友愛労働歴史館の解説員便り

当館は2009年8月で一時休館いたしました。しかし資料の収集・研究、PR活動等は継続します。再開は2012年8月1日!

友愛労働歴史館見学のポイント

2007-06-21 14:24:09 | Weblog
 友愛労働歴史館は現在、常設展「日本の労働運動(戦前)と友愛会・総同盟」展を開催中(9月28日まで)ですが、見学に当っての3つのポイントを記述します。

       <常設展「日本の労働運動(戦前)」見学の3つのポイント>

ポイントその1 「社会運動発祥の地の意味を考えよう!」
 友愛労働歴史館がある友愛会館の前身は、ユニテリアン教会・惟一館です。明治20(1887)年、米国よりユニテリアン牧師アーサー・メイ・ナップが福沢諭吉らの招請により来日、明治27(1894)年に活動の拠点として惟一館を建設したのです。
 ここに結集したユニテリアン(山路愛山、黒岩涙香、永井柳太郎、星島二郎、安部磯雄、他)は、「人間の尊厳と人類の進歩発達を増進する」との考えを持つ開かれた人々であり、労働運動を支援するとともに、自ら社会運動や政治活動に取り組みました。
 明治34年に結成された安部磯雄らの社会民主党の結成準備が行われたのも、また大正元年に鈴木文治が友愛会を結成したのも、この惟一館でした。このため惟一館は、日本の労働運動、社会運動発祥の地と呼ばれています。
 なお、惟一館の設計者は、鹿鳴館、神田ニコライ堂、岩崎邸などの設計で知られるジョサイア・コンドルであり、その図面は重要文化財に指定されています。

ポイントその2 「友愛会創設者(鈴木文治)の目指したものを見詰めよう!」
 鈴木文治は、大正元(1912)年に友愛会(後の総同盟、現在の連合)を創設し、日本労働運動の父と呼ばれました。彼のキリスト教人道主義は、19世紀中頃の英国で広まったキリスト教社会主義(信仰に基づいて労働者の解放を求め、労働者の啓蒙などを通じて社会の改良・進歩を達成しようとする理論・運動)と通底しているものでした。
 鈴木の筆になる友愛会綱領は、①共済と相愛扶助、②識見の開発・徳性の涵養・技術の進歩、③協同の力・着実な方法による地位の向上を掲げており、ここから鈴木のメッセージを「労働者の人格(人間)尊重、職業能力の向上、働く者の連帯」と読み解くことができます。

ポイントその3 「労働リーダー(松岡駒吉)の労働者論・組合論を検討しよう!」
 クリスチャンで総同盟第二代会長の松岡駒吉は、大正・昭和初期の一連の労働争議を通して「労働組合主義」を確立した人であり、急進的な革命主義に反対し、現実的・実際的な労働運動を実践しました。
 松岡は、一人ひとりの労働者を「共同精神、独立、社会的責任、常識」を持つ産業人に訓練する場が労働組合と考え、また「経済・産業の発達を担う労働組合」との考えを持っていました。
 これが松岡の「産業人としての労働者」論であり、これにより松岡は悪しき労働組合主義が持つ狭さや限界を超えて、階級意識と時代を突き抜ける普遍的な理念としての民主的労働組合主義を確立したのです。
                                以上