弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
弁護士の活動、日々感じたことを弁護士目線でレポートします
弁護士をもっと身近に・・・

「孫子の兵法」と刑事弁護

2012-07-30 19:05:17 | インポート

    

7月27日、私がリーダーを務める京都法廷プレゼン研究チームの例会がありました。

京都の若手弁護士で、裁判員裁判での法廷弁護活動に活かすためにプレゼンを勉強しようと、2006年からスタートしています。

これまでに本も一冊出版し(共著:「入門法廷戦略」)、現在も、「孫子の兵法」を刑事弁護活動に活かそうと研究して、季刊刑事弁護(現代人文社)にも連載しています。

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27日の例会では、孫子の兵法第12編「火攻篇」をみんなで研究。

刑事弁護における火攻めとは何だ?と議論しました。

火攻めは効果は大きいが危険も伴う、時と日を選ぶ必要がある、怒りに任せるのではなく、慎重に選択をしなければならない・・・・・

結論  これは法廷における「異議」だ!! となりました。

異議は時期を見極めなければならない、成功すれば的を殲滅できるが、失敗すればこちらが傷を負ってしまう、まさに、「異議」は火攻めです。

次回の例会では、孫子の説く火攻めの方法を異議に当てはめて考えていくことになりました。

でも、孫子を真剣に議論している弁護士って、僕たちだけなんだろうなあ・・・

しかし、戦いである裁判には、孫子の教えはとても参考になります。

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 例会では、裁判員裁判の研究もしており、私が来年に控えている裁判の冒頭陳述を実演し、他のメンバーからいろいろと貴重な意見をいただきました。

本当に役に立つ研究会です。

孫子曰わく、およそ火攻に五あり。

一に曰わく火人、二に曰わく火積、三に曰わく火輜、四に曰わく火庫、五に曰わく火隊。

火を行なうには因あり、因は必ず素より具う。

火を発するに時あり、火を起こすに日あり。

時とは天の燥けるなり。

日とは月の箕・壁・翼・軫に在るなり。

凡そ此の四宿の者は風の起こるの日なり。

 


可視化パレード! 京都弁護士会

2012-07-29 13:15:07 | インポート

   

7月25日、取調べの可視化を求め、秘密保全法制に反対する京都弁護士会のパレードが行われました。

真夏の炎天下、約100名の弁護士らで、丸太町富小路の弁護士会館から、烏丸丸太町、

烏丸御池へと進み、ゴールは堀川御池、みんなで空に風船を放つという、

約1時間のパレードでした。 

しかし、この可視化パレードも、もう5年目くらい? 

いい加減、可視化を早く実施してくれないと。

民主党政権になったらすぐにできるかと思いきや、遅々として進みません。

この間、厚労省の村木さんの事件や、小沢一郎の秘書の事件、足利事件と布川事件の再審無罪、大阪府警の取調べ録音の公開などもいろいろとあったのに、それでも進まない。

検察、警察の抵抗はすさまじいものです。

来年は、パレードの必要がなくなっているといいなあ。

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  この写真は、昨年度、一緒に京都弁護士会の副会長をした戸田洋平弁護士のFacebookにアップされた写真を転用しました。

 戸田先生、許してね。

  

  パレードのあとは、京都弁護士会の夏の行事、ビアパーティーが、全日空ホテルの屋上ビアガーデンで行われました。  


蜘蛛の糸と被疑者弁護

2012-07-28 09:08:44 | インポート

  

7月26日、京都弁護士会で被疑者弁護の研修を行いました。

架空の放火、殺人事件を設定し、逮捕された被疑者の弁護のために、いつ、何を、どのように

すべきなのかを、若手からベテランまで、約50人の弁護士とともに考えました。

皆さん熱心に参加していただき、私からの質問にも積極的に答えていただき、

おかげで、成功のうちに終えることができました。

研修では、参加者の皆さんに、被疑者弁護で大切なこと3つ、そして、それを実現するために

やるべき具体的弁護活動を9つ、持って帰ってもらいました。

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研修での私のオープニングトークとクロージングの要旨です。

「何気なくカンダダが頭を上げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗(やみ)の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、ひとすじ細く光りながら、するすると自分の上に垂れて参るではございませんか。」

被疑者・被告人にとって、私たち弁護人は地獄に垂らされたいとのようなものかもしれません。

しかし、私たちは、簡単に切れる蜘蛛の糸であってはなりません。
強く、太いザイルにならなければならないのです。

そして、私たちは、お釈迦様のように偉くはありません。

天上から、登ってくるカンダダをただ眺めていてはいけないのです。
ザイルを使って、地獄に降りて、被疑者・被告人を抱えて、もう一度上ってこなければなりません。

この研修で、蜘蛛の糸を、強くて、太いザイルにしましょう。

    

   


だら、だら、だら。ぢり、ぢり、ぢり。

2012-07-24 22:06:24 | インポート

Red1_2    だら、だら、だら、だら、だら ・・・・

         ぢり、ぢり、ぢり、ぢり、ぢり ・・・・・

    づる、づる、づる、づる、づる ・・・・・

    でれ、でれ、でれ、でれ、でれ ・・・・・

     どろ、どろ、どろ、どろ、どろ ・・・・・

Red1_4
 

  らだ、らだ、らだ、らだ、らだ ・・・・・ 

  りぢ、りぢ、りぢ、りぢ、りぢ ・・・・・ 

  るづ、るづ、るづ、るづ、るづ ・・・・・ 

  れで、れで、れで、れで、れで ・・・・・

  ろど、ろど、ろど、ろど、ろど ・・・・・

 

今日は、ボイトレレッスンの2回目に行ってきました。

腹式呼吸で、息を吐きながら、母音毎に口の形をはっきり変えながら、自分の名前を言う練習に

続いて、滑舌練習!!

 

「だ行」と「ら行」をアイウエオ順に組み合わせて、繰り返す。

「だ行」と「ら行」は、口の中で下を置く場所が違うだけ。

簡単なようで、繰り返していると難しい。「ら行」を先にすると、難度が上がります。

これができるようになったら、3文字を組み合わせるそうです。

たとえば「ろどろ」 これは難しそう。

 

法廷で、裁判員に聞き取りやすく、心に届く声で話ができるようにがんばります。


ゆれる死刑~アメリカと日本~ 小倉孝保(岩波書店)

2012-07-22 22:32:10 | 本と雑誌

   

京都弁護士会の副会長を終えてしばらく、仕事に関わるような本を読む気になれず、

小説ばかり読んでいたのですが、知り合いの弁護士に薦められて読んでみました。

いい本です。 ぜひ、お薦めします。

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 著者は毎日新聞の記者さんで、現在は外信部の副部長。ニューヨーク支局長時代に、アメリカの死刑制度について調査し、日本の死刑制度と比較して本書をまとめられたようです。

 アメリカでは1972年に連邦最高裁が死刑制度を違憲とする判断がなされ、いったん死刑制度は完全に廃止されました。しかし、その後、ジョージア州で死刑を科す場合の陪審員の裁量権を制限する方向で司法制度を変更したところ、1976年に連邦最高裁が合憲と判断。それを受けて、他の州でも法改正がなされて、死刑が再開されています。
 しかし、その後、現実に死刑判決を受けたり、執行されたりする者がほとんどいない州も多く、現在では、多くの州で死刑制度が廃止されており、今も、いくつかの州で死刑廃止への動きがあります。

 そうしたアメリカで、筆者は、死刑制度に関わる人たち、冤罪で死刑判決を受けた人たち、犯罪被害者遺族など様々な人へのインタビューをされたほか、死刑の執行現場に立ち会い、現実の執行を見てこられたそうです。

 また、日本でも、被害者遺族や冤罪で死刑判決を受けた人、執行に立ち会った元検察官、宗教教誨師など、様々な人にインタビューをしておられます。

 昨年、大阪此花区のパチンコ店放火殺人事件の裁判員裁判で、絞首刑が残虐な刑罰ではないのかという点が争点となりました。
 アメリカでは、19世紀に絞首刑は残虐であるとして廃止され、電気殺や銃殺、薬殺に執行方法が変わったそうです。そのころ、日本は幕末~明治初期、ちょうど太政官布告で死刑の執行方法が絞首刑とされています。
 アメリカからは、150年、議論が遅れています。

 先進国のなかで二つだけ残された死刑存置国であるアメリカと日本の決定的な違いは、情報公開であるということです。

 アメリカでは死刑の執行は一ヶ月前に明らかにされ、本人や家族、弁護人、被害者遺族、ジャーナリストは執行に立ち会うこともできます。
 執行現場を目の当たりにするからこそ、19世紀に絞首刑が残虐だとされ、執行方法を巡る議論も盛んになっているそうです。

 他方、日本では、執行は事後にしか明らかにされず、刑務官、検察官、医師など限られた人が職務として立ち会うことしか認められていません。
 密室で死刑は執行されています。
 そのため、日本では、死刑の問題は、ほとんどの市民にとってはどこか遠い世界の話、理論的・観念的な話、他人事にしかならず、およそ議論になることがありません。
 残虐な事件の裁判の時に、死刑になるか?なぜ死刑にならないんだ!という形で話題になるばかりです。

  

以下は、帯に記載された筆者後書きの抜粋です。

「取材している間、死刑に賛成か、反対かと何度も問われた。自分自身、逡巡しながらの取材だった。無実の罪を着せられた人たちから取材すると、『反対』の気持ちは強くなり、被害者遺族から苦しい胸のうちを聞くと、簡単に死刑反対を口にできなくなる。人に会うたび心は揺れた。(略)一方、取材を進めるにつれ、日本の死刑のあり方への疑問は深まった。執行があまりにも閉鎖的なため、死刑について正しく議論する材料がない。(略)問題を数え上げればきりがない。今後、こうした問題について議論が深まることを期待している。」

詳しくは、http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0254140/top.html 

私も頑張らないと。