公害訴訟の後編
法廷闘争もいよいよ佳境へ!
住民の健康被害の原因物質がヘルムート38だといえる
のかを巡って、科学者が証人として出てくる。
初めに出てきたのは古美門が連れてきた
化学物質の権威、町村名誉教授。
町村教授は病気の原因はヘルムート38であると断定。
これに対して、三木の用意した新進気鋭の宇都宮教授は全く逆の見解を証言する。
古美門は、宇都宮が町村教授研究室在籍中にちかん事件を起こして、研究室から追い出された
ことを暴き、宇都宮が私怨で町村に反対する見解を述べたと印象づけることに成功する。
ここまでは完全に古美門ペース。
ここから工場側の反撃。宇都宮に痴漢をされたという事件の被害者である女性研究員が登場。
女性研究員は、あれは痴漢なんかじゃない、町村が嫉妬心から過剰反応して、宇都宮を追い
出したに過ぎないと証言してしまう。
さあ、ここで古美門はどうするか?
とても興味深い、古美門と黛の反対尋問を再現してみよう。
裁判長 「原告代理人(反対尋問をどうぞ)」
古美門 「ありません」
黛 「・・・・・、私から!」
古美門 「やめておけ」
黛 「宇都宮さんは痴漢のレッテルを貼られたことで、
教授を恨んだんですよね。だから、あえて反対の見解
を・・・」
証人 「宇都宮さんはそんな人じゃありません。私は、一科学者として宇都宮さんの見解を
支持します。この分野では、今、いちばん進んでいる研究者なので。」
黛 「・・・・以上です。」
古美門 「愚かもの・・・・」
そう、反対尋問は完全に失敗。
女性研究員に、宇都宮が信用できる人物であることをもう一度言わせたばかりか、主尋問で
も出ていなかった「科学者としては宇都宮の見解の方が正しいと考える」という意見まで言わ
れてしまった。
黛の尋問の何がいけなかったのだろうか? 3つの点を指摘できる。
① 結論(宇都宮が逆恨みからあえて反対の見解を言った)を尋ねた。
② 自分の意見を押しつけて、認めさせようとした。
③ とにかく尋ねなくちゃいけないという義務感から尋問した。
結論を聞けば、証人には尋問の意図が明らかになり、反発は必至。結論を聞くのではなく、
結論を導いてくれる事実を積み上げるのが尋問の鉄則!
自分の意見を押しつけても認めるわけがありません。反対意見を言うためにわざわざ法廷
に出て来た証人が、「私が間違ってました。」なんて言うわけがない。
依頼者の手前もあるし、なんか聞かないとマズイんじゃないかという不安から、弾劾するポイ
ントもないのにとりあえず尋ねてしまってはいけません。
反対尋問には戦略が必要。弾劾すべきターゲットを見つけて、それに矛盾する事実を証人に
認めさせて、積み上げていくこと。
ターゲットが見つからないのであれば、あえて尋問しないという勇気ある選択をすること。
反対尋問の対象となる証人は敵側証人です。尋問をして話す機会を与えれば、与えるほど、
こちらに不利な内容をしゃべってしまったり、弁解する機会を与えることになります。
この女性研究員に対する反対尋問は、古美門の「ありません」が正解!
それにしても、この失敗例はよくできてる! 本当の法廷でもよく見る光景です。
来週はいよいよ最終回! 黛と古美門の対決らしい。
そして、三木がデスクの引き出しに隠し持つ写真の秘密も明らかに!
リーガル・ハイ第10話はこちら http://www.fujitv.co.jp/legal-high/story/story10.html