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保守記事.16-48 海外にも目を向けよう

2020-11-28 12:27:55 | 記事保守

砂をめぐり住民同士が殺しあう…アフリカで起きている「砂戦争」のリアル

私たちの身近にある砂は、もはや貴重な「資源」になった。コンクリートや半導体は砂なしでは作れないため、世界中で「争奪戦」が起きている。特に経済発展が目覚ましいアフリカでは、ビル建設に必要な砂への需要も大きい。新刊『砂戦争』から、砂をめぐるアフリカでの壮絶な争いついて、一部編集のうえ紹介したい。

アフリカで勃発した「砂紛争」

驚異的な人口増加が続き、都市化が進むアフリカでも、砂資源をめぐって事件が起きている。

ケーブルテレビの「ディスカバリー・チャンネル」で、サバイバルの専門家エド・スタフォードの「秘境ハンター」を観ていた。人工衛星の画像から、地上の得体のしれない地形や物体を見つけて現場を探検するという設定だ。その番組は南部アフリカのザンビア西部の草原に点在する連なった丸い大きな穴が目標だった。まるで培養器の培地の上で増殖した細菌のように見える。

私はかつてザンビアに住んでいたことがあるので、その現場に向かう途中の町までは行ったことがあった。スタフォードはその町を出発したあと、ジャングルに分け入り川をボートで下ってあやしげな丸い穴にたどり着いた。何と穴の正体は砂を採取した跡地だった。こんな奥地まで砂採掘の手が伸びていることを知って、ショックを受けた。

私は過去40年間、幾度となく日本とアフリカを往復してきたが、たずねるたびに都市の急成長には目を見張る。過去25年間、年に3~5%の高い経済成長率を示し、アジアに次ぐ成長拠点でもある。多くの国で建築ラッシュがはじまって高層ビルも増えている。砂問題と無縁ではなくなってきた。

インターネットで検索すると、2000年代半ばから砂に絡んだ事件がアフリカ各地で表面化してきたことがわかる。最近では、北部アフリカのモロッコ・チュニジア、東部のケニア・ウガンダ・タンザニア、ソマリア、西部のナイジェリア・ガンビア・リベリア・セネガル・シエラレオネ、南部のモザンビーク・南アフリカなどのニュースがヒットした。

典型的な砂をめぐる紛争は、ガンビアで起きている。この国はセネガルの国土の真ん中に釣り針形に食い込んだ形をしている。岐阜県ほどの面積に約230万人が住むアフリカ大陸最小の国だが、こんなところまで砂採掘が押し寄せている。国の真ん中を流れるガンビア川が大量の砂を運んでくるので、砂は農産物とともに重要な輸出品だ。

だが、砂の過剰採掘によって河床が下がり、満潮時には海水が逆流して耕作地に流れ込むようになり、農民は採掘の中止を政府に訴えてきた。だが、政府は砂採掘を擁護したために、農民としばしば衝突している。

2017年6月には、首都バンジュルから約50キロ離れたファラババンタ村で両者の間で武力衝突が起こり、農民側は採掘の機械やトラックを破壊、これに対して治安部隊が発砲して2人が死亡した。2018年6月にもこの村でふたたび衝突が起き、治安部隊の銃撃によって地元住民が2人殺害され、少なくとも6人が負傷した。

調査した国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、武器の過剰使用だとして政府に抗議した。欧米やアジア諸国が砂を取り尽くしたあかつきには、まだ砂のフロンティアが残るアフリカの奥地にまで採掘の手が伸び、砂をめぐる紛争が激しくなるのではないかと心配になる。

ナイジェリアで暗躍するマフィア

都市化が遅れていたアフリカでも、人口の急激な都市集中が起きている。なかでも、アフリカ大陸で最大の約2億人の人口を抱えるナイジェリアでは、すさまじい人口の都市集中が起きている。首都だったラゴスはラグーン(潟湖)に浮かぶ島を中心に街が発展してきた。1950年当時のラゴスの人口は32万人で、キャッサバ畑に囲まれた村だった。

私がはじめて訪ねた1970年代末には、産油国として原油高騰の恩恵を受けて経済は活況を呈し、ビルが次々に建ちはじめていた。その後、ナイジェリアは驚くべき高度経済成長をとげて経済大国になった。その原動力になった原油生産量は、2019年には世界で12位である。

だが、犯罪が多発してテロが頻発したことで民族紛争が激化し、これに政治腐敗が加わって治安が悪化している。日本の外務省の海外安全情報では、大都市はほとんどがレベル3(渡航中止勧告)やレベル4(退避勧告)に指定されている。誘拐、強盗、窃盗、詐欺なども多く、私自身アフリカ在任中にナイジェリアの詐欺グループに偽造小切手をつくられて困ったことがある。

1991年に首都機能は、建築家丹下健三が都市を設計したアブジャに移転し、ラゴスは商都になった。2000年の人口は約720万人で、現在の埼玉県ほどだった。それが、今や1300万人を超えて東京都なみになり、カイロと並ぶアフリカ有数のメガ都市に成長した。目抜き通りには高層ビルが建ち並び、有名ブランド店が軒を連ねている。

農村や近隣国から職を求めて人口流入が絶えず、国連の予測では2025年に1580万人、2050年に3263万人、2100年には8830万人を抱える世界最大の超巨大都市になる。

だが、一歩街を出れば巨大なスラムが広がっている。露店がひしめく中心部の通りは、人でごった返し、食料や古着を売ったり、値切ったりする怒号が飛び交う。そこに車がクラクションを鳴らしっぱなしにして突っ込んでくる。おそらく世界でも最悪の交通渋滞都市のひとつといってよいだろう。排ガスの臭いも鼻を突く。

さらに人口は街からはみ出し、海岸の埋立地や海上に高床式の小屋がびっしりと集まっている。世界最大の海上スラム「マココ」である。海岸にはゴミや汚水が流れ込んで衛生状態は最悪だ。

あのラゴスの街をつくったコンクリートの砂は、どこからきたのだろうか。最大の供給地は、ラゴスの街の東側の海岸に沿って広がっているラグーンだ。長さは50キロ以上、幅は3~13キロで、湖面の面積は約6400平方キロもある広大なものだ。砂州によって大西洋と隔てられている。近年はラゴスから都市・工業排水が大量に流れ込んで、ここでも水質が悪化している。

ラグーンの周辺には、レッキ、エペ、オホ、バダグリーなど数十の砂浜があり、砂採掘業者が集中する。巨大な浚渫船を使って、年間推定9000万トン以上の砂が採掘される。その一方で、湖岸の陸砂の資源枯渇によって、湖底まで潜って砂が採掘されるようになった。

たまたまその光景を目撃したことがある。ラグーンの湖岸を散歩していると、砂浜で100人以上もの子どもたちがバケツをもって海に潜っては、砂を船上に放り上げている。川岸に船が運んできた砂の巨大な山ができ、そこからダンプカーが砂を運び出している。マフィア組織が、わずかな賃金で子どもたちを雇っているのだという。

湖岸には陸揚げされた巨大な砂の山が無数にできている。国内だけでなくアラブ首長国連邦などにも輸出される。その近くでは、砂にセメントを混ぜて型に入れ、ブロックがつくられている。

しかし、湖岸や湖底が荒らされて漁獲量が激減したり、湖に流れ込む川の橋げた周辺の砂が堀り取られて橋が崩落するなど、インフラにもさまざまな被害が目立ってきた。ついに、ラゴス州政府は、洪水防止やラグーンの生態系保護を理由に、2018年4月30日までにすべての砂採掘を禁止した。しかし、夜間に採掘するものも多く、禁止はかならずしも効果を上げていない。

砂をめぐって、住民が殺しあう…

ケニアの首都から南西に約80キロ。ツァボ国立公園に隣接するマクエニ郡キロメーで、2017年12月、夜の暗闇でその事件が起きた。近くのムーオーニ川で、3人の村人と運転手が砂を車に積み込んでいるところに、いきなり若者の一団が襲いかかった。

彼らはトラックを燃やし運転手にも火をつけた。2人が焼き殺され、逃げ遅れたひとりが矢で射られて死んだ。地元の警察署長が記者会見で「理解を超えた残忍な殺し」と語ったほど凄惨な現場だった。

人口100万人弱の人びとが住む貧困地域のマクエニ郡では、その2年前から警察官や政府関係者を含め、少なくとも9人が殺害されて数十人が負傷していた。そのなかには、若い男性の一団が警察官を襲って毒矢で自由を奪い、マチェーテ(山刀)で目を刺して殺した事件もある。原因は砂の採掘をめぐる争いだった。

ケニアでも都市は驚異的なペースで成長している。首都ナイロビの人口は1963年に独立して以来、10倍に増加して現在では470万人を超えた。高さが約300メートルになるアフリカ大陸で最高層のツインタワービル「The Pinnacle(尖塔)」をはじめとして、高層ビルや大型ショッピングモールが次々に姿を現している。砂はいくらあっても足りない。

大手の建設会社はナイロビに近いマクエニ郡に目を付けた。ここの川岸には手つかずの砂が眠っている。地元民を雇って砂を採取して都市の建設現場に運びはじめた。貧しい一帯では貴重な収入源になった。

だが、新たに水争いが表面化した。ケニアでは近年、全土で干ばつが断続的につづき住民も家畜も渇水に悩まされている。マクエニ郡を流れる川も乾季には干上がるが、河原に井戸を掘って雨季に溜まった地下水を汲み上げてしのいできた。

河原や浅瀬の砂を取り尽くした採取業者は、堤防を破壊することで川面を広げて川の水位を下げ、川底のより深い部分からも砂を採掘しはじめた。このため、地下水の水位が下がり、井戸が涸れて乾季には水不足が深刻になり家畜も飼えなくなった。

住民の反対運動やNGOの支援もあって、2015年に郡政府は許可がない採掘を禁止した。しかし違法な採掘は止まらず昼夜を問わずつづいていた。砂採掘に反対する地元の若者たちは、砂採掘で働く村人や運転手、賄賂をもらって違法行為を見逃している警察官に怒りの矛先をむけた。それが殺害につながった。

だが、ケニアの砂の需要はこれからも増えていく。国連の予測では、4970万人の人口(2017年)が2050年には8500万人に膨れ上がる。首都ナイロビでは、2019年の440万人から2050年に1425万人にまで増加すると予測される。ビル、高速道路、鉄道、新都市建設などの国家プロジェクトも目白押しだ。これから砂をめぐる紛争が本格化することになりそうだ。

 


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