友愛労働歴史館の解説員便り

当館は2009年8月で一時休館いたしました。しかし資料の収集・研究、PR活動等は継続します。再開は2012年8月1日!

「鈴木文治からのメッセージ」ー鈴木文治特別展より

2007-01-03 11:30:37 | Weblog
■「鈴木文治からのメッセージ」を読む!

 友愛労働歴史館は2006年10月25日から2007年3月12日までの予定で「日本労働運動の父 鈴木文治没後60年ーその人と生涯」展を開催中ですが、ここで展示されている解説資料の中に、「鈴木文治からのメッセージ」があります。
 「メッセージ」は私たちに、単に鈴木文治の足跡を追うのではなく、彼のメッセージを読み取り、「鈴木文治がめざしたものをめざそう」と呼びかけています。その「メッセージ」を以下に掲載いたします。なお、本メッセージ及びその他の特別展解説資料は、友愛労働歴史館のホームページで読むことができます。

「鈴木文治からのメッセージ」
                (「鈴木文治没後60年」展解説資料より)

●対等・平等な人間として認めあう
 NHK高校の日本史教科書は、鈴木文治の友愛会創立について述べ、労使が「お互いに対等・平等な人間として認めあうことの大切さ」に言及している。
 「当時、労働者が「一般社会」から「職工風情」と蔑まれ、「社会の最下等動物」のごとく見なされていたことに対し、労働を国家や文明を支える「神聖」なものとしたうえで、労働者自身の「相愛扶助」「識見の開発、徳性の涵養、技術の進歩」「地位の改善」によって差別と偏見を取り除いていこうとしたのである。それは、工場主や資本家に対して、同じ人間であることを認めてもらいたいという人格承認の願いでもあった。友愛会は結成から4年余で会員数が二万人に達し、人格承認の要求がいかに多くの働く人びとの心をとらえていたかがわかる。お互いに対等・平等な人間として認めあうことの大切さに、人びとは気づき始めていたのである。」

●労働は神聖なり、団結は力なり
 鈴木は友愛会を創立し、「資本主義の弊害と封建制の遺風」に対峙したが、労働者と資本家・経営者が絶対的な対立関係にあるとは考えていなかった。「生産は資本と労力と相結合して、初めて出来るものである」と信じていた。
 そして労使(資)の協力を現実に可能にするためには、「まず労働者自身がその知識を深め徳性を涵養し、資本家と対等な社会的地位を獲得」しなければならず、そのためには「何よりも労働者の団結が必要である」と考えていた。これは労働組合期成会を組織した「片山潜の『労働は神聖なり、団結は力なり』という言葉を想起」させるものであった(大河内一男著『暗い谷間の労働運動』)。

●労働者の人間性と職業能力の向上
 労使が「お互いに対等・平等な人間として認めあうことの大切さ」を指摘し、「労働は神聖なり、団結は力なり」とした鈴木のメッセージは、友愛会綱領の中にも込められている。それは①相互扶助、共済、②修養、向上努力、③地位の維持改善であり、特に第二項の「識見の開発、徳性の涵養、技術の進歩」は、「労働者の人間性と職業能力(エンプロイアビリティ(雇用される能力)の向上」と読み解くことができ、今も輝きを失わないメッセージである。
 鈴木は、「人間労働者を愛して、その地位の向上と労働条件の改善を願い続けた」が、同時に「労働者の人間性と職業能力の向上」を通して、明治・大正期のユニテリアンの理想(人間の尊厳と人類の進歩発達)をめざしていた。
 労働組合が法認され、民主主義が広まり、資本主義が変容し、革命的急進主義がほぼ崩壊した今日、鈴木のメッセージは時代を突き抜ける普遍性、狭い労働階級意識を超える普遍性を持って迫ってくるのである。
                                  以上