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昨日は合宿前の最後のミーティングだったので部室に行くと、吉岡さんたちがやけに盛り上がっていた。何の話?とつい聞いてみたら、3人がかりで一斉に話し出されてしまった。
「先週、○○大学の子に飲み会に誘われたから3人で行ったんだけど」
…うん。(…いわゆる合コンってやつだろうか。吉岡さんたちも合コンとか行くんだ。…ふうん。)
「そしたら隣の男が乾杯して最初にいった言葉がね、
『キミって血液型何型?』
なわけよ!」
…うん。
「うんって、いきなり血液型だよ?学部とかじゃなくて血液型。合コンかっつうのよ」
……(合コンじゃないんだ。)
「その後も、星座はなにかとかそんなのばっかり。次は芸能人に似てるっていわれない?とかさ、なんかもうどうやって会話を成立させていいかわかんない」
…うーん、それは…相手は一応会話の「きっかけ」が欲しいんじゃないの?
「だって、『○○座ですけど』って答えたら『あー、やっぱり。そんな感じだよねー』って、あんた私のナニを知ってるの?しかも○○座って感じ、ってどんな感じよ?って思うじゃない」
…(厳しい。きみたち、怖いくらい厳しいよ。)
「オーダーとかも勝手にサラダ注文しておいて『女の子ってサラダ好きだよね』とかさ、なんかもういちいちむかつくの!」
…(む、むかつくんだ…。)
まあ、確かに僕だって勝手にモツ煮とか注文されて「男の子ってこういうの好きよね」とかいわれたら嫌だけど。
「でしょ!一般論について話してるんじゃなくてさ、今目の前に現実に一人の人間がいるわけよ?でもこれじゃあ、目の前に「女」って書いた紙を張って独り言いってるのと同じじゃない?」
…なんだかその例えはよくわかんないけど、確かにそうだね。それで、じゃあ相手にはそういう風に言ってみたの?
「言ったわよー。ひょっとして、女って野菜ばっかり食べてて芸能人に似てるっていわれると喜ぶ生き物だと思ってる?って」
…(う、…それ、相手に伝わってるかな、なんかちょっと心配だけど。)それで、そしたら?
「キミって変わってるね~、だって」
…ああ。
「もうなんかがっくりっていうかぐったりっていうかさ。あんた自分の言葉ってもんはないのかって、本気で言いたくなったわよ」
…(言わなかったんだね。…良かった。)大変だったね。
「だからもうそこからは何言われてもへー、ふーん、すごいですねー、って言ってとっとと帰ってきたよ、もう時間損したっていうか、まあおごりだったからいいけど!」
…(おごらせたんだね!!)…まあ、お疲れさま。でもなんだかそういうの聞くと、難しいね女の子と会話するって。
「イバラノ君は大丈夫だよー!普通に話せてるもん。こっちの話もきいてくれるし。」
「うんうん、ほんとえらいよキミは。なんかありがたみがわかったよ」
…ど、どうも。
言いながら僕は同い年の女の子に頭をぐりぐり撫でられてしまった。ちょっと嬉しいやら、でも微妙に複雑というか、いっそこきおろされるほうがまだ男としては可能性があるんじゃないかっていうか(何の可能性だ…)、もうなんだかよくわからない僕だった。