほろぎは
 いつもかなしくなると
 口からお茶のやうな
 しるをはきます。
 くろいづきんをかむり
 馬のやうな口で、
 もぐもぐ何かたべてゐる。
 秋がくると
 すぐ
 秋がくるのをしらせます。
 そして山に雪の見えるまで
 晩はないてなきやむことがない。
 こほろぎのうたは
 いつもおなじです。



単純な詩なので、私はそこから数行を繰り返したくなります。

「秋がくると
 すぐ 
 秋がくるのをしらせます。
 そして・・・
 晩はないてなきやむことがない。」

室生犀星著「動物詩集」は昭和18年初版です。
初版は、恩地孝四郎の絵もあるので高いのでしょうか。古本で一万円以上します。現在の復刻版は2520円。以前の復刻版である、ほるぷ出版の古本なら、古本屋で送料もいれて1000円以下。この詩集は、ちなみに室生犀星全詩集には載っておりません。少年少女のための詩ということでかもしれません。そういえば、小野十三郎の作った少年少女のための詩も、小野十三郎全詩集には掲載されていなかった。むやみに現代詩が難解になった原因もその一端は、全詩集の編集方針にあるのかもしれないなあ。と私はコオロギの音を聞きながら愚考するのであります。

あと、私が推薦なのは岩崎書店「美しい日本の詩歌③ 室生犀星詩集・・」。小学生用の図書としてシリーズのように思われます(ですから案外小学校の図書館に置かれているかもしれませんね。普通の図書館にはないかもしれない)。そこに北川幸比古氏の解説があり、よかったなあ。

「動物詩集」には室生犀星の「序文」があります。
むろん少年・少女に語りかけているような口調なのですが、
これが戦争中の昭和18年に出たことを思い描きながら、読むとよいかもしれません。

「・・・いのちといふものを動物のなかに見てゐると、どういふ下等な動物でもいのちを大切にまもるために、飛んだり逃げたりすることが分ります。私はこの『動物詩集』でどういふふうに詩といふものが生まれたり、書かれたりするものであるかを、この沢山の詩のあらはしやうによつて、お話したやうな気がします。・・・脚のとれたいなごの、面白い歩き方をしてゐるのを書いてみても、それだけでも詩になります。なんでもないことで、それが実際にあつたことなら詩になります。詩といふものは一等書きやすいものです。うそを書かうとしたり、見ないで考へたことを書かうとしたら、詩はむづかしくなるのです。こんがらがるのです。・・・私がもつと少年のやうに若かつたら、面白い詩が書けたであらうと、そう思つたほどです。それほど詩は小さい時分に書くと面白いのが出来る気がします。これらの詩は四、五篇をのぞいては、みんなあたらしく書いたものです。」
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