さて。
昨日のエントリで予告した通り、放送法および受信料について少し調べてみた。
と言っても、基本的には Wikipedia からの引用が殆どであるが、少し纏めている。
Wikipedia での受信料の項目はこちら
放送法はこちら
が、一言二言で言い表すことが出来るような内容ではない。
かなり長いエントリだが、受信料について興味のある方、良く知らない方、漠然としか
認識のない方などに少しでも受信料に関する多くの矛盾が伝わればと思う。
まずは、この「放送法」の公布から、主なテレビ局の開局年をおさらい。
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1950年(昭和25年)5月2日 放送法公布
1950年(昭和25年)6月1日 放送法施行
1953年(昭和28年)2月1日 NHK テレビ放送開始
1953年(昭和28年)8月28日 日本テレビ放送網(日テレ) テレビ放送開始
1955年(昭和30年)4月1日 ラジオ東京(現TBS) テレビ放送開始
1958年(昭和33年)12月23日 東京タワーから放送開始
1959年(昭和34年)3月1日 フジテレビジョン開局
1960年(昭和35年)9月10日 カラー本放送開始
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放送法は、まだ民放はおろか、東京タワーでさえ無かった頃にできた法である。
言い換えれば、この時テレビを持っている=NHK を見る人、といえる。
その法律が全く改正されずに早半世紀以上。
それでも、「テレビを持っているなら受信料を払え」である。
とまあ、ここだけ見て言っても仕方ないので、まずこの放送法で定められている内容に
ついて書いて行くことにする。
最初は、この「テレビを持っているなら」の部分である。次のように記されている。
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○協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会と
その放送の受信についての契約をしなければならない。
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受信設備について色々と条件もあるのだが、まあ普通に NHK や民放が見れる、世に
出回っている殆どのテレビと思えば良い。パソコンのモニタなどは、最近の「テレビが
見れる」というようなチューナー内蔵型でなければ対象外である。
そうそう。NHK は、テレビ局の1つではなく、「放送協会」なのである。
で、その NHK が以下のように主張していると言われている。
これは法的な定義ではない。あくまで「 NHK の主張」である。
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○チャンネル設定の変更またはチューナー設定をずらすことにより、NHKの放送が
見られないようにしても、一般の人が簡単にまた元に戻せる状態であるならば
「受信することが出来る設備」と解釈されるとしている。
○「NHKを見ている・見ていない」といった事実や「NHKを見たい・見たくない」
という意志に課金するのではなく、「NHKを見る事が出来る」という受信設備の
能力や、「(将来的に)NHKを見る」という可能性に対して課金をしようとしている。
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これが、いくら「 NHK 見てないから」とか「映らないから」と言ったところでまるで
相手にしないくらいの勢いの根拠である。ヒドいな。
なんでも、受信料というのは、スカパー!の視聴料などと違って、「特殊な税金」という
位置づけなのだそうだ。
税金ですよ税金。アレは税金らしいですよ。
だからこそ、「見ていない」といっても、取り合わないワケだ。税金なんだから。
車に乗っていなくても、持ってるだけで払わなきゃならない自動車税と同じ扱いだ。
NHK は特殊法人なので、法人税は免除されている。他にも、特殊法人ならではの多彩な
優遇措置も受けている。使途を明確にしなくても良い自由に使える税金も得られる。
集めた受信料(=税金)で地上波デジタルなどの研究開発を行っていると言っているが、
それならもっと納税者への還元があってしかるべきだろう。
閑話休題。
受信料制度には以下のような目的があることから必要性があると主張されている。
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○公正な報道を行う為、政府・企業等の圧力に屈しないよう財源の独立性を維持する。
・一部の権力者等にとって都合の良い情報ばかりが流され、結果的にそれで国民が
誘導されたり洗脳されたりすることを防ぐ、ということである。
○安定した財源を確保して視聴率等の市場経済の原理に流されない機能を維持する
・文化の(生活基盤を支える)担い手となり、国民の生命・財産を守るため
・情報を共有して地域の人々の結束を深めるため
・視聴率が得られなくとも必要とされる教育放送・福祉放送・災害緊急放送を行うため
・視聴率の影響を受けると、視聴者の興味本位的な番組やスポンサーに迎合する番組
制作が行われて放送内容が低俗化することなどが懸念されることから、それを防ぐ
ことにより放送そのものの質の維持・向上を図るため
○テレビ設置者に公平な負担を課すことによって、より民主的な事業運営を図る
・株式会社の制度では、より多くの株を持っている株主が、その会社を動かす権力を
持っていると言える。このような事態になることを防ぐ為に特定の人や企業に負担
が偏らないようにし、事業運営に民主主義を反映するため
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なんだかもう、読んでてアタマをかしげてしまうような内容ばかりである。
よくもまあ、のうのうとこれだけ言えたものだ。
もちろん、この法律を作った人達は、本当にこれだけの信念を持って作ったのだろう。
だがしかし、現在はそれを踏みにじらんばかりの状況だと思うのだが如何だろうか。
また、NHK が無視しているのかと思われるような、現状の問題点は次の通りである。
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○「選択の自由」が無い・奪われている
・実際の放送は、NHK の放送以外にも無料・有料の民間放送が存在している。
例えば「無料の民間放送だけを見たい」「WOWOWやスカパー!といった特定の
有料放送だけを見たい」と思っても、NHKには受信料を払わなければならない
ことになる。
さらに法律の文面だけを見ると、NHKを視聴する意志が無く受信契約を望まない
人は、テレビが持てない状況を強いられることになる。
・公共放送の受信料は対価ではない「特殊な公的負担金」とNHKは主張しているが、
WOWOWやスカパー!などの有料放送を視聴する権利を買う為の視聴料も視聴者が
経済的負担をすることには違いないことから、公共放送も有料放送であると言える。
ちなみに、受信料は全額が消費税対象となっており、対価に類するものであると政令
(消費税法施行令)に明記されている。
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NHK を見なくて、受信料を払いたくない人は、テレビを買うな、持つな、と。
もちろん、ゲーム機だけを接続するような場合も、テレビに受信機能が付いているならば、
受信料を払え、ということだ。
また、消費税法で「受信料は対価に類するものである」と明記されているのに、NHK は
「対価ではなく公的負担金」だと言い切っている。
NHK は、少なくとも消費税法は適用にならないらしい。
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○受信料を払っていない、徴収されていない人
・「日本固有の領土である」と政府が主張する北方領土の受信機設置世帯からは徴収
していない
・日本に駐留する在日米軍基地内に設置されているテレビに対しては受信料を徴収して
いない
・大規模な企業であっても実際の受信機設置箇所数ではなく「全社で○台分の契約」と
いったアバウトな契約も少なくない
・ホテルや旅館の場合も各部屋にテレビがあれば1室1契約必要であるが、正確な台数で
契約していないホテル等も多い
○地域開発スタッフらが違法な勧誘を行っている
NHKから委託を受けて受信契約の取り次ぎや受信料の徴収業務などを行っている業者の
ことを、「地域開発スタッフ、通称:地域スタッフ」と呼ぶ。
・放送法32条1項の最初の段落のみを強調した上で、「不満があっても法律には従え」
「法律を守らないのは非常識だ」と、半ば命令口調・半強制的・強迫的に受信契約を
するよう繰り返し要求している
・早朝・深夜といった時間帯に突然訪問されること、戸をどんどんと叩く行為を行う
・受信契約書であることを告げずに「ここにサインをして下さい」などと氏名・住所を
記入させ、印鑑を押させる
・地域スタッフはあくまでも「契約・集金代行業者」であってNHKとの雇用契約はない。
したがって、「NHKの者です」と名乗るのは職業詐称である
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既述の、NHK が主張しているという「受信料の必要性」が、いかに綺麗事を並べているだけ
で現実を見ていないことだということは、次の問題点から良く分かる。
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○放送内容が公共放送として相応しくない
本来公共放送は、報道の中立性を確保し、視聴率が得られなくても必要とされる放送等
を行い、また視聴率稼ぎの為に放送内容が興味本位になることを防ぐ等の目的を掲げて
いたはずである。しかし実際は、野球中継の放送権を民間放送の相場以上の金額で獲得
したりするのをはじめ、視聴率獲得を意識した過剰な演出・表現を行ったり、必要以上
に娯楽番組が多かったりしている。
また、特定の政治勢力や公的組織を擁護する放送に内容が傾いているのではないかと
いうことを指摘する者も少なくない。
公共放送と言えども、結局自分の都合の悪いことは隠蔽する可能性があり、背後には
国会や総務省等の国の機関があることから「報道の中立性を確保する」も机上の空論に
過ぎないのではないか、またいかなる外力に屈しないということは、放送・事業内容も
独善的になるのではないかという意見もあるらしい。
○安定した財源と法律・政策で守られ、不必要に組織が巨大化している
・受信料収入という安定した豊かな財源が確保され、また特殊法人である故に法人税が
免除されている等かなり保護・優遇された組織である
・その財源により不必要なまでに子会社を設立して受信料とは別に多くの利潤をあげ、
多くの官僚・上層部の天下り先になっている
・番組プロデューサーの制作費用着服などの不祥事が相次いで発覚したとおり、非常に
不透明な状態で、「受信料不払いが増えて云々」など言える立場ではない
○もう民間放送のみでも十分ではないのか
・報道関係の番組や災害緊急放送等は民間放送でも行われている
・災害の被災者等の中には公共放送でなくても・民間放送だけでも十分事足りる
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簡単に言うと、NHK でなければ見ることが出来ない、NHK でなければ不可能、といった
番組はないのではないか?
既述の「国民の生命・財産を守る」はハナから意味不明だが、それ以外の「地域の人々の
結束」や「視聴率が得られなくとも必要とされる教育放送・福祉放送・災害緊急放送」と
いったものは、NHK でなければ不可能、というものではないと思う。
それこそ、法律が施行された 1950年であればともかく、この現代においてそれはない。
なお「テレビが映る映らないは別にして、持っているなら受信料を払え」と義務付けている
にもかかわらず、契約を締結しない人に罰則がないのは、次のような理由からだそうだ。
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○日本国憲法第19条
・放送法でテレビ設置者に受信契約を義務化すること・受信料を納めることを強要する
と、日本国憲法第19条「思想・良心の自由は、これをおかしてはならない。」に抵触
する恐れがある。
・法律の力や公権力でNHKが存続することは、国営放送と何等変わらなくなると考えられ
ることから、罰則を無くすことでNHK・受信料制度の存続について国民の判断にゆだね
ようとしている
・現行法上、NHKは受信契約締結義務者との契約を義務づけられておらず、受信契約締結
をNHKに申し入れても契約を断られる可能性がある。
このことから、受信契約締結義務者は、NHKが原因で受信契約を締結できない可能性が
ある。原因がNHKにある場合でも罰則を受けるのは不合理であるので、法律上罰則は
規定されていない
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実は最後のは知らなかった。NHKに、テレビ持ってる人との契約締結の義務はないらしい。
NHKは、「受信料を取りたい人からだけ取れば良い」という意味にもとれる。
法律として「テレビを持っている人は協会(NHK)と契約しなければならない」としながら、
協会側から見るとその義務は無いとは、一体どう解釈すれば良いのか。
とまあ、読めば読む程、現状との食い違いが明確になってきて、ますます謎が深まる受信料
であるが、先のニュースの通り、ついに「払ってない人に督促状を送って裁判で」回収をする
方針にしたようである。
繰り返すが、私は「何が何でも払いたくない」とは言っていない。
見たい番組、あるいは見たくなるような番組があり、かつ見ようとする意思があれば、
それなりの対価として受信料を払うのは当然だと思っている。
今まで漠然と「法律なんでしょ?」と言う理由で受信料を払っていた方がいらっしゃるなら、
この機会に一度、放送法の内容を確認して頂きたいと思う。