先ず、斎藤茂吉の「餅の歌」を選んでみよう
日本の正月に欠かせない餅。この餅だが、最近では米粉餅というのがあるそうだ。原因は米余りもあるが、TPP や FTA などで、国産の原料、自給100%の「うるち米(もち米でないもの)」を活用しようという一環らしい。ビーフン(うるち米の麺)も注目されている。
たしか小学校の授業では、「日本の小麦粉ではパンが作れないし、ウドンには合わない」と教わったが、考えてみれば可笑しな話だ。ウドンは江戸時代からある。「時そば」ならぬ「時うどん」という話が上方落語にある。大学の日本地理では、「関西に『そば屋』はない、あるのは『うどん屋』だ」と聞いた。国産の小麦が「うどん」に向いていないとは明かな間違いだ。
パンも同じ。パン屋は戦前からある。第一「あんパン」は戦前の日本人の発明によるものだ。
年表や資料を見ると、1960年代後半から外国産の小麦の輸入量が増える。同時に国産小麦の生産も下降線をたどる。とするとあの時の授業は「食糧の輸入量を増やす」という貿易自由化の伏線を、子どもの頭に入れる「国策」を反映したものだったか。
「讃岐うどん」は香川産の小麦使用を看板にしているし、国産小麦を原料としたパンもあらわれてきた。「国産小麦はパンに合わない」というのも、眉唾になってきた。
TPP や FTA の問題で、食糧自給の問題が急浮上してきた。「 TPP で国内農業は競争力をつける」「いや国内農業は大打撃を受ける」「輸入食糧の方が安い」など、さまざまな意見がマスコミをにぎわす。
貿易自由化の枠組みが、TPP,FTA、ASEAN、ASEAN+3、ASEAN+6 のどれになるか分からない。だがこれだけは覚えて置こうと思うし、交渉担当者は念頭の置いて欲しい。
「日本の農業は集約的で、大規模化には限界がある。どう逆立ちしても、棚田の大規模化は無理だ。」
「貿易の自由化というが、世界の人口は70億人を超えた。100億までは増加する。」
今に金を払っても、食糧の絶対量が不足するときが来るやも知れぬ。耕作可能地での食糧生産は保護は勿論、強化する必要がある。「競争に負けない農業を」という理由で、逆に潰してしまうことが、あってはならない。
少なくとも農業を「センシィティブ項目」にして、国内農業の保護・強化は必要だろう。
貿易自由化の「お手本」とされた韓国では、頑強な反対運動が起こっていることが、日本のTPP 参加への協議開始表明のあと報道された。この報道のタイミングも「国策」からみて、微妙である。とにかく目が放せない。