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国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

偽装生コン事件・行政責任はアイマイに

2008年12月02日 | 廃棄物政策
 トカゲの尻尾切りーーー。こんな紋切り型のフレーズがまたも思い浮かぶ。偽装生コン事件といわれた当事者の六会コンクリートがとうとう廃業に追い込まれた。
 たしかに六会は悪い。だが罪があるとすればそれは無知の罪なのである。以下、12月1日の読売記事である。

《生コン偽装の六会コンクリート、廃業して補償費捻出へ
 日本工業規格(JIS)で認められていない「溶融スラグ」を混ぜた生コンクリートを製造した神奈川県藤沢市の「六会(むつあい)コンクリート」(小金井弘昭社長)が近く廃業し、問題の生コンを使ったマンションなど建物の補償費を捻出(ねんしゅつ)するため本社などを売却することが分かった。
 同社関係者によると、7月に問題が発覚してJIS認証が取り消され、製造を休止しており、事業継続が困難になっている。このため、廃業したうえで、本社や工場、敷地約7000平方メートルを売却する。売却先は県内の同業者になるという。
 溶融スラグが入った生コンを使うと、表面がはがれる「ポップアウト」現象が起き、建設中のマンションの販売や工事が中止になるなど影響が出た。生コンを販売した神奈川生コンクリート協同組合(横浜市)に、建物強度の調査や補償の請求が数十件寄せられている。
 六会コンクリート幹部は、「補償費用を工面するには、経営資源を売却するほかなく、廃業せざるを得ない。本社の売却額などは明らかにできない」と話した。
 同組合幹部は、「損害賠償の訴訟を起こす動きもあり、補償額がどれくらいになるか見通しがたたない」としており、不動産などの売却益を補償費が上回った場合は、組合が不足分を補填(ほてん)する方向でも検討する。
 神奈川県などの調査によると、問題の生コンは、横浜市、藤沢市などで建設中のマンションや病院、学校体育館など222件で使われていた。このうち、柱や梁(はり)など主要構造部に使用され、建築基準法違反とされた建物は、マンションやビジネスホテルなど70件に上る。
(2008年12月1日14時34分 読売新聞)》

 これについて日本消費者連盟の「消費者レポート」第1422号(08年11月27日)に以下のような文章を掲載させていただいた。

《今年(08年)7月2日、神奈川県藤沢市の六会(むつあい)コンクリート㈱という企業(以下六会)が、本来使うべきでない材料を生コン(凝固する前のコンクリート)に混ぜてゼネコンに販売したという事件が起こりました。コンクリートは骨材(砂と砂利)にセメントを加え、水を混ぜてつくりますが、六会は砂の一部に溶融スラグを混入させてコストを浮かしていたのです。溶融スラグは可燃ごみや焼却灰を高温で溶かしてできた有害物質の塊で、横須賀の産廃業者から無償で提供を受けていました。六会がこの違法行為を行なった期間は07年7月からの1年間で、今年6月までに受け入れた溶融スラグは9,350トン。事件が明るみに出たキッカケは建設した横浜市のマンションや藤沢市の工場で、コンクリートの表面がはがれる「ポップアウト」と呼ばれる現象が起きたことでした。

◆建築基準法第37条2号という逃げ道
この事件に慌てたのは建築基準法を所管する国土交通省です。同法第37条は以下のように定めています。「建物の柱や梁といった構造耐力上主要な部分に用いる建築材料はJIS規格に適合したものに限る」。しかしこれを厳格に適用したら神奈川県下だけで96件、戸数にして2000戸以上という溶融スラグ入りの違反物件すべてが不合格となり、進行中の工事もすべてストップを余儀なくされることになります。37条はそれを見越したものか、第2号で逃げ道が用意されていました。その条文は「前号に掲げるもののほか、指定建築材料ごとに国土交通大臣が定める安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する技術的基準に適合するものであって国土交通大臣の認定を受けたもの」となっています。
そこで国交省は神奈川県や関係市による連絡調整会議を二回開き、9月5日、六会生コンを大臣認定して工事中の物件を工事再開できるよう決めてしまったのです。業界に対して建築基準法を順守させる立場にある国交省がいち早く適法化方針を示したのは、建築業界の経済的な損失を最大限防ぐと共に、産業界からの非難が国交省に及ばないように超法規措置を取ったということです。

◆後付け適法化のご都合主義
 同省は今後、同じようにポップアウト現象を引き起こす可能性のある溶融スラグ入りの生コンを大臣認定しないとしており、今回の六会の生コンに限って特例で認定するというきわめてご都合主義の措置をとったのでした。
 しかし違反物件とされた横浜市内のマンションに住む40代の男性は新聞記者のインタビューに応え「今後何十年も生活するのにたった1ヶ月程度の調査で安全といわれても納得できない」と憤慨していますし、欠陥住宅対策に携わる弁護士は「聞いたことがない異例の措置。違反としたものをすぐさま適法としたら何のために建築基準法があるのか。これでは業者への救済措置だ」(神奈川新聞:08・08・06)と指摘していました。
 そして何よりも忘れてならないのは前にも触れたように、溶融スラグがどこの自治体も処理に困っている有害物質の塊だという事実です。そして官僚による「今回だけの特例」が如何に当てにならないものかということです》。

 溶融スラグは本来JIS化すべき物質ではなかった。しかし産業界の圧力に押され、国はやるべきでないことをやってしまった。そこで今度は六会事件に対する責任のなすりあいと、我関せずを決め込み、官僚は逃げてしまった。
 結局、すべての罪は六会ということになったのだ。さらにこの(多分)無知な企業に入れ知恵をした別の企業があったこともウヤムヤになってしまった。
 こうして偽装生コンは一件落着となりそうだが、溶融スラグのいかがわしさが内外に示されたという意味ではいい教訓というべきだろう。しかし師走を迎え、六会の従業員には同情を禁じ得ない。

 


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