侍道2P ~その11~

2013年05月05日 | 侍道2P
その日は突然やってきた。



街中に鐘の音が鳴り響く。



ピンク影:「なんだ?何があった?」



街の人A:「弦庵様の診療所が火事だー!」

街の人B:「いそげー!」



ピンク影:「おい、弦庵って誰だ!?」

開始早々、主人公にあるまじき発言であった。



弦庵の診療所は炎に包まれていた。



ピンク影:「さよ。来ていたのか」

さよは目の前の現実に衝撃を受けているのだろう、フラフラと中へと入っていく。

ピンク影:「バカ!なにやってんだ。危ない!」

ピンク影はすぐにさよを追う。
そこで見たものは……



弦庵と武藤



武藤:「死ね!」

弦庵:「ぐはぁ!!」



武藤:「悪党、死すべし……」

ピンク影:「いやいやいやいや!なんだこの超展開!?」



武藤:「おい、そこの変態。俺は天原に仇なすものはすべて切る」

ピンク影:「いや、ちょっと武藤君。落ち着こうか。なんなのこの展開。
      私も読者もおいてけぼりなんだけど」



武藤:「貴様もお奉行に逆らうなら切り捨てるまでよ」

ピンク影:「いや、だからね。ちょっと聞いて?3分でいいから。
      前回、お祭りでお団子買ったのね。そこからいきなりこの展開。
      死人まで出てるしさ。
      わかる。わかるよ。尺の都合で急ぐのはわかるんだけど、
      私も読者もついていけてないから、ちょっと説明もらえるとありがたいかなーなんて」



武藤は無言で立ち去っていった。

ピンク影:「聞けよ!」



弦庵:「さよ。泣くな。さよ」

ピンク影:「弦庵!おい、ちょっと状況説明しろ。
      どの少年誌にも形容できない、この超展開を!」



弦庵:「素魔の秘密は、ワシが地獄まで持っていく。だから、泣くな。さよ……」

ピンク影:「おい、弦庵。死ぬ前に説明しろ。何があった。
      素魔ってなんだ!?」

弦庵:「いや、お前……。お前が素魔のこと忘れるとか、一番、ダメだろ」



弦庵:「うっ!」

ピンク影:「マンボ!
      いやいやいや、そういうちっさいボケはいいから!
      弦庵。なにがあった!?素魔ってなんだー!」



弦庵は静かに息を引き取った。

ピンク影はただただ、涙を流すさよを天風に送り届けると、
自宅へと戻ることにした。



ピンク影:「いったい、何があったというのか……」

そのとき……

ピンク影:「殺気!」

???:「遅い。まだまだ修行が足りてないようね」

あっさりとピンク影の背後を取る、くの一。



ピンク影:「その声は、おぼろ先輩」



おぼろ:「ししょーが、あなたのことだから、どうせ今頃、素魔のことなんて忘れてエンジョイしてるだろうからって、
     私をよこしたのよ」

ピンク影:「さすが、おぼろ先輩ッス。自分、もうなにがなにやらわけがわからん状態ッス」

おぼろ:「私がざっと調べたところによると、弦庵は医療用の麻酔を生成する過程で、
     ある副産物を見つけてしまった。それが素魔。今、天原に広まっている麻薬よ。
     弦庵は人を救いたいという心の強い医師だった。
     でも、侍達が戦いを続ける以上、医療の力だけでは多くの人々を救えない。
     金の力で侍達の世の中を終わらせる必要を感じていた。
     膨大な利益を生み出す素魔が彼のその心を肥大化させていったのよ。
     そのことに気がついた武藤は弦庵を殺し、素魔の原料の畑を焼き払ったというわけね。
     武藤は強すぎる正義感を持つ男。そして奉行を絶対的なものとして崇拝している。
     街の人たちを堕落させ、そのことに心を痛める奉行のためなら、
     なんでもする危険な男よ」

ピンク影:「そ、そうだったんスか」

おぼろ:「あなたが面倒を見ている。さよという娘にも気をつけなさい。
     これからあの娘は狙われる立場になるわ」

ピンク影:「え!?なぜッスか!?」

おぼろ:「あの子はあっという間に文字を覚えるくらい頭のいい、まじめな子。
     きっと、あなたから習う以外にも文字の練習をしていたはず。
     もし、あの娘が文字の練習のため弦庵の医術書を模写していたとしたら?
     たとえば、そこに素魔の製法を記した本があったとしたら?
     どうなるかしら?」

ピンク影:「ど、どうなるッスか?自分、よくわかんないっす」

おぼろ:「うふふ。相変わらずバカなのね。
     弦庵が死んだ今、莫大な利益を生む素魔の製法を知る唯一の人間よ。
     天原を牛耳る、あの三馬鹿のいる青門組。
     莫大な金を生むとなれば政府も動く。
     そして人々を苦しめる素魔を憎み、この世から抹殺したい奉行所。
     3つの勢力があの子を狙って動くことになるわ」

ピンク影:「なるほど、わかりました。後は自分が片付けるッス」

おぼろ:「わかったわ。これであなたへの引継ぎは終わり。
     今日は定時であがって、これからショッピングにでも行こうかしら。
     じゃ、後はがんばってね」

ピンク影:「おつかれさまでーす!」

おぼろは一瞬にして、その場を立ち去ったのであった。

ピンク影:「さよを守らねば」

ピンク影はそう決意すると同時に、
本来なら3パートくらいかかる説明を、このパートにねじ込んできたおぼろ先輩の
実力に驚愕するのであった。
というかよくよく考えると7パートくらい素魔とまったく関係ないことをしていたことに
気がついたピンク影であった。
コメント
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