オクトシティー正直村

おかしいな?変だな?と思った事を綴った駄文

権威の放棄

2007年05月21日 | Weblog

世の中から「先生」が消えつつある。

 先生とは、ただ単に先に生まれた人というのが語源だが、学徳の優れた人、師事する人に対する敬称である。学校の先生、医師、政治家、弁護士、学者などの指導的立場にある人に対しての尊称でもある。ところが、これらの尊敬されるべき人が「先生」と呼ばれることを敬遠しつつある。極端な人は拒否または拒絶して、「先生」という言葉に嫌悪感を持っている。さてさて、何かおかしい。

権威を嵩にして、人を指導する事に対して拒否反応がある。

 拒否反応があるなら、権威を捨てて対等の立場で意見を述べ、周囲の人を説得していこう、というのが現代の期待される手法だと思われているんだろう。いかにも民主的な響きがあるが、これは民主主義の原点に戻っているだけで、その原点から出発して、民主主義の仕組みを確立してきた過去の資産を御破算にしてしまう行為に等しいと思う。その仕組みとは、権威をいかに付与していかに行使させ、監視するかであると思う。

責任が果たせない人に権威は与えられない。

 肩書きが与えられ、併せて権威も与えられている人がいるが、その権威を行使して仕事をし、その結果に対して責任を取れない人からは権威を剥奪しなければならない。これが民主主義のルールである。人民から権限を付与されて権威を行使する人は人民の代表として立派に成果を残さなければならない。それができない人は権限も権威も肩書きも返上しなければならない。

なぜ、学校の先生、医師、政治家、弁護士、学者などの指導的立場にある人から権威がなくなったんだろう。

 日本では、権限を振り回すことに民衆の拒否反応があるし、権限を行使することに躊躇いがある。これも第二次世界大戦の後遺症なんだろう。民主主義の原点に回帰することが純粋の民主主義だと思い込んでいて、いつまでたっても民主主義が進化しない。そのために、昔の良き伝統が廃れつつある。少なくとも昔の良き伝統を継承していた世代が存続している間は良かったが、その世代が交代してゆくと権威そのものがなくなってしまう。

権威そのものがなくなっているのも事実である。

 権威、権威というが、結局は民衆の信頼であり、信頼に対する責任ある行動である。その地道な積み重ねが権威を生んでいる。学校の先生、医師、政治家、弁護士、学者などの権威は、過去の先輩達が一生懸命地道に築いてきた成果でもある。その成果を継承できなくなっている。そして、民衆はその権威を信頼できなくなっているし、信頼する風潮が廃りつつある。憂慮すべき状況である。

身近な事を考えれば、

 たとえば、公共の施設を利用する時、その使用の心構えは私有の物を使うときと比べて一般的にどうだろう。公共の物だから大事にしようというよりも公共の物だからとことん使って使い切って使いっぱなしでいいと思っているのではないか。通常であれば、個人の物はどんな使い方をしようと勝手だが、公共の物はみんなのことを考えて大事に使うのが本来の考え方である。日本人は公共の物を粗末に扱う風習が根付いてしまったようである。

その考え方の延長が「先生」の消滅ではないかと思う。

 「先生」を徹底的にこき使うのが民主主義の良いところだと勘違いしている。「先生」もこき使われたんではたまらないので、「先生」を返上する。「先生」も良く考えれば公共の物である。とことん使って使い切って使いっぱなしでいいと思っている。それよりも、民衆のほうが「先生」よりもえらいと思っている。権威もへったくれもない。当然そんな環境に権威が生じるわけがない。

今が考え直す好機である。

 権威を取り戻すためには、まずは民衆が「先生」を信頼するところから始まらなければならないし、「先生」は信頼に応えて立派な仕事をする努力をしなければならない。立派な仕事ができなくて信頼されないのか、信頼されないから立派な仕事ができないかは知らないが、とにかく信頼がなければ仕事は始まらない。信頼してやらせて結果を見てダメだったらその評価を適正にすればいいと思う。

権威には最小限の誇りがある。

 その誇りは堅持すべきである。その誇りさえ捨ててしまう事は、最初から権限の存在を否定している事に等しい。西洋に「高貴なる者の責任」という言葉がある。その最小限の誇りから権威を生じ権限を行使する自信が生まれるんだと思う。そしてまた、その最小限の誇りは何人にも侵されない神聖なものだと思う。この辺の考え方をもっと整理すべきだと思う。そして、「先生」は権威を持って自信にあふれて権限を行使してもらいたいものである。

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