弁護士辻孝司オフィシャルブログ

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岡山弁護士会シンポ「死刑制度について考える」に出演しました。2023.1.28

2023-01-30 11:13:02 | 社会・経済

岡山弁護士会主催のシンポジウムにパネリストの一人として出演しました。

メインゲストは芥川賞作家の平野啓一郎氏です。

京都大学法学部在学中に『日蝕』(1998年)で芥川賞を受賞され、以後も、多くの作品を執筆されています。

昨年は、「空腹を満たしなさい」がNHKでドラマ化され、また、「ある男」が妻夫木聡主演で映画化されました。

映画「ある男」は日本アカデミー賞の13部門で優秀賞を受賞しています。

そんな平野氏ですが、死刑についても問題意識を持っておられて、「死刑について」という本を出しておられます。

ということで、平野氏に講演して頂いた後、学者と弁護士も交えてパネルディスカッションをするということになり、甲南大学の笹倉香奈教授と私がパネリストとして参加してきました。

芥川賞作家と一緒に登壇できるという身に余る光栄な機会をいただきました。

(証拠の写真です!)

平野氏の講演では、もともと死刑存置派だった自分が、死刑廃止に考えが変わっていったことについて話されました。

パネルディスカッションでは、世界における死刑廃止の動向、えん罪の問題、犯罪被害者支援と死刑廃止、弁護士会として死刑廃止に取り組むべきことなどについて、

学者(研究者)、弁護士、平野氏が、それぞれの立場から話をしました。

会場参加者とYoutubeでの配信視聴者で400名以上の方にご覧いただけたようです。

3月には袴田事件の高裁決定も出る見込みになっています。

死刑は、その人の存在そのものを消し去ってしまうという刑罰です。

えん罪(犯人でない人を犯人とする、量刑を判断する上での事実を誤認するなど)によって、無実の人、死刑になるべきでない人に、死刑を執行することは決して許されません。

神ではない人間がやる刑事裁判、「人」が死刑にすべきか否かを判断します。

最後は「人」が判断する以上、どんなに刑事司法制度を改善したとしても、完全に100パーセント間違いのない裁判はあり得ません。

死刑制度が存在している限り、間違って死刑になってしまう人が必ず出てきてしまいます。

人の命を奪った犯罪者は命を持って償うべきだという考えに立つとしても、死刑になるべきでない人が間違って死刑になってしまうことは許せないはずです。

刑事司法制度としては、刑罰として死刑制度を維持していくことは無理であると言わざるを得ません。

せっかく岡山を訪れたので、翌朝、早起きして岡山城と後楽園を周回してランニングしてきました。

お土産は、やっぱり「きびだんご」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


#えんざい-取調べへの弁護人の立会い&再審法改正 2023.1.13

2023-01-13 16:35:50 | 社会・経済

警察に疑われて、取調べに呼ばれている。

弁護士が警察や検察に同行して、取調べの間、ロビーや待合室でずっと待機して、いつでもすぐに弁護士に相談してもらえる態勢を組む。

そんなご依頼が、この数年、とても多くなっています。

まだ逮捕もされていない初期の段階、この段階で弁護士がついて、一緒に取調べに対応することには大きな意味があります。

そんな弁護人の重要性を理解してもらうために、京都弁護士会でリーフレットを作りました。

無実なのに間違って有罪判決を受けてしまったらどうしたらいいのか?

再審制度を改正しなければなりません。

わかりやすいリーフレットです。ぜひご覧になってください。

 

 


成人の日、裁判員は18歳から 2023.1.11

2023-01-13 15:53:47 | 社会・経済

1月11日は成人の日

民法が改正され、 2022(令和4)年4月1日から、20歳とされていた成人の年齢が18歳に引き下げられました。

が、やはり長年の習慣となっていた20歳成人の感覚から脱することは難しいようで、ほとんどの地域で「20歳の集い」など題して20歳になる学年を対象として成人の日の式典が開催されたようです。

 

民法の成人年齢引き下げとしては、18歳になれば一人で契約をすることができる父母の親権に服さなくなるという意味があります。

18歳になれば、親の同意を得なくても、自分の意思で様々な契約ができるようになったのです

そのため、18~19歳の人が騙されたり、間違って契約してしまう消費者被害に遭うようになるのではと心配されています。

 

民事上の契約以外の場面でも変化があります。

選挙権については公職選挙法が改正され、すでに2016年から18歳に引き下げられていました。

裁判員に選ばれる候補者名簿は、衆議院議員の有権者名簿を基にして作成されますので、選挙権と一緒に18歳になってもよさそうなものだったのですが、20歳以上のものから選ばれることになっていました。

ただ、それも民法の成人年齢引き下げに合わせて、いよいよ令和4年4月1日から18歳に引き下げられることになりました。

もっとも裁判員候補者名簿は一年ごと(1月1日~12月31日)に作成、翌年分を11月頃に編成するため、令和4年の名簿(令和3年11月に編成)には、まだ20歳未満の人は載っていませんでした。

令和5年の名簿は、成人年齢引き下げ後の令和4年11月に編成されていますので、18歳以上の人が載っています。

ということで、令和5年からは18歳、19歳の人も裁判員に選ばれる可能性が出てきました。

 

テレビや新聞を見ない、パソコンも使わない、情報はスマホから。

タイパを重視し早送りで映画を見る、音楽はイントロ不要、いきなりサビから。

そんなZ世代に、どうすれば伝わるのか?

法廷での弁護にも新たな工夫が必要です!

 

 

 


#えんざい~『まちがい』と向き合う これからの日本の刑事手続~第52回憲法と人権を考える集い 2022.12.18

2023-01-11 11:37:00 | 社会・経済

京都弁護士会の最大イベント「憲法と人権を考える集い」が開催されました。

今年度のテーマは「えん罪」

特に、取調べの問題、再審の問題を取り上げ、取調べへの弁護人の立会いと再審法の改正が必須であることを訴えました。

犯罪なんてしないし自分が捕まることなんてない、刑事裁判なんて自分には関係ないというのが、おそらく一般の人の意識。

そんな中でも、特に、Z世代と呼ばれる、これからの時代を作っていく人たちの問題意識を持ってもらいたいという観点でイベントを企画しました。

私も実行委員会事務局長としてイベントの脚本を作成し、そして司会者を務めています。

イベントの内容は、第1部「取調べ」、第2部「再審法改正」から成ります。

それぞれのパートは、

・京都弁護士会で制作したオリジナル裁判ドラマの上映

・えん罪事件を調査した大学生による研究発表

・朝日放送テレビ岩本計介アナウンサーがコーディネートし、学者・弁護士によるパネルディスカッション

で構成されています。

湖東記念病院事件のえん罪被害者である西山美香さんのインタビューもあります。

 

Z世代を意識してメインタイトルは 「#えんざい」

刑事裁判を知らない人にも飽きずに見てもらえるよう、各パートの時間を短く、ストーリー性を意識した構成にしています。

 

当日、ご覧いただけなかった方は、京都弁護士会のYoutubeチャンネルでぜひご覧ください。

各パートは15分~30分程度ですので、ちょっとした隙間時間、移動時間にご覧いただけます!

 

 


京都コングレスに参加(5) 感想&日弁連共同声明 2021.3.13

2021-03-13 16:28:16 | 社会・経済

京都コングレスは3月12日(金)に閉幕しました。

新型コロナウィルスの感染者を出すことなく6日間の日程が終わったようです。

多くのサイドイベントがあり、とても興味を惹かれたのですが、スケジュールの都合で参加できずとても残念でした。

しかし、参加した3つのサイドイベントはいずれもとても有意義で、面白いものでした。

死刑廃止、被害者支援の両サイドイベントでの海外スピーカーがいずれも、EUとオーストラリアからであったということも、何か示唆するものがあるように感じました。

EU、オーストラリアはいずれも死刑廃止国です。

そして、いずれの国・地域も、被害者支援の面でも世界をリードしています。

日本で、死刑廃止を言うと、被害者はどうなるんだ!遺族の気持ちを考えたら死刑廃止なんてありえない!と強い反発があります。

死刑廃止と被害者支援は対立する、相反する考えだと捉えられている面があります。

しかし、EUやオーストラリアでは、死刑も廃止され、被害者支援も先進的で充実しています。

死刑廃止と被害者保護、被害者支援は決して対立するものではなく、重要な人権課題として両立するものであることを、京都コングレスのサイドイベントが象徴しているものと感じました。

カルロス・ゴーン氏の事件を受けて、取調べに弁護士の立会いが認められない、長期の身体拘束、接見禁止、人質司法など、日本の刑事司法が国際的に批判されています。

これに対して、法務省としては、その火消しに躍起になっており、京都コングレスでもあちこちでそういう場面が見られました。

京都コングレスのための日本政府意見書のパンフにわざわざコラムが追記されていました。

しかし、世界中の刑事司法分野の専門家が、犯罪防止・刑事司法分野の諸課題について議論しつつ、その知見を共有し、コミュニケーションを図ることで,様々な分野における国際協力を促進し,より安全な世界を目指して協働するという目的を真に達成しようと思うのであれば、自らの刑事司法制度を謙虚にとらえ、内外の意見に耳を傾け、諸外国の制度に学ぶ姿勢が何よりも重要だろうと思います。

京都コングレスが、これからの刑事司法にとって意味のあるものとするため、ここに集まった多くの知見を現実の刑事司法制度の取り入れ、実践していくことが必要であり、弁護士会、弁護士もその一助を担っていく立場にあります。

死刑廃止、被害者支援、取調べの立会い、逮捕段階の被疑者国選など、京都コングレスを契機として、日本の刑事司法制度が改善、発展していくことを願うとともに、私もそこで働きたいと思います。

 

京都コングレスを受けて、2021.3.13、日弁連は、国際弁護士連盟(UIA)および駐日欧州連合代表部とともに、"Joint Message to Aim for the Abolishment of the Death Penalty in All Countries and Regions of the World" (世界のあらゆる国と地域での死刑廃止を目指す共同メッセージ)を発表しました。

日本において死刑制度廃止に向けての流れは着実に進み始めており、いずれ廃止されるでしょう。

これからは日本の死刑廃止ではなく、世界のあらゆる国と地域での死刑廃止のため取り組んでいくべき時代になりました。