軽音楽談話室(廃屋)

「琥珀色に魅入られてしまった人生・・」

Courage / Milton Nascimento

2012-04-04 02:00:00 | 音楽
Milton Nascimento : Vocals
Jose Marino : Bass
Joao Palma : Drums
Eumir Deodato : Organ
Herbie Hancock : Piano
Anamaria Valle : Vocals

1.Bridges (Travessia)
2.Vera Cruz
3.Tres Pontas
4.Outubro (October)
5.Courage
6.Rio Vermelho
7.Gira Girou (Round N' Round)
8.Morro Velho
9.Catavento
10.Cancao Do Sol (Saltworkers Song)
1969

75年にウェイン・ショーターのアルバム「ネイティブ・ダンサー」76年自身のCTIからの作品「ミルトン」が一般的には北米デビュー作品とされていますが、この作品がブラジルの巨星ミルトン・ナシメントの実質的なアメリカデビュー盤です。自信の作品としては3枚目・・・A&M(CTI)に見いだされたと言うことかも知れませんが、この時代のブラジルのミュージシャンはアメリカ嗜好(嗜好ではない、自分たちの音楽をアメリカで勝負させたいという意味で)が強かったと言うことですね。同郷のデオダートとジャズ界トップのハービー・ハンコックが参加しています。

1曲目 語る必要のない超名曲です。ユッタリとしたギターのコードに少し英語で硬さのある優しいボーカルが、とてつもなく優しく素敵なメロディーを口ずさむ。サビでの暖かな盛り上がりがとても素晴らしい。我が廃屋でも「トラベシアを聴きながら」と言う歌い文句を掲載していたことがありました。残念ながら英語バージョンですが、演奏の装飾が豪華な分違った魅力を感じ取れる気もします。ストリングスも効果的に使い、ボリューム感の有るゴージャスな(ラウンジ・ミュージック的な部分は好きですが)演奏に仕上げられています。ただ、ミナス・サウンド特有の雰囲気は少し薄まっていますし、ボルトガル語の歌(内容は不明)はほとんど覚えてしまっていますので、英語バージョンの違和感という意味では「仕方ないなぁ」と諦めています。しいて言えばアメリカ流のストリングスの処理が魅力的な気もします。

2曲目 朗々と歌う語りのボーカルが素晴らしい、雄大な大地を想い浮かべるイントロ。特徴的なアコギのカッティングに導かれテーマの旋律が始まります。スキャットがとても優しく流れますねぇ、少しベースが大きいかな。テンポを維持しながら曲調に素敵な変化が見られる曲。琴線に触れままくります。

3曲目 軽快なナンバー、軽やかなフルートが舞踊る短いイントロ、ボーカルパートはとても落ち着いた歌い方で、バックの軽快な演奏が目を引きます。(特にピアノの処理はいかにもブラジル的)テンポが落ち着きストリングスが絡むサビもムードタップリ。コンパクトながら素敵な小品。

4曲目 ストリングスにムードタップリのフルート、シットリと色っぽいイントロ。ボーカルパートも優しく漂う様な歌い方で、やはりバックのピアノトリオがポイントです。ストリングスを纏いながら天空に舞い上がるようなサビは、天国から光が差し込んできたような神々しさを感じさせます。落ち着いていますねぇ・・・それでいて大変奥深い雰囲気が漂います。

5曲目 タイトルナンバー、キャッチーなメロディのイントロ、ボーカルパートはシットリと落ち着いた雰囲気で。オルガンとリズム隊中心、時折ストリングスが彩りを添える。。少しナヨッとした歌い方と曲展開ですが、間奏の素晴らしい雰囲気からミルトンのスキャットとボーカルが天空に登り詰めるような様は絶品です。

6曲目 妙な音色のオルガンが印象的なイントロ、テーマはスキャットで淡々と進行、やはりバックのピアノとオルガンがポイントですね。スキャットだけで攻めまくるテーマも素晴らしく、ストリングスが加わりボーカルパートに変化します。ストリングスと共に少し勢いの立つ場面が気になりますが、流れる様な曲進行は中々のもの。ミルトンらしくはありませんが。

7曲目 オルガンとパラパラとしたピアノとボーカルが絡み合うイントロ、テーマは演奏が端正でタイトで、時代がかったジャズ風ポップス。間奏のピアノソロが中々良い味を出していますが、ミルトンのサウンドの雰囲気ではない。

8曲目 素朴なアコギのつま弾きのイントロ、印象的です。ボーカルパートはシットリとした雰囲気が花開いた感じ、艶やかなボーカルが素敵な演奏に寄り添うように漂います。時折ストリングスが優しく漂うピアノ中心の演奏も大変落ち着いていて素晴らしい、癒されます。アコギの素朴な音色が良い感じでアクセントとなった名曲。

9曲目 縦乗りの明るく楽しげな曲、イントロはフルートとスキャットだけ、テーマは素朴なフルートが担当、良い感じのインストルメンタル風になっています。続くピアノパートも味がありますねぇ、音色が良いですね。そして再びフルートとスキャットが締めのテーマを、キャッチーなメロディーを素敵に料理した名品・・・気づかなかった。

10曲目 スキャットに躍動感のあるイントロ、テーマに入ってもトロンボーンとストリングスと併走するスキャットが素晴らしく、ボーカルに変わってからのバックのピアノ・トリオがまた格別。サビで軽快感が増す展開は名曲を約束された証し。原曲の素晴らしさが骨身にしみている身にとっても、かなり大胆なアレンジで展開するゴージャスな作りもまた一興、素晴らしい。

後の典型的なミナス・サウンドはこの作品ではまだ影を潜めていますが、名曲揃いの傑作であることは間違いありません。そしてアメリカ作品と言う事で、この頃の作品の魅力である人柄が表れたような素朴さに、ゴージャスさを加味したようなサウンドは中々興味深いですね。英語の歌詞での硬さを考えても、名盤であることには変わりありません。

小指で作るハートマークが有名なジャケットです。素敵ですね。


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