弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
弁護士の活動、日々感じたことを弁護士目線でレポートします
弁護士をもっと身近に・・・

警察学校で講演してきました! 2014.10.9

2014-10-09 17:58:53 | 日記

京都府警の警察学校で講演をしてきました。

何年か前に、法廷で私の弁護活動を見た警察の方から声を掛けられて以来、年に2,3回、講演を依頼されるようになりました。

今回は、刑事になりたてのみなさん50名ほどが受講生です。

演題は「弁護士から見た警察捜査」ということで、

弁護士が警察捜査をどのように見ているのか、弁護士がどんなことを狙って弁護活動をしているのかという、

弁護人の戦術、戦略を、正直にお話してきました。

  

弁護士仲間からは、「そんなことまで話されたら困る!」と怒られそうな内容ですが、弁護士と警察も決して敵対関係にあるわけではなく、刑事司法をフェアなものとしていくために、共に協力していくべきことも多くあると思い話をしてきました。

内容は・・・・

無罪判決には必ず捜査側のエラーがある。
だから、弁護人としては捜査官のエラーを待っている。
エラーを見つけて、それを証拠として残そうと狙っている。
捜査官がエラーをしてくれないならエラーを誘う、エラーしたんじゃないかと疑いを作る。

そうした弁護活動に対抗するためには、
捜査官がフェアな捜査をしているということを、目に見える形で証拠に残しておかないといけない。
少しでもエラーがあったり、フェアじゃないと思われたら、裁判官はフォローしてくれるけど、裁判員は厳しい。

という総論を話したうえで、

取調べで、捜査官がついつい言ってしまいそうな発言をあげて、その発言を弁護人がどのように利用するのかを解説してきました。
例えば、
「たいした事件やあらへん、どうせ執行猶予や」
「普通やったら、こうなるんとちゃうか」
「弁護士は商売や、本当にお前のことを考えているのはわしらや」
「弁護士の先生はどう言うてはるんや?」
などなど…

「取調べでこういう発言してくれると、弁護人としてはとても弁護しやすくなるんです。」と解説してきました。

もう何年か同じような講演を続けています。
その効果があったのかどうか、最近では、京都府警での取調べでの捜査官の不適切発言というのをほとんど聞かなくなりました。

おかげで、弁護人としては、警察に文句をつけにくくなって本当にやりにくくなりました。

とはいえ、それは捜査が適正になされているということ。

喜ばしいことです。

 

 

 

 

 

   

 

 


教誨師 堀川惠子 講談社2014年

2014-10-06 14:54:49 | 本と雑誌

「教誨師」の紹介です。

本書は、14歳の夏にヒロシマで被爆した教誨師渡邉普相さんから、作者に託された遺言ともいえる作品です。

 

死刑確定囚は希望すれば宗教家による教誨を受けることができます。

しかし、その教誨でどのようなことが行われているのか、死刑確定囚がどのような話をしたのかは秘密であり、具体的な内容が教誨室の外に出ることは通常はありません。

教誨師は死刑の執行に立ち会います。しかし、誰がどのように執行されていったのかは秘密であり、執行の様子が執行室の外に出ることはありません。

渡邉さんはその死後にのみ公にすること条件にその秘密を作者に告白します。

堀川さんに対して、死刑確定囚の様子、死刑執行の様子が具体的に生々しく語られます。

渡邉さんは、若くして教誨師となり、死刑により命を奪うことを宣告された人々と向き合います。
浄土真宗の教え「悪人正機」の教えを伝えることで、死刑を執行される人々に「救い」を与えようと熱意を燃やします。
しかし、渡邊さんは自らの職務に懊悩し、やがてアルコールに溺れ、アル中で入院まですることとなります。
その事実を死刑確定囚たちにさらけ出して初めて渡邉さんは気付きます、自分の教誨は一方通行だった、大上段に構え、何かを伝えなくてはと焦ってばかりいたと、
教義を教え込むことよりも、ほんのひと時でもほっと出る時間、考えることのできる「空間」を作ることこそが大切なのだと。

事実を知らなければ、私たちは死刑について意見を持つことなどできません。
本書を通じて伝えられた事実は、死刑の問題を考える上で極めて重要です。
死刑確定囚のこと、死刑執行のこと、執行する人たちのこと、ぜひ、本書を読んで知っていただきたいと思います。

渡邊さんの告白を、本書にまとめ上げた作者の筆力にも感嘆せざるを得ません。

渡邉さんは、龍谷大学で学生生活を送っていたそうですが、当時の下宿は、どうやら私の実家のすぐ近くのようです。

まだ、私が生まれる前のころの実家近くの様子が伝わってきました。

 


舞妓はレディ 見てきました!

2014-10-03 10:48:50 | 映画

昨年、お世話になった周防正行監督の最新作「舞妓はレディ」を見てきました。

楽しく、心が温かくなる作品。
周防監督の京都愛が感じられました。
京都に生まれ育った人間からすると、よその人から見ると「京都」はこんな風に見えてるんだ!と新鮮です。
テーマパークの世界なのですね。

弁護士的には「それボク」「終の信託」と重いテーマもいいけど、やっぱりこういう明るいのがいい!

舞妓必須三単語「おおきに」「すんまへん」「おたのもうします」
一般の京都人が日常的に使っているわけではない言葉ですが、それでも小さいころから耳にしているので、発音はできるつもりです。
確かに、他の地域の人が発音すると、どこか違和感があります。
滑らかな曲線にならないんですよね。

両手の中指の第一関節と第2関節の間を背中合わせにして、他の指は立てて指先を合わせる。
親は離れる、子(子指)も離れる、兄弟姉妹(人差し指)も離れる。
でも、あなたと私は離れない…

本当だ!
意味が分からない人は、ぜひ、映画を見に行って下さい。


 

去年、周防監督とご一緒したときに行ったのはカラオケボックス!?
振り返ると恥ずかしい。
無理してでもお茶屋に行くべきだったぁ!

去年の様子はこちらから。

 

 

 

 

 

 

 

 


共謀罪って?何それ?

2014-10-02 16:04:34 | 社会・経済

今年度、京都弁護士会に「共謀罪新設阻止プロジェクトチーム」という委員会が作られました。

どういうわけか私がプロジェクトチームの座長(責任者)ということに...

共謀罪問題に詳しいということよりも、企画力を買われたようです。

ところで、「共謀罪」って、何のことかよくわからないですよね。

 

話し合って合意しただけで逮捕されてしまう!?

そんな法律が作られようとしているのです。それが「共謀罪」です。

近代刑法は心の中で犯罪をしようと考えただけでは処罰せず、その犯罪を現実に実行してはじめて処罰するのが原則です。
例外的に殺人や強盗などの重大犯罪は犯罪を実行しなくても準備しただけで予備罪として処罰されます。
ピストルを撃って相手を殺せば殺人罪、撃ったけれども相手が死ななければ殺人未遂罪、ピストルを準備しただけなら殺人予備罪になるのです。
「誰かを殺してやろう」と考えただけでは処罰されません。

ところが「共謀罪」は「誰かを殺してやろう」と二人以上で話し合い、合意しただけで処罰する法律なのです。

なぜ、共謀罪が問題なのでしょう?
犯罪をしようと話し合って合意することは悪いことだし、その後で本当に事件を起こすかもしれないから、被害を未然に防ぐために処罰してもいいような気もします。

しかし、悪いことを考えた人がみんな犯罪を実行するわけではありません。多くの人は思いとどまります。
殺してやりたいと思う人はたくさんいても、実際に人殺しをする人はほとんどいないのです。
酒の席で気に入らない奴の悪口で盛り上がり冗談で「ぶっ飛ばしてやろう!」と言っても、本当に殴りに行くことはないでしょう。
犯罪になると知らずに話し合い、あとで法律を調べたら犯罪と分かったからやっぱり止めたという場合もあるでしょう。
「共謀罪」ができるとこういう場合まで処罰されるおそれがあります。私たちはうかつには話もできなります。

盗聴されちゃう!?

実際に「共謀罪」を処罰するには、「話し合い」「合意」という「会話」が証拠になります。
そのために盗聴が必要になります。
電話やメール、SNS、会社や自宅での会話が盗聴されるかもしれません。
店舗や街角にたくさんの防犯カメラが設置されていますが、これからは高性能マイクを組み合わせて誰がどんな話をしているかまで監視されてしまいかねません。
いつ、どこで「会話」されるかわからないので、私たちの日常生活すべてが網羅的に盗聴や監視の対象となります。
潜入捜査やおとり捜査も行われるでしょう。
仲間の中にスパイがこっそり潜んでいたり、居酒屋で盛り上がっている時でも隣のテーブルで潜入捜査員が録音しているかもしれません。
共謀しても自首したら罪を免れるという制度になれば、嘘の密告で人を陥れることもできてしまいます。
犯罪を持ち掛けられて勢いで合意してしまったら実はおとり捜査だったということもあるでしょう。
「共謀罪」は、盗聴、監視、密告、おとりという手法を警察という国家権力が利用すること認めることになるのです。

これまで「共謀罪」は内乱予備・陰謀罪などごく例外的な場合に限られていました。
しかし今、政府が考えている法案は共謀罪の対象を法定刑が長期4年以上の犯罪すべてに広げるものです。
この法案だと殺人などの重大犯罪だけでなく、窃盗、詐欺、傷害、恐喝など大部分の犯罪が「共謀罪」の対象になってしまいます。

暴力団だけじゃない!?

政府は、国連越境組織犯罪防止条約に批准するための国内法整備に「共謀罪」が必要だと説明しています。
この条約はマフィアによる組織犯罪を取り締まる条約であるにもかかわらず、わが国で作られようとしている「共謀罪」は暴力団やテロ組織のみを対象とするわけではなく、
対象犯罪も幅広く、条約の目的をはるかに超えています。日本の刑法にはすでに予備罪があり、犯罪を実行していない人も共謀共同正犯として処罰でき、
銃刀法で凶器の所持が処罰されるので、新しく法律を作らなくても条約は批准できるとも言われています。

「共謀罪」は、私たちの日常生活に大きな影響を及ぼします。
いつ、どこで、だれに覗かれているかわからず、常に警戒しなければならなくなります。
処罰を恐れて、自由に考え、発言をすることができなくなります。

これまで「共謀罪」は国会で三度も廃案になりましたが、今の国会情勢ではいったん法案が提出されれば多数与党に押し切られ成立するおそれが十分にあります。

京都弁護士会では2014年11月22日(土)午後2時~平岡秀夫元法務大臣をお招きして共謀罪を考えるシンポジウムを開催します。

どなたでも参加いただけますのでぜひお越しください。

お問い合わせは京都弁護士会
https://www.kyotoben.or.jp/event.cfm#887