昨日は実家に帰ってきたんだ。まあ、何があるってわけじゃないけど、お盆だし一応ね。
それで、僕としてはやっぱり気になるので以前の僕の部屋(現在はじわじわと、父の「趣味の部屋」と化しつつある)がどうなっているのかと思ってのぞいてみたんだけど…やっぱりやめておけばよかったって、「夕鶴」の与ひょうよろしく後悔するはめになった。
得体の知れない仏像とか民芸品が増えているのはもう予想の範囲内として、部屋の正面に大きな父の写真が飾ってあるのには正直度肝を抜かれたよ。しかも、出張先のどこかの国で撮ったらしく、後ろには深い森と素敵な洋館。そして手前には、なんだか血統のよさそうな犬(それも猟犬ふう)を得意げにはべらせている父。明らかに他人の犬と他人の家を、さも自分のものみたいに写して、何をしたいんだろうかこの人は。
僕が心底げんなりしてリビングに戻ってくると、華子が待ち構えていたように
「あの写真見たでしょ」
というので、何であんなもの飾らせるのさ、と文句を言うと、
「あれでも私とお母さんとで説得したんだからね!本当は玄関に飾るつもりだったんだから!」
と反撃されて、もう僕は力なくうなだれるばかりだった。
一番の問題は、これが他人でなくて僕の父のやることだってことだ。
なにしろ同じ血が、半分は僕に流れているんだからね。