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M.ギルバート/石田善彦訳『捕虜収容所の死』創元推理文庫

2006年06月30日 | reading
ネタバレ一応注意。

第二次大戦下、イタリア軍の捕虜収容所で起こる、脱走トンネル内での密室殺人。
この一行だけで道具立ての魅力は十分伝わるのではないかと思います。謎解きもしっかりしてるし、終盤でのどんでん返しの連続もニクい展開(その分解決がややバタつく印象があるが)。ルーレット盤などの小道具もうまく使った演出も上手だし、『大脱走』的なサスペンスも面白い。
まあ隙はない小説でして、けなす部分はただ一点、訳文の堅さ。ただでさえ多人種(イギリス、イタリア、ギリシャ、さらにはドイツ)・多人数の登場人物っていう要素があるのに、堅い文章がさらに読み難さに拍車。死体をイタリア軍に知られないように(脱走トンネルの存在を秘匿するため)運び出す、そのためにいきなり捕虜たちが騎馬戦を始めるってシーンがあるんだけど、そういうコミカルなシーンがいまいち活かしきれていないのも残念でした。硬派な小説だと思うけど、原文のテンションがどんなもんなのか知りたい。

作品の評価はBマイナス。

捕虜収容所の死捕虜収容所の死
マイケル ギルバート Michael Gilbert 石田 善彦

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