urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

乙一『ZOO』集英社文庫

2006年06月17日 | reading
ネタバレ注意。

乙一の文庫は二分冊にしなければならないというカルテルでもあるのでしょうか。正直ウザい。
で、この本。冒頭の二編が素晴らしい。「カザリとヨーコ」、悲惨な状況…《「いいかい、ママがアンタをぶつのは、あんたがどうしようもなく悪い子だからよ。でも、このことはだれにもないしょだからね。わかった? わかったのなら、このミキサーのスイッチは押さないであげるわ」(中略)「もうちょっとであんたの手がジュースになるところだったわね》(16p)…と相反するすっとぼけたようなユーモア…《掃除の時間、クラスメイトに話しかけられた。クラスメイトと会話をするのは実に三日と六時間ぶりだった。ちなみに三日前にかわした会話は、「エンドウさん、消しゴムかして」「……あ、ごめん。持ってないの」「ちっ」というたったそれだけだった。》(17p)…が奇妙にバランスを保って共存する好編。「SEVEN ROOMS」、非日常の、しかしどこか淡々とした恐怖感の演出が見事。
この二編は既読の乙一作品のベスト。次点を挙げるならオチがなかなか気の利いた「SO-far」だが、これも3番目。それ以降はどんどんテンションが落ちてしまったように感じた、残念だけど。いかにも感動的だったり、ミステリとしての仕掛けが小手先に感じられてしまったり、不条理感が浮いてしまっていたりと。「closet」は西澤保彦の某作品のプロットを非SFで達成した成果とも捉えられるだろうけど、ラストの驚きは前例があるだけに半減。
どうしても肌に合わなかったこの人の文章が、この作品集ではあまり気にならなかったのは良かったです。

作品の評価はBプラス。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (うさぎ)
2006-06-18 00:02:05
まあまあ面白いかなぁ・・・

くらいの印象だね。この作品



次はスピード、もしくはヒートランドあたりのものを期待します。

ミステリじゃないけどね。



もう名古屋かね?
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名古屋 (urt)
2006-06-18 00:22:23
もう一ヶ月だがや。



この小説も一ヶ月前ぐらいに読んだので、日々の更新はストック切り崩してる訳ですが。ハードカバーは読めないけどもう一個のは垣根涼介かね? 読もうかと思ってたからちょうどよいわ。多分二週間後ぐらいに。
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Unknown (うさぎ)
2006-06-18 01:09:44
垣根だね

今読んでるんだけどね。

まぁ、まぁまぁ、まぁ一杯って感じ。



スピードはハードカバーじゃないよー

面白いかは別として好きな作品ではある



そのうち、西へ旅へでようと思うのでよろしこ。
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あれ (urt)
2006-06-18 11:23:09
金城一紀ちゃうん? 文庫落ちしてたっけ…割と好きな作家ではあるけど。

おいでませ。
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Unknown (bonobo)
2006-06-21 21:32:35
ソ・ファーには感動しました。
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オチが (urt)
2006-06-21 21:59:07
感動一本槍じゃないのがいいね。
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