urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

米澤穂信『愚者のエンドロール』角川スニーカー文庫

2006年06月20日 | reading
ネタバレ注意。

これはあかんかった。
古典部シリーズ第二作。文化祭で上映される(べき)撮影が頓挫した推理映画の犯人を当てる(ことによって完成させる)、という趣向。となれば思い出される我孫子武丸の傑作『探偵映画』。それにあった、演者が全員犯人になりたがる、といった魅力的なツイストもなく、オーソドックスな事情聴取→推理が繰り広げられるが、その過程がなんか浮ついて感じられた。リアリティがない、と言うか単に筆力がないと言うか。
それもあいまって、前作に輪をかけてラノベ臭い。「データベースは結論を出せない」とか言って思考を放棄する博覧強記のキャラとか、もう…。物語のキーになる人物が「女帝」とか言う渾名で、結局その通りのキャラクタ付けがオチにくるんだよね。《「(前略)無論、彼らが無能だとは言わない。中城は牽引車として、羽場は野党として、沢木口は道化として、それぞれ得難い技能を持っている(後略)」》(181p)とかそれぞれのキャラを説明してくれちゃったりするんですよ。正直読んでて辛かったです。
…なんか悪口並べただけになってしまいましたね。えーと、中村某とかの新本格ネタは、まだ外延にいた作者の、新本格シーンへの羨望を感じさせて微笑ましかったです。
表紙がまた最悪なんだけど、なぜかデータがないので角川文庫版を貼ります。

作品の評価はCマイナス。

愚者のエンドロール愚者のエンドロール
米澤 穂信

角川書店 2002-07
売り上げランキング : 34636

Amazonで詳しく見る
by G-Tools