弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
弁護士の活動、日々感じたことを弁護士目線でレポートします
弁護士をもっと身近に・・・

弱い虫 馬場俊秀&鉄拳PV

2012-11-27 08:17:12 | インポート

    

話題になっている馬場俊秀の新曲「弱い虫」と鉄拳のPV

遅ればせながら、私も見ました。

日本の刑事司法ってこうだよなぁ、冤罪ってこうやってできるんだよなぁというだけでなく、

犯罪をしてしまう人っていうのは、こうして周囲から追いつめられていった弱い人たちなんだと共感しました。

鉄拳のパラパラ漫画の主人公は、決して弱くはなく、強い。強すぎるくらい。

ふつうの人はもっと弱くて、傷つけられたり、虐げられると、今度は周囲を傷つける側に回ってしまう。

まだ、見たことのない人があれば、ぜひ、PV見てみてください。

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YouTube: 馬場俊英 - 弱い虫(MV edit)

  

メロディーも歌詞もいいです。

こういう風にみんなが思えるようになれば、あたたかい社会になるのに。

「弱い虫」特設サイトはこちらから。

http://www.babatoshihide.com/EP3/


死刑廃止への道~京都女子大学公開講座 11.24~

2012-11-24 20:17:04 | 社会・経済

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京都女子大学で開催された公開講座 「死刑廃止への道」に参加してきました。

世界的に死刑廃止への流れが強まる中で、日本でも廃止への道が開かれるのかを、
宗教、法律、心の観点から考えるという講座で、3人の講師の先生がお話しされました。

1 死刑廃止に向けて : 京都女子大学現代社会学部 秋本勝教授 

2 法律的に考えた死刑存廃問題 : 東京理科大学理学部教養学科 三土修平教授

3 人は変われる 詩が開いた心の扉 : 作家 寮美千子氏 

という内容です。 
  
秋本教授からは、
世界的には死刑廃止国が139カ国(事実上の廃止国含)に対して存置国は58カ国であること、存置・廃止のそれぞれの理由、

日本でも725年に聖武天皇によって「死刑廃止の詔」が出され、818年に嵯峨天皇が死刑廃止を徹底した後は1156年に保元の乱で源為義が斬首されるまで300年以上にわたって死刑が廃止されたこと

などが説明されました。

また、日本では国民の大多数が死刑存置を支持しているとされる世論調査の結果にふれ、
フランスで死刑が廃止されたとき、時のバダンテール法相の

「民主主義と世論調査を混同してはならない。民主主義は世論に追従するものではない。政治家が自分の政治的見解を世論に追従させるのは、デモクラシーではなく、デマゴジーである。」

との発言が紹介されました。

被害者遺族の感情にも触れ、死刑によって報復感情は満たされても、それだけでは解決しない。悲しみや喪失感は続く。これに寄り添う手だてが必要であると話されました。

最後に、親鸞の言葉

「何事もこころにまかせたることならば、往生のために千人殺せと言はんに、すなわち殺すべし。しかれども、ひとりにてもかなひぬべき業縁なきによりで害せざるなり。わがこころの善くて殺さぬにはあらず。また害せじと思ふとも百人千人を殺すこともあるべし。・・・さるべき業縁のもよほさば、いかなるふるまひもすべし」 
が紹介されました。

殺す人が悪人で殺さない人が善人ではない、
「業縁」があれば殺す、「業縁」がなければ殺さない、
過去の出会い、環境や行動によって殺す、殺さないが分かれるのであって、
心が善いか悪いかで殺す、殺さないが分かれるわけではないという意味だそうです。

  

三土修平教授は、経済学がご専門ですが、東大寺で得度もされ、大学では教養学科で理系の学生に社会的な問題を教えておられるそうです。

三土教授からは、被害者保護と死刑存置が結びつくのか?という問題意識から、
木下恵介監督の映画「衝動殺人、息子よ」を紹介され、被害者が刑事裁判においてないがしろにされてきた実状が紹介されました。

わかりやすく刑事責任と民事責任についての説明があり、
刑事責任は社会全体からの制裁として行われること、
殺人などの事件では刑事責任は科されるが民事責任としての損害賠償がなされないことがほとんどであること、犯罪被害者給付金ができたがまだまだ不十分であること、
そのような状況の下では「死んで償え」という考えが盛んになることにはやむを得ない面があると話されました。

最後に、孔子論語の中から、

悪意に対しては理性で応じる、善意に対しては善意で応じるべきである

という話が紹介されました。

    
 
寮美千子氏は長編小説「楽園の鳥」で泉鏡花文学賞を受賞した作家さんです。

奈良少年刑務所で社会性涵養プログラムの講師をされています。

はじめに講師の依頼を受けたときは、少年受刑者のことが怖いという気持ちがあったけれど、刑務官から過酷な環境で育ってきた少年がほとんど、加害者になる前に被害者であった子どもがほとんどと教えてもらったそうです。

プログラムでは、寮氏の絵本を声に出して読んで、最後は少年たちに絵本の中の役になって朗読してもらう、そうするとまわりが朗読した少年に拍手してくれる。

初めてほめられることに、とても効果があるそうです。

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プログラムでは、朗読の次に、詩を書いてもらうそうです。

私もそうですが、詩を書けと言われても簡単には書けません。
寮氏は、少年たちに、つぶやきでもいい、愚痴や悪口でもいい、好きなことを書いて心の扉を開いてもらうそうです。

それでも詩を書くのが難しい少年には、「好きな色を書いてきて」と言うそうです。
そうしたところ、ある少年が、「雲」というタイトルで詩を書いてきました。それが、

「空が青いから白をえらんだのです」

というたった1行の詩だったそうです。

この詩がどうして生まれたのか、ぜひ、

奈良少年刑務所詩集「空が青いから白をえらんだのです」(新潮文庫)で読んで下さい。

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人から大切にされることによって、感情や人間の心を取り戻す。

そこから初めて、償う心が生まれてくる。

閉ざされた心のままでは償う心が生まれてくることはない。

変わらなかった少年は一人もいない。

寮氏が熱く訴えられました。
  
会場に、兄を強盗に殺された遺族の方が来ておられました。
事件からずっと犯人を憎み、死刑制度も当然だと思っていた。
でも、だんだんと死刑に対する考えが変わってきた。
そういう意見を言えないことがつらいと語っておられました。
とても重い言葉でした。
 
私たちのような実務法律家、法学者、宗教、文化、行刑に関わる人たちなど、様々な分野から問題提起をすることが重要だと感じました。

「空が青いから白をえらんだのです」 早速、買いました!

寮美千子氏のHPはこちら。 http://ryomichico.net/

  

三人の先生方の話は、どれも刺激的で、エネルギッシュで、感動的でした。

   

 


ペーパーレスで話そう! ~弁護技術を生活にvol.17~

2012-11-23 12:25:36 | うんちく・小ネタ

   

アメリカ大統領に再選したオバマ大統領

演説の上手さは有名です。(むしろ演説だけで当選したような・・・)

さて、オバマ大統領は、演説するときに決して手元に原稿を持っていたりしません。

自信にあふれた力強い演説はペーパーレスだからこそ生まれてきます。

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弁護士が法廷に立つときも同じ。 ペーパーレスで弁論をします。

紙を見ながら読み上げていたなら、弁護人も原稿を見ないと言えないんようなことなんだと思われ、裁判員の信頼を獲得することは出来ません。

   

でも、原稿なしで話をするのってどうしたらいいのだろう?

多くの人は何日も前から、練り上げた原稿を一生懸命丸暗記して、繰り返し練習しようとします。

ところがこれが失敗の元!

読み上げ原稿(フルテキスト)を作って、覚えようとすると必ずうまくいきません。

① ちゃんと覚えたとおりに出来るか不安なので、本番でムチャクチャ緊張します。

② 話ながら上を向いたり、言葉がとぎれたり、細かな言い回しを言い直したり・・・
  覚えたことを思い出して話そうとしていることが伝わり、聞いている人まで
  不安になってしまいます。

③ そして、頭が真っ白になって飛んでしまうと、もうすべて終わってしまいます。

   

せっかく一生懸命に暗記したのに・・・・・

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では、どうすればいいのか?

アウトラインだけを準備する(フルテキスト原稿は作らない)のです。

  

アウトラインを作るときは、出来るだけシンプルなものにする必要があります。

項目や見出し、キーワードだけを書きます。話すための文章は決して書きません。

構成はシンプルで、論理的なものにします。
話し手が本番で忘れてしまうような構成では、聞き手も理解できません。

A4一枚で完結させること。
それ以上の複雑なものは話すことは出来ないし、聞き手も消化しきれません。

  

このブログ記事の内容をプレゼンするためのアウトラインなら、こんな感じです。

導入 : オバマ大統領の演説のようにペーパーレスで話すにはどうすればいいか。
         力強さ、自信

結論 : アウトラインで話すこと

理由 : ① フルテキスト原稿は緊張、自信のなさを伝える
     ② アウトラインは覚えやすい
     ③ 聞き手も理解しやすい

結論 : アウトラインで話すと、ペーパーレスで、力強く、自信に満ちた話ができる。

 

この程度のアウトラインなら、覚えることはさほど大変ではありません。

アウトラインに従って、本番同様に、何度も何度も声を出して練習をしてみてください。

言い回しなどは、練習のたびに変わってもかまいません。

出来る限り、シンプルな言葉で話すようにしてください。

  

アウトラインだけしかないので、プレゼンしながら時間調整をすることも出来ます。
時間がなければ1分で話すことも出来ますし、具体例やたとえ話を織り交ぜれば20分でも30分でも話すことができます。

   

人前でスピーチをする機会があれば、ぜひ、アウトラインを作って、ペーパーレスで話すことに挑戦をしてみてください。

自信に満ちたあなたのスピーチに拍手喝采!! 間違いなし。

きっと出来ます。   

「Yes,We Can ! 」

  

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シンプルに話そう! ~弁護技術を生活に Vol.16~

2012-11-20 22:40:37 | インポート

       

「それでは、早速ではございますが、まずは、私のほうから、こういったあたりの問題点につきまして、ご説明をさせていただきたいと思っております。」

 

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はじめて法廷に来た裁判員

裁判のことも、法廷のことも、事件のこともわからず、

多くの傍聴人を前に緊張しています。

そんな裁判員に、冒頭の文章ように語りかけたら、ますます混乱してしまうでしょう。  

法廷で話をするとき、シンプルで、わかりやすい表現をしなければなりません。

  

「この問題点について説明します。」

言いたいことは、これだけの言葉でも十分に伝わります。

  

ところが、世の中には冒頭のような複雑な言い回しをする人がたくさんいます。

どうして、そんな言い回しをしてしまうのでしょう?

人前で話すときには特別な言葉遣いがある

敬語を使わないといけない

婉曲に言う方が品がいい

どうやら、そんな風に考えて、多くの人が複雑な言い回しを自然に使っています。

  

しかし、それは誤解。

複雑な言い回しをすると、わかってもらえない、伝わらないというだけでなく、

何か不都合なことがあるから誤魔化そうとしているのではないかと疑われたり、

早く本題に入れよ!と怒りを買ってしまうこともあります。
(心の中で怒った経験のある人は多いと思います。)

出来る限り無駄な表現を削ぎ落としてシンプルに話すことこそ、
聞き手のことをいちばん考えた、親切で、わかりやすく、優しい表現なのです。

そして、聞き手に、力強さ、自信を感じさせることも出来ます。

      

「もうすでにあなた様はお亡くなりになっておられるのではないかと、私は考えさせていただいております。」

ではダメですよね。

やっぱり、

「おまえはもう死んでいる。」 ですよね! 

あたたたたたーーーーーーーっ!!

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これからの忘年会シーズン。

人のスピーチを聴いたら、無駄な複雑表現を探してみてください。

    


衆議院選挙!弁護士も活躍します!! 

2012-11-18 22:09:17 | インポート

   

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来月は衆議院選挙

別に立候補するわけではありません。

しかし、選挙が行われると、選挙後、弁護士も忙しくなります。

選挙違反で捕まる人がたくさん出てくるのです。
(警察も、対策本部を設置して取り締まりを行っています。)

今回の衆院選のように、小党・新党が乱立し、新人候補者がたくさん出てくるような場合、

選挙に不慣れなために、思いがけず選挙違反をしてしまうことがあります。

私も、これまでに何度も選挙違反で捕まった議員や秘書等の弁護をしたことがありますが、

こんな事例が違反になります。

  

【買収】

あるグループの集まりに挨拶に来て欲しいと頼まれた候補者が、挨拶に行ったところ、みんなが食事をしていた。候補者は、一緒に食事をすることもなく挨拶だけして帰ったが、秘書が食事代としてお金を置いていった。

選挙カーに乗ってくれるウグイス嬢を派遣してもらった。法律で決まった金額では派遣してくれるところがなかったので、仕方なく、派遣会社の基準で報酬を支払った。

後援会で活動してくれていた人が、車を出してくれていたのでガソリン代を支払った。

選挙事務所にボランティアで来てくれた人に、余っていたお弁当をあげた。

電話作戦で、電話かけをしてくれたボランティアに日当を支払った。

有権者でもある知人、友人に晩ご飯をごちそうした。

お金や商品券、観劇券、旅行券をあげるなんて言うのは論外です。

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【事前運動】

告示前に、集会で、「次の衆院選で立候補します。よろしくお願いします。」と投票を依頼した。

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【戸別訪問】

有権者の家を回って、投票を依頼した。

  

【未成年者の選挙運動】

大学生(未成年)のボランティアに、投票依頼の電話かけをしてもらった。

候補者の子ども(高校生)が、選挙カーから「父をよろしく」と投票を呼びかけた。

  

【年賀状】

選挙区内の有権者に年賀状を送った。

 

【インターネット】

ホームページ、ブログを更新した。メルマガを配信した。

ツイッターでつぶやいた。フェイスブックで近況報告した。

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候補者本人が知らないうちに、選挙の統括責任者や出納責任者、秘書、後援会長などが、
勝手にやってしまっていることがあります。

候補者本人が知らなくても、連座制が適用されて当選が無効となることもあります。

  

そればかりか、警察の取り調べで追い詰められて、本当は知らないのに知っていたことになって、共謀が認められてしまうことも。

   

選挙に立候補しようというような方は、みなさんインテリなので、落とし物や免許の更新、
せいぜい交通事故くらいでしか警察のお世話になどなったことのない人ばかり。

逮捕・勾留されて密室で取り調べをされると、初めのうちは頑張れるのですが、
警察のあの手、この手ですぐに籠絡されてしまいます。

  

あの手、この手・・・・

逮捕されて手錠をかけられ、留置場に入るところでパンツの中まで身体検査
まず、プライドを奪われます。

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そして、取り調べで、いきなり机を蹴られて、「クズやろう!」と怒鳴りつけられます。
ほとんどの人は、ここで落ちてしまいます。

スーツもネクタイも着用できない留置場生活
弁護士以外と面会することも出来ません。

ここまでクリアすると、刑事はこう言ってきます。

「いつまでも頑張るんやったら、お前の家族からも話聞かなあかんなぁ、お前の世話してくれてる**さんにも警察来てもらわなあかんなぁ・・・」

地縁血縁、人の縁を大事にしてきたからこそ、周囲に担がれて立候補した候補者です。

周りの人に迷惑をかけるくらいなら、当選無効でかまわない、どうせ刑務所に行くことはないんだしと、ウソでも何でも自白してしまいます。

そして、「二度と選挙になんか立候補しない!」と後悔される方も。

これが、選挙違反の捜査の典型的なパターンです。

そんなことにならないために、

選挙には、刑事弁護に強い弁護士が必要です!! 

  

選挙違反の事件を弁護するたびに、取調べの可視化でいちばん恩恵を受けるのは政治家なのになぁと思います。 

どうして、政治家はさっさと可視化しないんだろう。不思議です。