怪奇大作戦の京都買いますは仏像を愛した女・須藤美弥子と、牧
史郎のラブロマンス的な内容になっている。
面白いのが本来なら常に沈着冷静で科学的な根拠を拠り所に判断
するだけでなく最も恋愛から遠い立ち位置にいる牧が、事件を追う
うちに犯人サイドの女性に惹かれて行くというのは番組当初の人物
設定から外れている事になる。
京都買いますは脚本・佐々木守、監督・実相寺昭雄コンビによる
もので怪奇大作戦では3本目になっているのだが前半の恐怖の電話
とは牧のキャラが変わっているのだ。
恐怖の電話では桜井浩子演じる滝口令子が父親や周囲の人が殺害
される現場に居合わせていた事から執拗に事情聴取を行うし、音が
ヒントになっている事に気が付くと無響室に閉じ込めて様々なノイ
ズを聴かせるなど拷問と紙一重の聴取をするシーンが印象的だった。
つまり‘犯人逮捕のためには手段を選ばず’的なキャラが美弥子
という仏像を愛した女と出会った事から一気に変ってしまうという
感じで、本来なら犯人サイドの女性と接触するうちに惹かれてしま
うというのは三沢的なキャラになるし実際に死神の子守唄では同じ
立ち位置になっている。
ただし直情型の三沢なら美弥子には強い調子で迫っているだろう
から美弥子は牧に対してのように心を開く事はなかったのではない
かと思うし、繊細な牧だからこそ美弥子も自分と同じような要素を
見つけて心を開いたのかもしれない。
そして事件解決後に美弥子の姿を求めて京の街を牧が歩いて回る
シーンなどは三沢では絵にならないし、これこそ牧を演じた岸田森
の面目躍如だろう。
ラストで尼僧になった美弥子に出会うものの別れを告げられて振
り向いたら仏像になっており、コートを頭に被って寺を後にする場
面が三沢だったら死神の子守唄のラストと同じく呆然と立ち尽くし
て終わりそうな形だから美弥子の相手は牧が最適だったのではない
かと思うのだ。