近畿弁護士会連合会刑事弁護委員会の夏期研修会の二日目。
ホテルロビーから見えるびわ湖の風景です。
夏のびわ湖、会議室で研修...... もったいない.....(by K知事)
2日目に取り上げられたテーマは、
「拘置所における防御権」
具体的に問題となっているのは、拘置所の接見室での弁護人による写真撮影。
被告人がけがや病気の状況を見たり、事件の際の状況を動作で再現してもらったり・・・・・
そういうときにカメラ撮影して記録しておくことは、弁護活動でとても重要です。
警察も、捜査で同じことをしています。
ところが、弁護人が接見室にカメラを持ち込んで撮影をしようとすると、
拘置所職員から制止され、東京では撮影した弁護人に対して懲戒請求まで出されたそうです。
なぜ、拘置所がカメラ撮影を制限しようとするのか?
主な理由は「庁舎管理権」
拘置所内で撮影されると接見室の構造が外部に流出してしまい、
保安・警備上の問題があるので、制限する権限があるというもの。
拘置所は多くの人を収容している場所ですから、その秩序や保安、警備のために、庁舎を管理する権限は確かにあるのでしょう。
しかし、その管理権が、憲法上の被告人の防御権、弁護人依頼権、接見交通権に優先するはずがありません。
そもそも、接見室は収容者や弁護人だけでなく多くの一般の人も出入りしている場所ですし、
マスコミにも公開されているので、いまさら流出して困るような秘密はありません。
拘置所にいる被告人は、弁護人を依頼する権利があり、弁護人と立会人なくして接見し、書類やものの授受をすることができます。
日本国憲法37条3項 「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。」
刑事訴訟法39条1項「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人(略)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。」
裁判の準備などのために、被告人は弁護人と接見します。
「接見」とは何か?
それは、情報交換と意思決定です。
被告人は事件や自分自身のことを弁護人に伝え、弁護人は法的見解を被告人に伝え、
裁判の方針を決定しているのです。
ここで交換される情報の内容、存在形態には実に様々なものがあります。
当然、その伝達、記録の手段というもの様々になります。
たとえば、被告人がケガをしているという情報を伝えるとき、被告人は言葉でケガの状況を説明するわけではありません。
弁護人はまず、実際にその目で被告人の身体を見て情報を受け取ります。
それはビジュアル情報です。
被告人の言葉は、そのビジュアル情報を補足説明する情報になります。
では、そのビジュアル情報をどのようにして記録するのか。
メモを書いて、文字情報として残すのも一つの方法でしょう。
スケッチを描いて、ビジュアル化するのも一つの方法でしょう。
しかし、ビジュアル情報を、テキストや芸術である絵に変換するのは不便です。
その変換過程に弁護人の主観や技量が介入するため、客観性に欠け、不正確になります。
そんな方法よりも、写真を撮った方が、客観的でより正確です。
もし、法廷で本当にケガをしていたのか? そのケガはどの程度のケガだったのか?
ということが争点になったのなら、どうでしょうか。
裁判員なら、被告人から口でこんなケガでしたと説明されるよりも、
そのケガの写真を見せて欲しいと思うに違いありません。
どうしてこんなあたりまえのことが認められないのか。
拘置所の主張に対する理論的な反論を議論しました。
来年の9月に開かれる近弁連大会でもこの問題が取り上げられるようです。