パソコンにウィルスを送り込み、遠隔操作で脅迫文を送りつけた。
ウィルスに感染したパソコンの所有者が誤認逮捕された。
この事件の報道が連日続いています。
ハイテク犯罪に警察がついて行けず、真犯人に翻弄され、誤認逮捕をしてしまう。
確かに問題だけど、そういうことも仕方がないかなぁ・・・と警察に同情もします。
しかし、驚くべきことは、そうして誤認逮捕された人の何人かが自白していること!!
無実なのに、「自分がやりました。」と認めてるってどういうこと???
報道によると、「楽しそうな小学生を見て脅してやろうと思った」という動機や、HPに書き込んだ際のハンドルネームの由来まで自白している?????
どうして無実の人が、具体的な動機や由来を話せるの?
いったい誰が考えたの?
意味わからない! あり得ない!!
日本の裁判官は、こんな具体的な動機や由来があると、「具体的で真に迫っており、犯人でなければ語ることが出来ない」と、単純に自白を信用して有罪にしてしまいます。
明日、警察学校で刑事の卵の皆さんに講義をするのですが、この事件をどういうスタンスで伝えようか?
難しい・・・・ 「目の前の被疑者は犯人じゃないかもしれないと疑ってみてください。」
警察の常識とは全く正反対ですね。
京都新聞の社説が、とても鋭く切り込んでいます。
【京都新聞社説】
「PC誤認逮捕 不当な取り調べ根絶を」 |
身に覚えがないといくら否認しても逮捕され、長期間勾留された恐怖を警察はどう償うのか。 パソコン(PC)を遠隔操作し犯罪予告メールを送った事件で警察庁の片桐裕長官は、警視庁、神奈川、三重両県警、大阪府警に逮捕された男性4人について、真犯人ではなく誤認捜査だと認めた。 謝罪が順次進められており、刑事処分が取り消される。 ずさんなハイテク捜査の見直しも急務だが、国民に不安を与えているのは、取調室で 聞く耳を持たず、無実の人を犯人に仕立て上げようとした捜査機関の体質そのものだ。 パソコンでインターネットを使う誰もが巻き込まれた可能性がある。戦慄(せんりつ)を禁 じ得ない。 供述には虚心で向き合い、言い分に従ってアリバイ捜査で裏付ける。捜査の基本が、 ないがしろにされていた。警察と検察への信頼を根底から揺るがす事態だ。なぜ誤認逮 捕が相次いだのか徹底的に検証し、公表すべきだ。遠隔操作ウイルスは以前から存在 する。過去の同種事件も、調査が必要だ。 誤認逮捕された4人のうち2人が否認から転じ、容疑を認める供述をしたことは看過できない。 神奈川県警のケースでは、小学校への襲撃予告をしたとして威力業務妨害容疑で誤認 逮捕された大学生は、取り調べに対し、「楽しそうな小学生を見て脅かしてやろうと思っ た」などと、具体的に動機を供述したとされる。 なぜ無実の人から、こんな作り話が生まれたのか。捜査員の誘導や、自白を強要する 威圧的な取り調べがなかったのか。密室のやりとりを明らかにする必要がある。 真犯人とみられる人物は、大胆にも「犯行声明」を弁護士らに送りつけてきた。ネットを 介し他人のパソコンを乗っ取るウイルスや偽装工作は巧妙で、警察が踊らされた面もあ ろう。 問題の根深さは、IPアドレス(識別番号)からパソコンを特定すれば「動かぬ証拠」とし てきた捜査手法にある。これでは精度が低い時代のDNA鑑定を過信し、自白を強要して 無実の人を殺人犯に仕立ててしまった事件と同じ構図ではないか。 警察は、真犯人逮捕と全容解明を急ぐとともに、信頼回復の道のりが険しいことを肝に 銘じ、捜査のあり方を見直してほしい。各事件の捜査経過や取り調べ中の発言も、公に すべきだ。 冤罪(えんざい)を防ぐには取り調べの録音・録画(可視化)が有効だ。捜査現場の抵抗 感が根強く、重大事件などでの一部試行にとどまっている。今回の反省を踏まえれば、罪 種を問わず、全面可視化が必要だろう。
[京都新聞 2012年10月21日掲載] |