本棚から武石彰夫著「仏教讃歌集」(佼成出版社・平成16年)を
とり出したので、この機会に本に登場する『月』をさがしてみる。
最後の方に成道和讃(じょうどうわさん)がありました。
「ブッダ誕生」とあります。
「『成道和讃』は、康和2年(1100)法隆寺で書写されたようである。
今残るのはその一部だが、きわめて貴重な和讃である。・・」(p216)
「・・・・宗教的体験(縁起の瞑想)により、夜を過ごし
明星が現れた時、仏陀となった。これを成道という。
この和讃のなかの四句が切り出されて『梁塵秘抄』法文歌にある。
寂滅道場音無くて 伽耶山(がやさん)に月隠れ
中夜の寂(しず)かなりしにぞ 初めて正覚(しょうがく)成り給え
これは、釈尊成道を歌った劇的場面である。
『寂滅道場』は、釈尊が成道した場所。
王舎城の西南方尼連禅河のほとりの菩提樹の下。仏陀伽耶(ぶっだがや)。
『伽耶山』は、仏陀伽耶近くの丘。
『正覚』は、正しい仏のさとり。
この歌謡は、『音無く』『寂か』とする音の感覚、
『中夜』とする時の感覚、
『伽耶山に月隠れ』とする視覚の感覚のなかに、
釈尊成道を描き出した宗教讃歌の佳作である。・・・
しかも、現実の場所はインドであり、紀元前525年頃、
満月の夜のこととするが、季節のうつろい豊かな日本の
国土でのできごとをイメージさせ、
『法華経』「寿量(じゅりょう)品」に説く
久遠常住不滅の仏を予想させるものがある。
釈尊成道を歌った法文歌に、
弾多落迦山(だんだらかせん)の月の光(かげ)
さやかに照らせば隈(くま)も無し
仏性真如(ぶっしょうしんにょ)の清よければ
いよいよ光ぞ輝ける
もある。・・・・ 」(p216~217)
はい。この本の和讃から『月』をピックアップさせてゆくと、
『白隠禅師坐禅和讃』(p45)・『梁塵秘抄』(p53・p55)
『西国三十三ケ所観音霊場御詠歌』(p70・p71・p75)
『行基菩薩和讃』(p129)・『教化(きょうけ)と訓伽陀(くんかだ)』
などさまざまに登場しております。
はい。中秋の頃に『月』をさがしてページをめくる楽しみ。
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