天童大人プロデュース「詩人の聲」2016年3月(2)
5、渡ひろこ 3月22日 ギャルリー東京ユマニテ
渡は10回目の公演。聲が安定して出せるようになった。聲に力を感じられるようにもなった。天童が「10回が一つの節目」と言うように、一つステップを上がったようだ。
作品は、自然や絵画を素材としたもので、人間の生きる息苦しさ、閉塞感、時代性を表現したものだった。以前はしばしば見られた俗語がなくなっている。インターネット用語のようなカタカナ語も見られなくなった。
そのせいだろうか、作品の印象が鮮明になった。作品にカミソリのような鋭さを感じさせるものが出て来た。
しかし、それがオドロオドロシイものになりがちな傾向もあったと思う。その辺りが課題だろう。
6、長谷川忍 3月25日 ギャルリー東京ユマニテ
長谷川は37回目の公演。詩集を刊行して最初の公演。どのような新境地を開拓していくのか注目した。
月に二編の新作を作っているという。新作がどのような展開になるのか決めていない、書きたいものを書くという姿勢で臨んでいる。『女坂より』では男女の感情の機微、下町情緒、都市生活者の孤独。こういったものが表現の中心だった。
読まれた作品は様々な傾向が混在している。それでいいのだろう。試行錯語の中から新しいうものが生まれるに違いない。
7、神泉薫 3月30日 ギャルリー東京ユマニテ
神泉は50回目の公演。以前はしばしば聞きにいっていたが最近は時間があわず。久しぶりに聴いた。今は、前衛生け花の中川幸夫を詩で表現している。
花の命の活かすという中川の表現活動、中川の生き方、生け花の作品も表現されている。
ここで驚いたことがある。こうした表現は解説になることが多い。短歌の社会詠と同じだ。しかし読まれた作品には解説的要素はなかった。
美しい言葉が使われているからだろうか。聲に何度も出して作品を練り上げてきた成果だろう。詩集の刊行が楽しみだ。
