弁護士辻孝司オフィシャルブログ

京都の弁護士辻孝司のブログです
弁護士の活動、日々感じたことを弁護士目線でレポートします
弁護士をもっと身近に・・・

はじめての中国(北京) 2019.3.22-25

2019-03-29 16:11:37 | 日記

留学中の子どもに会うために、初めて中国に行きました。

行く前のイメージは、大気汚染、大渋滞、自転車で埋め尽くされる道路、大声で怒っているようにしか聞こえない会話、行列に割り込むようなマナーの悪さ...

と散々なものでしたが、そうした印象は実際に行ってみてすべて覆されました!

 

まず、空気がきれい。晴天率も高いようで、旅行中はずっと青空が広がっていました。

確かに10年前は大気汚染がひどかったようですが、今はせいぜい月に3日くらい酷い日があるくらいだそうです。

自転車も少ない、京都の方がはるかにたくさんの自転車が走っています。

そして、自動車の高級車比率が高い! 

BMW、ベンツ、アウディ、VW、レンジローバーで4割くらい。日本車が3割くらい。

新しい車が多いので排気ガスで大気汚染が生じることはないようです。

渋滞はありますが、京都もたいがい酷いので、それほど違いはないかなあ。

街もきれいでゴミがほとんど落ちていません。

道にごみを捨てる人もいないのですが、ごみ箱があちこちにあります。

驚いたのはTDLのキャストのような役割の人がいること!

ほうきとちりとりをもって道を掃除している人、荷台を付けたバイクでゴミを拾っている人がところどころにいます。

(みんなオレンジのユニフォームを着ていたけど、社会奉仕命令なのだろうか?)

 

 

人々の会話も特にうるさく感じることはありません。

まあうるさい人もいますが、日本だってそういう人はいます。

マナーも決して悪くありません。

観光地に入場するときにはきちんと並んでいますし、割り込まれることもありません。

コンビニのレジでも「お先にどうぞ」と譲ってくれますし、先を譲ると「謝謝」と言ってくれます。

観光地で物を売りつけられたり、お店の呼び込みがしつこかったりすることもありません。

治安も悪くないし、出かけていて怖いと感じることもありません。

(そこら中に警察官がいるし、地下鉄乗るときは手荷物検査だし、監視カメラも相当数ありますが。)

 

 

日本のテレビでよく言われているような悪い印象はまったく感じませんでした。

北京という都会だからということもあるのかもしれません。

(観光地に行くと、地方から北京にやって来た人たちであふれていて、北京の人たちとはちょっと様子が違います。)

中国政府も海外で流布される悪いイメージを払拭しようと努力しているように感じます。

百聞は一見に如かず、行って見ないとわからないものです。

 

世界遺産もたくさんあるので、観光地としても見どころ満載です。

3時間ほどのフライトで行けますので、是非、一度行って見てください。

 


裁判員裁判と量刑 2019.3.18

2019-03-29 15:31:15 | 映画

 

 

弁護人を務めていた裁判員裁判で判決の言渡しを受けました。

「懲役4年」

事実関係(有罪か無罪か)に争いがなく、量刑のみが争点の裁判でした。

最高裁判所が、裁判員裁判の対象罪名については裁判例を集積して「量刑検索システム」を作成しています。

弁護人、検察官、裁判官もそのシステムを利用して過去の裁判でどのような量刑になっているかを調べることができるのです。

さて、今回の裁判。

裁判の前に「量刑検索システム」で調べたところ、珍しい罪名だったため5件しか裁判例がありませんでした。

そのうち4件が懲役4年、1件が懲役5年

但し、懲役5年の事件は、他の事件も一緒に裁判しているのでちょっと前提が違う事例でした。

こんなの見たら、懲役4年にしかならないじゃないか!と思いつつ、

それでも所詮4件だけで統計的価値は低いし、今回の事件の個別事情からすれば執行猶予付きの判決で十分ではないかと弁論で挑んだのですが、結果は冒頭のとおりです。

 

裁判員裁判では、一般市民から選ばれた裁判員が量刑も判断します。

(アメリカの陪審裁判では、陪審員は有罪か無罪かのみを判断し、死刑以外の量刑は裁判官が判断します。)

裁判員が量刑することで、犯罪に対する不安感、被害者への感情移入から厳罰化が進み、検察官の求刑以上の重い判決が言い渡されたりしてしまうことがありました。

しかし、それでは裁判の公正さが失われるというので、裁判所は量刑判断の手法を指定し、量刑検索システムの活用を薦めるようになりました。

私は、量刑は犯罪事実の行為と結果に基づき決めなければならず、感情的に行ってはならないと思いますし、他の事案との公平性も重要だと考えています。

ですので、基本的には裁判所の今のやり方は正しいだろうと思っています。

とはいうものの、そういうやり方で量刑判断をすると、量刑は裁判をするまでもなくほぼほぼ決まってしまっています。

 

今回の裁判は事案そのものを見れば、必ずしも刑務所に服役させなくても、執行猶予にしてその間保護観察にして社会内で更生する機会を与えても良いと思える事件でした。

しかし、今の量刑判断の仕組みでは、量刑検索システムの枠組みを超える量刑判断を求めることは極めて困難です。

裁判員なら前例にとらわれずに、実質を見てくれるのではないかと訴えたのですが、壁は高かった....残念です。

今年は裁判員制度が始まって10年、裁判員が量刑判断に加わる制度を被告人のために活かしていかなければ!

 

 

 

 

 

 

 


「元刑務官が語る刑務所の実態~更生教育から死刑まで」 2019.3.17

2019-03-29 15:00:57 | 社会・経済

作家の寮美千子さんが中心として開催されている「奈良少年刑務所の心をつなぐ」会に参加してきました。

今回のゲストは、元刑務官の坂本敏夫さん。

2011年に京都弁護士会でも講演していただいたことがあり、今回、奈良にお越しになるということを聞き、ぜひとも再会したいとお邪魔してきました。

 

坂本さんからは、奈良少年刑務所の歴史、矯正教育として極めて先端的な実践を行い、それが成功していた。

それなのに、刑務所が廃止され、行われていた矯正教育がどこにも引き継がれなかった。

成功しすぎていたことから、出る杭が打たれちゃったんじゃないか。

奈良県は、刑務所が存在しない唯一の都道府県になってしまった。

とても残念...というお話から始まり、

日本の刑務所や死刑の実情、オウム事件の真相、えん罪が生まれる構造などなど、盛りだくさんのお話をしていただきました。

 

 

講演終了後は、寮さん手作りのお料理で懇親会!

なんと素晴らしい!どれもおいしすぎます。

多彩な参加者との交流はとても楽しい時間でした。

 

 

寮さんの最新刊「あふれ出たのはやさしさだった」は、あちこちで話題になっているようです。

寮さんが奈良刑務所で行われていた社会性涵養プログラムで起こった数々の出来事を描いたノンフィクションです。

読まなくっちゃ!

 

 

寮さん、坂本さんはぜひ京都弁護士会にお招きして講演していただきたいと思います。

 

 

 


「死刑、いま命にどう向き合うか」2019.3.2

2019-03-29 14:36:03 | 社会・経済

京都弁護士会・日弁連主催、シンポジウム「死刑、いま命にどう向き合うか~京都コングレス2020に向けて~」に参加しました。

 

★映画上映

第1部(午前)は「三度目の殺人」(是枝裕和監督)の上映です。

仮釈放中の殺人事件で裁判を受けている被告人(役所広司)と弁護人(福山雅治)の接見場面を通じて、裁判、真実とは何かを問いかけてきます。

必ずしも真実が明らかにならない裁判で、命を奪う死刑は正しいのかを考えさせられました。

 

★基調報告

第2部(午後)は、基調報告「京都コングレス2020~日弁連がめざすもの」で始まりました。

京都コングレスのテーマは「SDGsの達成に向けた犯罪防止・刑事司法及び法の支配の推進」です。

SDGsは国際的なレベルでの法の支配の促進を目標としており、ホスト国、日本には死刑廃止議定書や自由権規約委員会からの勧告を真摯に検討することが求められていると報告されました。

 

★ゲストスピーチ

シンポには、昨年12月に発足した「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」幹事長の遠山清彦衆議院議員、藤野保史衆議院議員、ローマ・カトリック教会の前田万葉枢機卿、アリスター・カーマイケル英国国会議員という多彩なゲストのスピーチがありました。

カーマイケル議員は、家族や愛する人を失い苦しんでいる被害者遺族との関係では死刑廃止は殺人犯を許すことになるとの根強い意見があることも忘れてはならない、犯罪被害者への共感を表さない死刑廃止は成功しない、そして、死刑廃止は決して簡単ではないが正しい道である、実現したとき、日本はもっと良い国になるだろうと語られていました。

 

★対談「対テロ戦争における命」

  

特別ゲストは、昨年シリアで解放されたジャーナリストの安田純平氏でした。

「死刑の基準-『永山裁判』が遺したもの」「教誨師」などのノンフィクションで知られる堀川惠子氏を聞き手に、シリアでの拘束経験を話されました。

物音を立てるなと言われ、音がしてしまうので身動きもできなかった、拷問を見せつけられ、死んだほうがましと思うこともあったなど過酷な経験が語られました。

安田氏と同じく死の恐怖に曝され長期間拘束された袴田巖さんを思い出すとの堀川氏のコメントに多くの人が共感しました。

 

★講演「国家が人を殺すとき,死刑を廃止する理由」

  

ドイツ人ジャーナリストのヘルムート・オルトナー氏の講演です。

誤判は決して稀ではなく無実の人が死刑になるおそれがある、

ヨーロッパでは最高刑が終身刑であることを多くの人が受けて入れている、

コングレスが開催される2020年には死刑廃止への国際的圧力も強まる、

人権活動家や刑法学者がイニシアティブを発揮すべきとのことでした。

ご著書「国家が人を殺すとき~死刑を廃止すべき理由」の日本版(日本評論社)では死刑執行の実情が書かれており、ぜひ勉強したいと思います。

(写真は、シンポ前日に龍谷大学で開催されたオルトナー氏の研究会の様子です。)

 

★パネルディスカッション「死刑,いま命にどう向き合うか」

 

パネルは、安田氏、堀川氏に加えて、龍谷大学浜井浩一教授も加わって行われました。

浜井教授から、日本の死刑にはリアリティがないため社会の反応が薄いとの問題提起がありました。

堀川氏からも死刑を取材してもどこからも情報が洩れてこない、メディアもタブー視しているとの指摘がありました。

死刑についてリアルに考えてもらいたいと、

戦場で見た「テロリスト」(安田氏)、永山則夫氏(堀川氏)、長期受刑者(浜井教授)の実像についてそれぞれ話がありました。

さらに、堀川氏から、取材で出会った犯罪被害者遺族の多くが孤立し、絶望的な状況にいることが話されました。

浜井教授からは、ノルウェーでは死刑もないが、他方で犯罪被害者のための官庁があり国が被害者・遺族を支援し、福祉国家として被害者・遺族の生活も守っている、だからこそテロ事件が起きても死刑を求める声が上がらないとの話がありました。

 

京都コングレスまであと1年です。

日本の刑事司法が国際水準に達しているとのかが問われます。