軽音楽談話室(廃屋)

「琥珀色に魅入られてしまった人生・・」

MAKI Ⅵ / 浅川マキ

2011-09-10 02:00:00 | 音楽
浅川マキ : Vocals
山下洋輔 : Piano
森山威男 : Deums
坂田明 : Alto Sax, Clarinet
稲葉国光 : Bass

1.わたしの金曜日
2.港町
3.ジン・ハウス・ブルース
4.キャバレー
5.あんな女ははじめてのブルース
6.今夜はおしまい
7.戸を叩くのは、誰
8.ボロと古鉄
1974

死んでしまわないと作品が手に入らないというのは悲しい物です。一周忌を記念して幻の名品達が発売されていました。「DARKNESSシリーズ」で初期マキの断片は味わうことが出来ましたが、この「MAKIⅥ」はその作品には収録されず長らく「幻」となっていました。特に浅川マキにのめり込んでいるわけではないのですが、山下洋輔氏が絡んでいるので、この作品には深い思い入れがあります。浅川マキの独特の世界観とジャズ・ナンバー「ボロと小鉄」につきるわけで、手に入れることが出来た喜びの反面・・・・・
浅川マキの場合は交友関係が広く、山下氏も何枚かの作品に関わっているし、氏のエッセイにもマキが常連のように登場する、いつの間にか私自身も深く関わっているような錯覚を覚えてしまう「歌手」なわけで「ジャズ絡みだけでもコンプリートしようかな」と考えていますが。

1曲目 愁いをタップリと帯びたピアノの調べ、山下さんが弾いているとは思えないゆったりとした演奏、シットリとしたブルージーさが良いですねぇ。マキのボーカルがゆったりとピアノに寄り添っています。実際ピアノに寄りかかっているような光景が見えてきますね。ピアノソロも今ではなかなか聞くことができないブルージーな演奏が素晴らしい。夢の中というか覚醒仕切っていない幻影的な曲、あああっっ時が止まっています。気怠いなぁ・・・・・

2曲目 この曲があの頃、学生時代からずーっと耳を離れません。明るいブルースナンバー、鼻に掛かった溜声とはすっぱな歌詞が心地よい。軽快なトリオ演奏も今聴くと大変オシャレですね。この頃の正当派スタイルのピアノトリオとしては貴重な演奏です。山下さんの原点が垣間見えます。それにしても良い曲ですね、振幅が最高に心地よいです。「ねえっ、ちょっと、水夫さん!!」

3曲目 入りのピアノが少しホンキー、会場が違うのか?歌詞の内容としては前の曲に似ています。昔はそれほど気にしませんでしたが、粋な歌詞ですね。ゆったりとしたトリオをバックに淡々と流れるような少し宙を浮いているような歌い方です。(時々引っかかりますが・・・)森山さんの普通のシンバルワークというのも新鮮ですね、坂田さんのクラリネットは普通かな。私もジンを一杯おごりたくなります。ジン・ハウス・ブルース名曲です。

4曲目 シットリとしたバラードです。この曲は歌詞が大好きです。

ジャズのバンドは、すすりなくもんかね
ジャズのバンドは、 陽気だそうだが
下卑たダンサーがおどりまわり
薄暗い夜がすぎてゆくと
ジャズのバンドが すすり泣くのを聞いたって
誰かが云っていたよ
夜が灰色に明けるころになると

時が止まりそうな演奏の上を、思い出した譫言のように艶っぽく歌う、次元が違っています。間をタップリと生かしたトリオの演奏、坂田明のサックスも噎び泣く。ちきしょう・・・なんて凄い世界なんだ。涙が出るぞ・・・・

5曲目 ゆったりとしたアメリカ南部系(ほとんどそうですが)ブルース、ゆったりと明るいバンドの演奏、シャワシャワとした森山氏のブラシワークは大変貴重なもの。歌詞は典型的な南部ブルースの見本、高音部中心の伸びやかなボーカルは何となくほっとします。これで泥臭さが無いと感じるのは浅川マキの凄いところ。

6曲目 短く明るいナンバー、締めを飾るがごとくの歌詞と明るいボーカル、ご機嫌なピアノトリオの演奏も最高で、もう少し長いバージョンも良いんじゃないのかな?ピアノトリオの演奏なんか2分ぐらいプラスして。

7曲目 洋輔さんのピアノだけを従えた、ミディアム(これでも)なシットリとしたナンバー、歌詞の内容的には前の曲からストーリーがつながります。これも何となくコンパクトすぎて物足りない。

8曲目 作品一番の聞き所。後のライブでも再演されますが、こちらの方が好きです。照れたようなマキのバンド紹介(+照明さん)から始まる、2コードで延々と続くジャズ・ナンバー。歌は弱々しそうで結構鬼気迫っていると思いますが、なんと言っても凄いのはカルテットの演奏、エルビン・ジョーンズを彷彿とさせるドラム、単調なマッコイタイナーなピアノ、サックスは少し悲しげでメディテーション、坂田明のサックスがフリーキーに噎び泣きながらエンディングを迎える、黄金期のコルトレーン・カルテットのような雰囲気は最高です。長い間ずう~っとこの曲が聴きたかった・・・・・

40年以上経つのに全く色あせていません。何なんでしょうかこの世界観は、初々しい雰囲気さえ感じられる(黄金期の山下洋輔トリオ+稲葉国光・・・初々しいはずがないのに)ピアノトリオをバックに古くささなんか全く感じられない完全に確立された浅川マキの歌い方、冷凍保存して今目の前で解凍されたような作品です。まずいなぁ・・・・今はそれほどのめり込んでるとは思わなかったのに・・・・







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1 コメント

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懐かしく、かつ今も鮮やかです (浅子洋一)
2023-05-29 22:21:49
 歌、音楽で感じたことを言葉で表現するのは難しい物だとおもっています。
 この一枚。学生時代、友人に勧められて聴くようになりましたが、それ以来、延々と・・・もう50年近くになるのに、色あせず、鮮やかな景色。どういうことなんでしょうか。
 歌われている世界は決して明るい世界じゃないのですが、その音楽の響きが鮮明でクリアーとでも申したら良いのでしょうか。

 ちょっと、ジンでも舐めながら、この解説を読みながら、学生時代を思い出し、ノスタルジーに浸りつつ、このレコード(すでにデジタイズしましたが)を聴くことにいたします。

 素敵な、素晴らしい解説、有り難うございました。
 今日、この解説にたどり着いて、あぁ、やっぱり、と思い、頷くことが多く、感激しました。
 あの女だけなんだよ、おいらをいじめやがったのは🎵、と後ろで流れています。

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