友愛労働歴史館の解説員便り

当館は2009年8月で一時休館いたしました。しかし資料の収集・研究、PR活動等は継続します。再開は2012年8月1日!

小論「賀川豊彦と労働運動」をHPに掲載、11月26日!

2009-11-26 10:26:18 | Weblog
●「賀川イズム」とは何かを考える!
 11月25日に小論「賀川豊彦と労働運動―賀川イズムとは何か」を、「友愛会歴史研究」HPに掲載いたしました。
 本小論は賀川豊彦と労働運動の関係について簡単にスケッチし、彼が唱えた「自由労働組合主義」が今日、「賀川イズム」として継承されていることを述べたものです。
 賀川イズムは「自由組合」論であり、それは「労働者一人ひとりの自由な意志による労働組合」を追究したもので、「人間の尊厳」・「産業民主主義」・「労働軍政・無産者専制批判」・「合法主義、漸進主義、非暴力主義」などを内容としています。
 賀川イズムは今日なお、自由にして民主的な労働運動に引き継がれ、その背骨(はいこつ)となっているのです。
 「友愛会歴史研究」HP http://www15.ocn.ne.jp/~uirekisi/
                              以上

労働資料協の総会に参加して、11月12~13日!

2009-11-16 15:49:09 | Weblog
●100年後の一人の研究者のために!
 11月12~13日、東京・練馬の上石神井にある独立行政法人「労働政策研究・研修機構」で開かれた労働資料協第24回総会に行ってきました。
 労働資料協は正式名称を「社会・労働関係資料センター連絡協議会」といい、社会・労働関係の図書館、資料館などで組織する団体で、「社会・労働関係資料の収集・整理・保存・利用に関与する全国の諸機関が、社会・労働関係資料の保全を図り、公開利用の促進に寄与することを目的として、1986年に発足」したものです。
 労働資料協は①情報交換・MLの運営、②刊行物・資料交換、③加盟機関の不要・廃棄資料のリユース斡旋、④相互協力の推進・労働資料リサーチソースの充実などに取り組んでいますが、加盟団体にとって大きなメリットは「加盟機関の不要・廃棄資料のリユース斡旋」です。
 当歴史館も今までに書籍資料をダンボール箱で約20箱分を受け取っており、とても便利なシステムと思っています。
 ところで労働資料協に加盟している団体は、法政大学大原社会問題研究所、労働政策研究・研修機構、埼玉大学共生社会教育研究センターなどの他、東京大学・同志社大学・日本福祉大学などの図書館も加盟しており、資料の収集・管理、調査・研究などのプロが集まっています。
 このため私のようなガサツな労働組合書記上がりの人間には、理解しにくい点もあります。例えば昨年の総会で「100年後に訪れるかも知れない一人の研究者のために資料を集め、整理し、保管し続けることが私たちの仕事」という言葉を聴いたときは、椅子からずり落ちそうになりました。
 労働組合は「今日の雇用を守り、明日の賃上げをめざす」もので、100年後のことなどは念頭にないからです。また、労働組合が多くの貴重な資料を平気で処分してしまうのも、「100年後の一人の研究者のために」という発想がないからでしょう。
 当館も単なる労働組合関連資料館ではなく、一人前の歴史資料館として機能していくためには、労働資料協のプロの人たちの発想に近づかないといけないと感じました。この世の中、何年も何十年も「一枚のチラシ」を探し求める人がいるのです。
                             以上

落選論文「友愛個人主義を育む労働組合」!

2009-11-02 15:15:24 | Weblog
○連合20周年記念「論文募集」に落選しました!
 今年は連合結成(1989年11月)から20年、これを記念した(財)労働教育財団の「私の提言 第6回連合論文募集」に応募しましたが、見事に落選いたしました。
 しかし、このまま没にするのも残念なので、恥を忍んで応募論文(約7000字)の結語部分「5.連合への提言」を、以下に掲載いたします。関心のある方はお読みいただければ幸いです。
 論旨は、本当の個人主義(個人の自由と権利を守り、義務と責任を発現する)は「友愛と協同」の労働運動により育まれ、またそのような個人主義(友愛個人主義)を身に着けた労働者により労働組合は社会運動団体に成長できる、というものです。

○「友愛個人主義を育む労働組合―福沢諭吉・賀川豊彦・松岡駒吉を読み解くー」
                      友愛労働歴史館 間宮悠紀雄
1.全体主義へのプロテスト(抵抗)   略
2.福沢諭吉と「独立自尊」       略
3.賀川豊彦の「労働者の自由な意思」  略
4.松岡駒吉の「産業人として労働者」論 略
5.連合への提言
 明治30年の労働組合期成会、大正元年の友愛会以来、戦前期の労働者は労働組合の法認、労働諸条件の維持向上に取り組み、また個人の自由・権利を無視する全体主義へプロテスト(抵抗)してきた。それらはいま概ね成就し、労働組合は合法化され、労働条件は一定の水準を確保した。全体主義的政治支配は終焉した。
 しかし、最近の世界同時不況により日本は厳しい経済状況に落ち込み、非正規労働者は増大し、新たな貧困層が出現している。またコスト競争、企業生き残りを大義名分に企業至上主義が蔓延している。労働者はこのような企業至上主義に抵抗し、自らの労働環境と労働基本権を守っていかなければならない。そのために先達者のメッセージを読み解き、新たな労働組合運動構築の羅針盤とする必要がある。
いま福沢のメッセージを「独立自尊」と読み解き、賀川のそれを「一人ひとりの労働者の自由な意志」と受け止め、松岡のメッセージを「産業人としての労働者」として読み解くとき、そこに「人間の尊厳」という共通項が浮かび上がり、これは「個人の意義と価値を重視し、個人の権利や自由を尊重」する個人主義と同義である。
 個人主義は時として利己主義を連想させ、団結・連帯を旨とする労働組合にとって使いたくない言葉かも知れない。しかし、現実に労働組合、労働運動は「人間の尊厳=個人主義」を掲げた先達者により育まれ、またその運動を通して個人主義(個人の自由と権利)に目覚めた労働者を育んできたのである。
 個人主義の徹底こそが、問題意識を持って前向きに自主的に生きる労働者を生み出し、結果として労働組合を活性化できるのである。また、企業も悪しき企業至上主義から解放される。福沢流に「個人の独立なくして国家の独立なし」と言うならば、「個人主義の強化なくして組織の充実・発展はない」ことになる。
一人ひとりの労働者が本当の意味で個人主義者に成長するとき、そのような労働者で構成される労働組合は「人間の尊厳」を追求する社会運動団体となり、企業はステークホルダーの信頼を勝ち得る社会的存在となる。このとき個人主義は「個々の人格を至上のものとして個人の良心と自由による思想・行為を重視し、そこに義務と責任の発現を考える立場」(スーパー大辞林)となるのである。
 ソ連型全体主義が崩壊した1989年に創設され、結成20年の節目を迎えた連合。いま新たな労働運動を再構築しようとするとき、大切なことは先達者のメッセージを読み解き、再発信し、彼らが見詰めたものを見詰めることではないか。
 その一つが個人主義(個人の自由と権利を守り、義務と責任を発現する)であり、それは現在の企業至上主義と将来復活するかもしれない全体主義にプロテスト(抵抗)する有力な武器となり、また労働組合・労働運動を強化し、活性化するのである。連合は個人主義を育み、育まれる労働組合、労働運動をめざし努力して欲しい。
                               以上