「黙秘権」 という権利があります。
日本国憲法では、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」(38条1項)とされ、刑事訴訟法にも何か所も出てきます。
最近は、被疑者(逮捕されてから起訴されるまでの捜査機関による取調べが行われる間)に、国選弁護人が付くようになったこともあり、
弁護人が黙秘を薦めて、取調べの時に黙秘するケースも増えているようです。
黙秘権は権利ですから、黙秘権を行使したことをもって不利益に取り扱うことは許されないはずです。
ところが、警察に逮捕されて、この黙秘権を行使していると、反省していない!と判断されて、
検察官の求刑や、裁判官の判決が重くされてしまうことがあったりします。
こんなことはおかしいのですが、検察官や裁判官の理屈としては、
洗いざらい自白した場合には反省の態度があるとして良い情状として考慮するけれども、
黙秘するとそういう良い情状がないから相対的に悪く評価されているだけであって、
黙秘したことをもって不利益に評価したのではないということのようです。
さすがは法律家です。
ヘリクツ!がうまい!
結局、一緒だと思いますが。
さて、昨日、捜査段階で黙秘していた事件の被告人質問をしてきました。
捜査段階では黙秘していたのですが、公判ではすべて自白しています。
きっと、捜査段階で黙秘していたことを検察官からネチネチと責められて、悪い情状として言われるだろうと予測。
そこで先手を打って、私から次のような質問を被告人にしてみました。
「警察や検察では、事件のことについて黙秘していましたね。」
「逮捕された時、警察の人から、黙秘権があるということを聞きましたね。」
「言いたくないことは言わなくてもいいと言われましたね。」
「自分が不利になるかもしれないことは言わなくていいということでしたね。」
「そういう権利があると聞きましたね。」
「逮捕されてから、検察庁に行きましたね。」
「検事からも、黙秘権があるということを聞きましたね。」
「その後、勾留される前に、裁判官のところにも行きましたね。」
「裁判官からも、黙秘権があるということ聞きましたね。」
「弁護人の私とも話をしましたね。」
「私からも、言いたくないことは言わなくていいという説明を受けましたね。」
「私からは、調書も作らなくていい、サインしなくてもいい、サインする義務はないという説明を受けましたね。」
「あなたは、逮捕後、何度も黙秘する権利があるということを言われたのですね。」
「あなたは、取り調べで黙秘していたのですね。」
さあ、どうだ!
これなら検察官は、「どうして黙秘していたんだ!」と、被告人をいじめることはできないだろう!
検察官は、パソコンで打った論告の書面を準備していました。
その書面には、もともとは、
「被告人は、公判では本件への関与を一応認めているが、捜査段階では黙秘しており、真に本件を反省しているかどうかは疑問である。」と書いてありました。
あっ、やっぱり・・・・・という感じなのですが、
最終的に手書きで次のように修正されていました。
「被告人は、公判では本件への関与を一応認めているが、捜査段階では 共犯者の素性といった重要な点は黙秘しており、真に本件を反省しているかどうかは疑問である。」
フフフッ!
二重線で削除してくれてました!