友愛労働歴史館の解説員便り

当館は2009年8月で一時休館いたしました。しかし資料の収集・研究、PR活動等は継続します。再開は2012年8月1日!

「企業内労働組合」と「縦断的御用組合」!

2009-05-29 15:07:48 | Weblog
■松岡駒吉の『労働組合論』を読む!
 総同盟第二代会長・松岡駒吉(ユニテリアン、政治家、衆議院議長)は、その著『労働組合論』(クララ社「民衆政治講座」、昭和4年刊行)で労働組合の5つの職分として「団体協約の締結、罷業の遂行、教育的任務の達成、相互扶助的施設の発達、政治的勢力の伸張」を挙げています。
 また、松岡は「労働階級は、労働組合なる学校に於いて、建設的能力と、協同精神と、産業人としての識見を養うのである」と主張しています。後の「産業人としての労働者」論です。
 彼の『労働組合論』で興味深いのは、「縦断的御用組合」という言葉を使っていることです。同書第三章第三項「団体協約と労働組合の公認」の中で松岡は、資本家に「団体協約(現在の労働協約)の締結を行う前提条件として労働組合の公認」を求めていますが、その直ぐ後で「注意しなければならぬことは、縦断的御用組合である」と書いています。
 松岡は「資本家は労働組合の自主的発達を恐れて、工場若しくは同一会社に属する企業内に於いて、縦断的御用組合を作る」が、これは「一種の諮問機関である」と批判しています。そして「労働組合らしき形式を備えて居るものに、実質的縦断組合が多いのである。我国に於いては、特に最近其傾向が現われて居る何れの連合体にも属せざる単独組合にはこの種の組合が多く認められるのである。けれども、かかる種類の労働団体は、真の労働組合と名付けることは出来難い」としています。
 松岡の言う「縦断的御用組合」とは、今日の企業内労働組合を連想させます。企業内労働組合は何れの上部団体にも属せず、労使関係や活動が企業内に限定されており、また社会的・政治的な連帯活動に取り組むこともしません。その意味で今日の企業内労働組合は、松岡の云う「縦断的御用組合」なのでしょう。
 なお、企業別労働組合というものがありますが、こちらは似て非なるもので企業別に組織されている労働組合ですが、上部団体(産業別組織、ナショナル・センター)に加盟し、労使関係や活動は企業の枠を超え、また社会的・政治的な連帯活動にも取り組んでいます。
                                      以上

土屋博政教授が論文「社会運動の源流、ユニテリアン」を発表!

2009-05-12 17:04:31 | Weblog
■政策研究フォーラムの月刊誌『改革者』5月号に掲載!
 慶應義塾大学の土屋博政教授は日本のユニテリアン研究の第一人者で、関連論文が「慶應義塾大学日吉紀要」の「英語英米文学」第33号、第35号、第39号に掲載されています(インターネットで読むことができます)。
 一般書籍では土屋博政著『ユニテリアンと福沢諭吉』(慶應義塾大学出版会、本体3800円+税)が2004年に出版され、現在でも販売中です。
 また、土屋教授が2008年8月1日に友愛会館で行った「友愛会創立を記念する会」の記念講演「ユニテリアン主義と友愛会の精神」の速記記録は、労使関係研究協会の会報「労使研」第127号に掲載済ですし、友愛労働歴史館のデジタルデータライブラリーで申込みも可能です。
 その土屋教授が政策研究フォーラム「改革者」5月号に、新たな論文「社会運動の源流、ユニテリアンー宗派性を超えたキリスト教の影響をたどるー」を発表しました。
 詳細は略しますが、土屋教授は「世界中が不寛容になりつつある今日、自他の尊重と自己信頼を主張したユニテリアン精神が再評価される必要がある」と書き出しています。
 一読の価値があると思いますので、関心のある方は政策研究フォーラムまで申し込んでください。「改革者」5月号の定価650円。連絡先は政策研究フォーラム ℡03-5445-4575、Fax03-3457-5280
                                    以上