酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

雨はお昼過ぎに(大)雪へと変わるだろう?後編

2007-12-14 18:01:29 | ALWAYSな話
 1980年12月24日。朝方降っていた雨が雪に変わり、午前中に大雪警報が発令。市内各地で停電がおき、交通機関は完全にマヒ状態。後に「イヴ嵐」と名づけられたこの悪天候の最中、酔漢は中止された高校の補習授業の帰りであった。ようやくたどり着いた仙台駅で仙石線の復旧を待合室で待っていた。時間はすでに、午後6時を過ぎていた。
 
「東北線・仙山線・仙石線とも今のところ復旧の見込みはありません」
駅のアナウンスはしばらく前からなんら変わってはおりませんでした。夕方になり会社帰りのサラリーマンが駅構内にあふれ、駅の待合室はかなり混雑してきました。
「少し、外の様子でもみさぁいっか」と仙台駅から駅前を見ると、雪は少し小降りにはなっているようでした。そして、バスターミナルを見ますと、バスが動いているではありませんか。酔漢、丸光前に向かいました。仙台駅前発塩釜車庫行きの宮城交通のバスがあるはずでした。
やはり、丸光前バス停前は人であふれていました。が、バスはわずかではありますが、動いているようです。ですが、どこに並んでいいのかわかりません。(そりゃそうでしょ、「仙台駅前」バス停は日本で一番数の多いバス停ですから)人ごみを分けて、バス停を見つけ、並んでいる人の列をたどって最後尾にたどりつくと、青葉通りの交差点近くまで並んでいることに気付きました。
「こいずはバスさぁ乗るにも、どのっけかかっかわかんねぇちゃ」
バスしか交通手段がない状態です。会社帰りのサラリーマンがもっと増える前にバスの列に並ぼうとしたところ。
「あのぉーー。あのぉーーすみません。塩釜方面に行きたいんですけど」
と、ピーコートを来た、女性が声をかけてきました。

⇒お断りです。酔漢、中学時代に初恋は経験しておりますが、女性に声をかけるとかは、出来ないでおりましたし。まして、女性から声をかけられるなんて事などなかったものですから。声をかけられた時は、自分ではないと思っていたのでした。

「あの、俺ですか」
「そうそう、聞いてくれないのかと思った」
暗くなっていた中で彼女を顔をよく見ると、一瞬(きれいな人だな)と思いました
「塩釜方面のバス停ってこのあたりだって聞いてきたんですけど、どこに並んだらいいのかわからなくて・・・どこに並んだらいいんですか?」
「ここだけんど。俺も塩釜さぁ帰ぇるところなのっしゃ」
「じゃあ一緒ですね。よかったぁ。一人でバスにのるのかと思ったら、心細くって」
まだ、俺は、あんたと一緒に帰るなんて話していないぞ。とは、いうものの、話相手が出来たのと、よーーく見ると、本当にきれいな人でしたので、「これはこれでいいか」と勝手に納得している酔漢がおりました。
「家、塩釜なのすか?」
「そう、北浜って知ってますか」
「おらほの近所だすぺ。おれも、北浜二丁目のバス停で降りようと思ってたとこなのっしゃ」
「じゃあわたしもそこかなぁ・・」
「何丁目すか?」
「4丁目に家があるんだけど」
「んで、おれんとこの次のバス停で降りたらいいっちゃ」
「えーーつ。本当に近くなんですね。よかったぁ」(場違いにはしゃぐ彼女の図)
周りの人達には、能天気なカップルに見えたのかもしれません。
「んだとも、バスは初めてなのすか?」
「初めて乗るんです。いつも電車だし。この春塩釜に引越ししてきたばかりだし」
「どこから、来たのすか?」
「『防府』って知ってる?」
「どこっしゃ?」
「山口県」
「萩とかあっとこすか?」
「萩は日本海側だけどね、四国側の方」
どんな事情で、山口から宮城、塩竈まで来たのかは興味があったものの、いきなりそれを聞くのは、失礼だとは思いました。
「そういえば、名前まだ聞いてなかったよね。あなたなんていうの?」
(俺もまだ聞いてねぇっちゃ)
「俺すか?酔漢っしゃ。あんだは?」
「わたし?わたし みどり っていうの。じゃあ酔漢さんって、大学生?」
「おれ?高校3年生だっちゃ」
「制服じゃないの?」
「おらほの高校、私服だっちゃ」
「そうか、電車の中でも制服すくないなって思ってたんだけど、仙台の高校って、私服多いんだ」
「そんなに多くはないけんど」
「じゃあ、私より1つ年下だね」
「大学すか?」
「ううん、働いてる。南町に事務所があるんだ」
そんなたわいない話が続きました。時間はどの位たったのでしょうか。突然の状況の急変に対応していた?為、ふと我に返りました。時計を見ますと、早8時近くになっています。列はわずかづつではありましたが、進んでいます。バスの本数も増えているようでした。雪は小降りからほとんどやんだようになり、チエーンをつけたバスの走る音が大きく聞こえるようになっていました。ですが、周辺のオフィスの窓は、まだ暗いままでした。
8時半近くになりバスに乗ることが出来ました。しかも、バスの後ろの座席に座れました。僕らはもうヘトヘト。なかなかすすまない45号線。話の続きをしているうちに、みどりちゃんが少しづつ、寝始めました。それにつられるように、僕もウトウト。気付くと、彼女は僕の肩に完全によりかかって寝ておりました。僕はどうしてよいものか(こういうとき、男としてどういう態度をとってよいものやら)解らず、精神的にもうれしい?動揺でした。
10時頃、塩竈のバス停に着。僕は彼女のバス停(ほんの隣のバス停なので)まで一緒でした。
「ごめんね。遠回りさせて」
「この階段上がれば、家はすぐだからっしゃ」
「じゃあまたね」
「またねって・・」
「これ連絡先だから。今度一緒に遊ぼうね」
(内心  ラッキー  でした)
家に着き、10時半。母はまだ起きてました。
「地震のときみたいに歩いてくるかと思った」
「とんだ?クリスマスだったなや」と風呂に顔を沈めた酔漢でした。
偶然から出会った彼女ですが、彼氏はちゃんとおりまして(あーあやっぱりこういう展開)それからすぐ結婚しました。ですが、僕は、それから後も彼女の家に遊びに行ったりしましたし、酔漢の結婚式にはご夫婦で出席していただきました。ご主人の事故で仙台を離れたと聞きました。ご子息・ご令嬢と共に連絡が取れずにいます。いささか心配ではあります。

「お前、『イヴ嵐』の日何してた?」と、料理中の家内に。
「尚絅の1年で、もう休みだったんだ。仙台駅前のケンタッキーに行けなくなって、しょうがなく、八木山のスーパーでフライドチキンを買って、八木山中学校の前のケーキ屋さん(彼女も店の名前忘れたそうです。知ってらっしゃる方がおられましたらお知らせ下さい)で予約したケーキを受け取って、家にこもってクリスマスしてた。お兄ちゃんが働いてたけど、長町方面から歩いて帰ってきたよ」

みなさんはどうでしたか。あの嵐がなければ、偶然な出会いがなかった酔漢でした
が、1年後のクリスマスイヴ。この出会い以上の事件が酔漢の身に起こったのでした。
けれども、これをお話するには、まだ暫く時間をいただきたいと思います。まだ心の中では進行中な事ですから。

長くなりました。   もうすぐ クリスマスですね。

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