循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

田中勝センセイの憂国

2009年05月09日 | 廃棄物政策
 環境関連の行政用語から「焼却炉・溶融炉」という言葉が一掃された。すべて「熱回収施設」に統一されたためである。ごみ焼却をサーマルリサイクルといいくるめる方便であり、言葉のマジックというにはあまりにもあざとい策略といえよう。
 ちなみにサーマルリサイクルとは典型的な役人用語であり、英語圏の有識者から嘲笑の的になっている和製英語だと村田徳治氏が笑っていた。

◆焼却炉建設は足踏み
 環境省はこのほど循環型社会形成推進交付金(略して循環交付金)の2009年度内示を行った。リサイクルプラザや最終処分場と並んで日量300トン以上の大型熱回収施設への内示が15件。その中には県庁所在地や政令都市の名も見える。
 循環交付金は5年間有効だから、最終的に能力ベースで1万トン/日になるだろうと「環境新聞」は報じているが、担当記者によると「入札が行われてメーカーが決まった件数は通常期の半分であり、依然自治体の財政状況は厳しい。内示を受けたからといって必ず建設が進むわけではない」と話している。
 さらに循環交付金の支出で国(環境省)が目論んでいるのはCO2削減、ごみ発電の効率化(発電効率23%以上)など、予算がつきやすい「環境」「エコ」への貢献度アップである。だがそれに応えるべき自治体は平成の大合併で図体だけは大きくなったものの、組織内にきしみが生じ、昨年以前の継続案件(整備計画)すら遅々として進んでいない。財政危機もますます深刻になる一方である。
 こうした現状に業を煮やし、憂国の情を発揚しているのが「心配せずごみを燃やせ」の鳥取環境大学教授・田中勝センセイだ。

◆廃棄物発電は再生可能エネルギー?
環境新聞の連載コラム(「日本版グリーン・ニューディールへの提言」)の第11回目(本年4月22日号)で田中勝センセイが懸命に発言している。同紙記者との一問一答形式だが、随所に廃棄物発電を再生可能エネルギーの主役に押し込もうという意図があからさまに透けて見える。以下、原文のまま紹介しておこう。
───どのように高効率発電を目指すべきか
「もう少し自治体が民間の活力を使って競争を促すことが必要だろう。個別自治体の処理ではなく、広域処理も考えてゆく必要がある。目標設定も一人当たりのごみを減らすことや、なるべく最終処分場に持ち込まないといったことが重要視され、エネルギー源を有効活用して発電して売電し、収益を上げるという部分は評価の物差しになっていない。この辺は見直すべきだ」
───日米比較すると
「米国のニューディールは化石燃料の使用を抑え、原子力と再生可能エネルギーに切替えていく政策だ。再生可能エネルギーでは太陽光、風力、バイオマス発電を掲げている。日本は特に太陽光については明確な目標を定め、優遇措置をとっている。しかし太陽光は昼間の太陽の出ている時だけしか発電しないし、風力も風がある時だけだ。それに比べ廃棄物は必要な時に燃やして必要なところに送ることができ、品質も優れている。もっと廃棄物発電所も優遇措置を設けるなど見直すべきだ」。
───廃棄物は再生可能エネルギーといえるか
「私は再生可能エネルギーに位置付けて良いと考える。計画的に使えば枯渇せず、継続的に活用できるのが再生可能エネルギーだ。廃棄物は必ず出てくるもので、使っても使わなくても同じに排出される。出てきたプラスチックごみが石油由来だから再生可能ではないとか、プラスチックを燃やすと炭酸ガスがでるから燃やすべきではないというのはナンセンスだ」。

◆燃やしてもプラスチックは出る
新エネルギー発電特措法(いわゆるRPS法)が本決まりになったのは2003年春のことである。多くのNPO団体が全国から集まり、経済産業省との交渉を行った。そこで「新エネルギーに廃棄物発電を含めない」との言質を取り付けたのである。
 だが転んでもタダは起きない経済官僚のこと、「廃棄物中のプラスチック等を除外し、バイオマス分だけを計算して評価する」という逃げ道を用意した。
 どこの世界に廃棄物の山からバイオマスとプラスチックを選り分ける名人が存在するのだ。
 その方針(屁理屈)はいまなお引き継がれ、2006年のRPS法見直しでは次のように文章化されている。「廃棄物発電のうち紙や生ごみなどバイオマス由来のものは新エネルギーに含めるが、廃プラスチックなど化石燃料由来のものは省エネ技術として支援してゆく」。
 廃棄物発電を新エネルギーに含めない根拠は、むろん焼却による有害化学物質や重金属類の揮散にある。また廃棄物発電が恒常化されれば経済原理でいくらでもごみが欲しくなるのは当然の話だ。
 しかし田中勝センセイを先頭とする“盛大に燃やせ派”は、公害を出さない技術(焼却炉技術)はすでに確立されており、「プラスチックは石油由来だから燃やすべきでないというのはおかしい。燃やしてもプラスチックは出る」(前出コラム)というかなりヤケっぱちの論理だが、廃棄物発電に正当性を持たせようという憂国の情だけは痛いほど伝わってくる。
 げに御用学者の種は尽きない。

注)1. 政府による「新エネルギー」の定義は、①中小水力発電、②風力発電、 ③ 地熱発電、④太陽光発電、 ⑤太陽熱利用、⑥雪氷熱利用、⑦温度差熱利用、⑧生物資源バイオマス、⑨バイオマス由来廃棄物となっており、廃棄物発電という表現はない。また以上の項目に大規模水力発電を加えて「再生可能エネルギー」としている。
注)2. RPSとは、R=リニアブル P=ポートフォリオ S=スタンダード の略

 ちなみに鳥取環境大学とは鳥取市に本部を置く日本の私立大学である。2001年に設置され、大学の略称は環境大学、環大、鳥環、エコ大などとなっている。田中勝センセイの教え子は卒業後、どんな仕事をするのだろうか。

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