岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

「詩人の聲」:2015年2月(1)

2015年03月22日 23時59分59秒 | 短歌の周辺
天童大人プロデュース「詩人の聲」2015年2月(1)

1.天童大人 於)NOO法人東京自由大学2月16日(月)

 天童は50回目の公演。ここ数か月に渡って、聲に載せて来た、長編詩「ピコ・デ・ヨーロッパの雪」。これがいよいよ完成に近づいてきた。この作品は天童の若い頃の体験を表現した叙事詩的作品である。舞台は、スペインの山間部、シベリア鉄道、熊野古道、東京、京都と様々だ。内容も様々あり、焦点をどこに絞るか、どこを強調するかの模索が続いた。

 天童が新境地を開拓する過程が作品化されている。臨場感があり、聴いていて心がときめく。恐らく作者もときめいただろう。散文的要素がなくなり、時系列でなく全体の構成を工夫している。

 はじめて聞いたのが、同じ場所だった。だが聞くたびに言葉の無駄がなくなり、焦点がしぼれてきたようだ。ほぼ完成だが、完成まで、もう一度聲に載せるだろう。


2.長谷川忍 於)ギャルリー東京ユニマテ 2月17日(火)

 長谷川は25回目の公演。長谷川は田村隆一全集を読んでいる。そのせいか前回は、やや今までの長谷川の作風と違ったところがあった。長谷川の作品の最大の特徴は都市を題材としたものだったが、前回はそれが消えていた。

 どうしたことかと思ったが、今回は都市を題材とした作品が読まれた。聲が安定し、リズムも心地よい。長谷川は都市を題材としながら、そこに住む人間を表現している。ここに今回は、暗喩、擬人法を使った、象徴詩の要素が加わった。

 これらがどう結実するか楽しみだ。


3.禿慶子  於)キャシュキャシュダール 2月19日(木)

 禿慶子は28回目の公演。82歳の詩人。昨年の怪我が完治しておらず心配したが、全く年齢を感じさせない。聲に張りがあり、聲そのものも若い。これにまず驚いた。作者の世界観、宇宙観、人間の存在への問い、人間の生命、人間と自然のかかわり、自分と他者の関係などが、作品化されている。

 おそらく長い人生の中で培ったものが、作品化されているのだろう。だから表現に不自然さがどこにもない。人間への深い洞察がある。それが重厚な言葉遣いで表現され、淀まない聲、安定したリズムで読まれる。言葉遣いは美しい。

 聴いていて、8割の力で聲が出されているように感じた。力みがないのだ。これは心にとめておこうと思う。

4.柴田友理 於)キャシュキャシュダール 2月20日(金)

 柴田友理は九州の詩人。去年の秋までは東京に住んでいて、音楽活動もしていた。しかし突然の病気療養のために帰郷。それ以来、2回目の公演だった。人間の心の寂しさ、無力感から立ち上がろうとする人間、石に躓きながら歩いてゆく人間。必死で生きる人間。葛藤を抱えた人間。新作は全て人間を描いていた。

 これは東京時代には全くなかった傾向だ。大きく飛躍しつつあるのを感じる。最後に旧作を読んだが、これは巧みに言葉を配列しているが、センスだけで書かれた作品という印象がぬぐえず、見劣りがする。だが不思議に、旧作の方が、リズムがよい。新作の境地は大きな進展だが、まだ完全に自分のものとなっていないのだろう。

 これが課題だが、先に光明が見えるので、今後が大いに期待出来る。

        【あとの3人は明日の記事で】




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