和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

満月の夜のこと。

2023-09-29 | 詩歌
本棚から武石彰夫著「仏教讃歌集」(佼成出版社・平成16年)を
とり出したので、この機会に本に登場する『月』をさがしてみる。

最後の方に成道和讃(じょうどうわさん)がありました。
「ブッダ誕生」とあります。

「『成道和讃』は、康和2年(1100)法隆寺で書写されたようである。
 今残るのはその一部だが、きわめて貴重な和讃である。・・」(p216)

「・・・・宗教的体験(縁起の瞑想)により、夜を過ごし
 明星が現れた時、仏陀となった。これを成道という。

 この和讃のなかの四句が切り出されて『梁塵秘抄』法文歌にある。

   寂滅道場音無くて 伽耶山(がやさん)に月隠れ
    中夜の寂(しず)かなりしにぞ 初めて正覚(しょうがく)成り給え

 これは、釈尊成道を歌った劇的場面である。
 『寂滅道場』は、釈尊が成道した場所。
 王舎城の西南方尼連禅河のほとりの菩提樹の下。仏陀伽耶(ぶっだがや)。

 『伽耶山』は、仏陀伽耶近くの丘。
 『正覚』は、正しい仏のさとり。

 この歌謡は、『音無く』『寂か』とする音の感覚、
 『中夜』とする時の感覚、
 『伽耶山に月隠れ』とする視覚の感覚のなかに、
 
 釈尊成道を描き出した宗教讃歌の佳作である。・・・

 しかも、現実の場所はインドであり、紀元前525年頃、
 満月の夜のこととするが、季節のうつろい豊かな日本の
 国土でのできごとをイメージさせ、
 『法華経』「寿量(じゅりょう)品」に説く
 久遠常住不滅の仏を予想させるものがある。

 釈尊成道を歌った法文歌に、

  弾多落迦山(だんだらかせん)の月の光(かげ)
    さやかに照らせば隈(くま)も無し
  
  仏性真如(ぶっしょうしんにょ)の清よければ
     いよいよ光ぞ輝ける

  もある。・・・・     」(p216~217)


はい。この本の和讃から『月』をピックアップさせてゆくと、
『白隠禅師坐禅和讃』(p45)・『梁塵秘抄』(p53・p55)
『西国三十三ケ所観音霊場御詠歌』(p70・p71・p75)
『行基菩薩和讃』(p129)・『教化(きょうけ)と訓伽陀(くんかだ)』 
などさまざまに登場しております。

はい。中秋の頃に『月』をさがしてページをめくる楽しみ。


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