軽音楽談話室(廃屋)

「琥珀色に魅入られてしまった人生・・」

Travessia / Milton Nascimento

2012-04-08 02:00:00 | 音楽
1.Travessia
2.Tres Pontas
3.Crenca
4.Irmao de Fe
5.Cancao Do Sal
6.Catavento
7.Morro Velho
8.Gira Girou
9.Maria, Minha Fe
10.Outubro
1967

さてアメリカデビュー盤の「コーリッジ」を紹介した後は原作の登場です。初期ナシメントの代表曲と言うか希代の名曲「トラベシア」を配した傑作アルバムです。この作品を元にコーリッジを作り上げていますが、3曲合いません。アレンジが違いすぎて気が付かない訳ではないと思いますが、3、4。9曲目がそうです。言葉の違いのニュアンスとアレンジが違っていますので、全く別の作品と言ってもいいでしょう。と言う事で、比較して聞くことにいたしましょう。

1曲目 原曲は少しテンポをゆっくりと、素朴なギターがメインでベースは少し後ろ、ストリングスの滑らかさは此方の方が上です。そして最大の違いは言葉、ポルトガル語の滑るようなイントネーションに比べると英語バージョンは悲壮な雰囲気さえ漂います。ボーカルの位置(全ての音の中での)も前面に位置し全ての雰囲気を支配しています。それにしても何百回聞いても素晴らしい名曲ですね。仕事の疲れや細々とした人間関係の縺れを何時も何時も一気に解決、癒してくれます。ううん・・・・歌を味わう曲で言えばマイフェボリットかな。

2曲目 素朴なギターと素朴なフルート、コーラスをバックに淡々と歌うテーマ、バイオリンをバックに雰囲気を変えたサビ。原曲の魅力タップリですが、この曲はコーリッジ・バージョンの勝ち。強力なバック陣が軽快に駆け抜ける快演、デオダートのフュージョン・アレンジの勝利ですね。ハンコックのピアノが素晴らしかった。

3曲目 この曲が「コーリッジ」かと思っていました。ボーカルラインがうねうねと変化する割に盛り上がりのポイントが無く、何となく特徴がつかめないパターンが大変似ていたのですが、英語とポルトガル語では歌詞で判別するのも不可能ですし・・・・違うみたいですね。
鬱々としたストリングス、少し暗めのイントロからボーカルパートに。抑揚を押さえてはいますが、音程の上下は激しい。サビも殆ど変化無しで、淡々と進む曲。間奏のピアノの雰囲気は好きです。歌詞が理解出来ないとこの手の曲は・・・

4曲目 これもコーリッジ未収の曲、前曲と似た雰囲気はありますが、前の曲よりはメロディーに変化があり、キャッチーな展開となっています。絡みつく管とストリングスも積極的、間奏のピアノが短いながらも魅力的、タンバかジンボか?

5曲目 この作品のオーケストラアレンジはかなり古くさいですね、お陰でミルトンのボーカルが引き立ちます。コーリッジのラストでスッキリ、カラリと突き抜けたバージョンも乙な物でしたが(ハンコックのピアノが秀逸)、古くさいオーケストラをバックにミルトンにしては珍しい、バックに海が見える様な曲です。と言うよりは広大な草原かな。

6曲目 曲のテンポは同じ、ボーカルの位置が違っています。英語バージョンはバックの演奏に紛れて、原曲はあくまでもボーカルがメイン。と言うかイントロと終盤の短いスキャットがボーカルパートで、基本的にはインストルメンタルですね。切り込んでくるようなピアノと終始素朴に響き渡るフルートが心地よい癒しの1曲。

7曲目 この曲も両方共に出来は甲乙付け難し。英語バージョンもこのペースなら問題ない無かったんだなぁ、と思ってしまいます。シンプルなギターがワンコードの中で漂うイントロ、ボーカルは聞き手の心にゆっくりと染みいってきます。シンプルなギターの展開がポイントでしょうか、サビ以降が意外と曲展開に富んだ感じで、簡素さと複雑さが対比したような作品です。作品中2番目かな。名曲、ミルトンの本質が伺えます。

8曲目 シンプルなギターに素朴なストリングス、コーリッジ版は素敵なピアノが際立っていました。幻想的なイントロ処理であった分コーリッジ版の勝ちかな。テーマ以降の乗りの良さもコーリッジの方が勝っています。あちらの感想では「ミルトンのサウンドではない」と書きましたが、此方の音も少し暗さが立つ雰囲気が少し辛いかな。

9曲目 映画音楽のようなイントロのストリングスから、悲しげなボーカルが悲しげなバイオリンの音色を纏いながら漂う。悲しげながらもドラマチックに盛り上がり、リズム隊が加わって、より一層哀愁が高まる雰囲気は少し痺れてしまいます。こういう世界もミルトンの音楽には存在するのですが・・・・苦手だなぁ。

10曲目 ムーディーな雰囲気が漂うコーリッジ版も素敵でしたが、シンプルなギターが際立つ此方のバージョンの方が、心に染みいりますねぇ。ボーカルの盛り上がり方もこの曲に関しては比較になりません。ただ・・何でしょうか、コーリッジ版のバックのピアノの方が「いかにもブラジルのピアノの音色」と感じたのは何故なんでしょうか。ハービー・ハクコックの実力のなせる技なのか。

ボーカルに関しては圧倒的に此方の方が素晴らしいのですが、豪華なゲストが参加した「コーリッジ」の魅力を再認識させることが出来る作品でもあります。「トラベシア」の原曲の圧倒的な素晴らしさは別として、「どちらも魅力であり全く別の作品」と言う感想を持ちましたが・・・・問題ないですよね。

ミルトン・ナシメントのデビューから70年代中盤にかけての作品には、同じタイト名の作品が2作存在するパターンが2つあります。まずはデビュー作と69年の「Milton Nascimento」デビュー作は後に「Travessia」とタイトルを変えていますが。もう一つは70年と76年の「Milton」ですが・・・ややこしい。

1967: Milton Nascimento (a.k.a. Travessia)
1968: Courage (A&M/CTI)
1969: Milton Nascimento
1970: Milton
1972: Clube da Esquina
1973: Milagre dos Peixes
1974: Native Dancer (with Wayne Shorter)
1975: Minas
1976: Geraes
1976: Milton (Raça)

本来のデビュー作はインディーズ作品、下記アルバムがそうであれば、曲順が変わっています。前出の「トラベシア」はタイトル曲をトップに持ってきて、ラス前の「Catavento」を6曲目に持ってきています。曲の順番以外に違いはないとは思いますが、インディーズ作品の方が少し音に「派手さ」が目立つような、逆に「トラベシア」とタイトルを変え、全体にシンプルに素朴にミキシングを変更しているような感じもありますが・・・・・気のせいだな。

A1.Tres Ponts
A2.Crenca
A3.Irmao De Fe
A4.Travessia
A5.Cancao Do Sal
B1.Morro Velho
B2.Gira Girou
B3.Maria, Minha Fe
B4.Catavento
B5.Outubro
Ritmos/Codil-CDL 13.004





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