先日モスクワで行われたヘビー級の統一戦はIBF&WBO&WBAスーパー
王者のウラジミール・クリチコがWBA王者のアレクサンドル・ポヴェトキンを大差の
判定で下しWBA王座も統一する形になった。
ジャッジ3者とも119-104という圧勝でダウンを3度奪い失点は11Rの
プッシングによる減点のみでは両者の実力差が歴然としていた。
現在の世界ヘビー級はWBC王者がウラジミールの兄であるビタリ・クリチコ
だから、クリチコ兄弟が独占しているわけで事実上 統一されているのだが何となく
盛り上がりに欠けてしまう。
最大の原因は強烈なライバルの不在で70年代のヘビー級が盛り上がったのは
主役のモハメド・アリだけでなく宿命のライバルといわれたジョー・フレーザーや
ジョージ・フォアマンにケン・ノートンといった強豪がいてアリはフォアマン以外と
それぞれ2勝1敗と名勝負を繰り広げていた。
一方でアリがいたばかりに主役になれなかったとはいえフォアマンら3人も80年代
のラリー・ホームズよりも知名度が高いのはアリと激闘を繰り広げたという事になる。
そのホームズは80年代前半に無人の野を行くような強さを見せたもののアリの
ライバルのような好敵手に恵まれず世界的な知名度や人気も今ひとつに終わって
いるので、せめて80年代後半に頭角を現したマイク・タイソンと全盛時が重なって
いればと惜しまれる。
現在のクリチコ兄弟は まさしく80年代前半のホームズ状態に陥っている形で強
過ぎて正当な評価を受けづらい状況だ。
思えば大相撲でも横綱の白鵬が現在 無人の野を行くような強さで大鵬の持つ
優勝記録を抜きそうな雰囲気だが、ライバルの横綱・日馬富士は昇進以降1度優勝
したものの2桁勝つのが精一杯の状態だし日本人ホープの稀勢の里も頭打ちの状態
だから‘周りが弱すぎる’と不当な評価を受けやすいのも事実。
一時期 取りこぼしが増えていた白鵬が日馬富士が横綱に昇進した途端に元気を
取り戻して優勝のペースが上がってきたのを見ると、やはりライバルの存在は大事
だというのが分かる。
それを考えるとクリチコ兄弟と凌ぎを削る事ができる強力なライバルの出現を熱望
しているのはボクシングファンだけでなくクリチコ兄弟自身ではないだろうか。