北海道夕張市の財政破綻(はたん)の影響で存続が危ぶまれた市立病院に、1月から1人の医師が加わった。道内の地域医療に実績があり、「北のDr.コ トー」とも呼ばれる村上智彦医師(45)。4月に公設民営化される病院を引き継ぐ見通しだ。65歳以上が4割を占める夕張。病院運営は困難も予想されるが 「市民のかかりつけ医になりたい」と静かな意気込みを話している。
≪意識改革≫
「自分がのんでいる薬の名前や効果を知らなきゃ駄目だよ」
雪がちらつく底冷えの朝、病院の内科診察室で村上医師は主婦、長坂五枝さん(66)を諭した。「口調は厳しいけど信頼できる先生だね」と長坂さん。時折怒ることもある患者への接し方は、住民の医療に対する意識を変えたいとの思いからだ。
意識が高ければ食生活にも気を配り、結果的に生活習慣病などにかかりにくくなる。「『医療の素人だから』と自分の薬も知ろうとしないのは面倒くさがって逃げているだけ」と村上医師。
こうした姿勢を同僚の男性医師は「良い意味で影響されるところがある」と一目置いている。
村上医師は北海道旧歌登村(現枝幸町)生まれ。薬剤師として札幌市内の病院に勤務した後、医師免許を取得した。小学生時代、近くに病院がなくて近所の人が亡くなる姿を見てきた。この体験から自然と地域医療を専攻するようになった。
北海道旧瀬棚町(現せたな町)の診療所では、肺炎球菌ワクチンの接種に公費を補助するよう町に働き掛け、実現させた。高齢者の医療費を大幅に減らし、地 域医療のモデルといわれるようになった。昨年、新潟県の病院に移っていたが、友人からの呼び掛けに応え、夕張市立総合病院で診察することを決意した。
≪予防医療≫
村上医師の病院運営構想では、「最小限の人数で夕張の医療を支える」が基本。現在171あるベッドを19に減らし、診療科目も9科から内科、外科、整形 外科などの6科にする。「余計な医療費を掛けたくない」と予防接種や高齢者向け運動教室の開催など“予防医療”にも力を入れる。
「夕張市での予防医療が成功すれば、将来日本が本格的な高齢化を迎えたときに役に立つはず。夕張市は将来の日本のパイロットケース。いろいろな取り組みを試したい」と、村上医師はあくまでも前向き。医療法人名は「夕張希望の杜(もり)」に決めているそうだ。
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