ピンク影:「あいつら、帰ってこねぇなぁ。診察の帰りにどこかに寄ってるな」
弦庵と千代が診察に向かってしばらく、ピンク影は診療所の留守番をしていた。
ピンク影:「まったく、あの2人は何ホテルでオセロして……うおっ!
あのときの娘ではないか。忍者の背後を取るとはなかなかやるな」
娘:「あううー」
ピンク影:「どうした?」
娘:「あううー、あうー」
娘は外へと手招きしているようだ。
ピンク影:「なんだ?手首の運動か?あたりまえ体操か?」
ピンク影:「いったい、外に何があるというのだ」
外には一人の男が倒れていた。
娘は心配そうに男の腹をさすっていた。
男:「痛えっ!痛えよぉ!死んじまうー!」
ピンク影:「このもだえ方はっ!」
娘:「あううー」
ピンク影:「相当、いいパンチが入ったな。お前がやったのか。
え?なに?なにパンチなの?どう打ったの?
二重の極みとか二重の瞼とか、そっち系の技なの?
どこのアイプチ使ってんの?」
娘:「あううー、あうー」
娘は首を横に振って否定する。
ピンク影:「いいじゃん。教えてくれよ。どこで習った?伊賀?甲賀?黒脛巾?
まさか、地張忍軍?」
男:「ひぃぃ!痛ええよぉ!」
ピンク影:「あ、すいません。私も見てみたいんで~。
立ち上がって、もう一発、食らってみてもらえます?」
娘:「あううー」
娘は必死に否定しようとするが……
ピンク影:「心配しなくても大丈夫だよ。
病院のベッドに寝かせておけば、全部、弦庵のせいにできるから」
弦庵:「わしのおらんところで、何を勝手なこと言っておるんだ!」
ピンク影:「ちっ、戻ってきやがった」
弦庵:「むぅ、これは……」
ピンク影:「お前にもわかるか。この娘の必殺パンチ。なかなかの威力とみたぜ」
弦庵:「お前は黙ってろ」
弦庵は男の腹に手を当て、力を入れると
ぼふぅ!!
男の尻からすさまじい勢いでガスが出たのだ。
直撃を受けた娘は……
ピンク影:「む、娘ーーーーーーーっ!?」
弦庵:「この男は貴様が来る前に診察してやった男だ。腹痛だったはずだが」
男:「へぇ、実は診てもらった後、急に腹が空いてきやして。あんころ餅を9つほど^^;」
弦庵:「粥を食え、粥を!」
男は再び、腹痛が治まったのか弦庵に促され自宅へと帰っていった。
ピンク影:「まったく、人騒がせな男だ」
弦庵:「そこの忍者……だったな。変わった男だ」
弦庵:「あの男を見捨てなかったのは褒めてやろう」
ピンク影:「見捨てなかったのは、この娘だけどな」
弦庵:「ふむ。お前が病状を説明できていたら、
この変態にもなんとかできたかもしれんが……。
まぁ、それを言っても始まらんか」
ピンク影:「教えてやればいいじゃん」
弦庵:「わしは医者だ。病気でないものの面倒まではみれん。
あー、誰かこの娘に文字とか教えてくれないかなー。チラッ、チラッ。
暇そうな仮面の忍者『ピンク影』とかいたらいいのになー。チラッ、チラッ。」
ピンク影:「それ、もうフルネーム全部、出ちゃってるじゃん。
もっと台詞に恥じらいを覚えなさいよ」
弦庵:「なんと!お前が文字を教える、だと!?」
ピンク影:「言ってねーよ!!」
弦庵:「どうだ。お前、この男に文字を習ってみるか」
ピンク影:「まだ何も言ってねーって!お前もなに頷いてんだー!」
娘はうれしそうに弦庵に頷く。
弦庵:「とりあえず、仁八に相談してみるがいい。
その子は天風で預かっている身だからな」
ピンク影:「だから、何勝手に話を進めてんだよ!」
こうして娘に文字を教える約束をしたピンク影であった。
第6話に続く
至近距離であれをくらって無事……だとっ!?