循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

陥没跡地に溶融スラグ

2007年12月05日 | 溶融スラグ
 桁外れに膨大な溶融スラグを活用しようという試みが挫折しようとしている。栃木県宇都宮市大谷地区では1989年2月の陥没事故以来、地下埋め戻しの方策を模索していた。そこに浮上したのが溶融スラグを埋め戻し材に使うというアイデアである。その工法はいわゆる構造改革特区の規制緩和策として東京の飛島建設が他社に先駆けて研究を進めていた。国の事務局へ「特区申請」を出し、2004年7月、それが認定された。お墨付きが出たのである。
 この動きに呼応するように2004年2月、地元の石材協同組合が主要メンバーになっている住民団体「大谷創生協議会(以下創生協)」が宇都宮市に計画の事業化を提案した。何しろ埋め戻し材としてのスラグとなれば東京ドーム12個分である(写真は大谷石採掘現場・深さ60メートルの地下空間)。
はじめ創生協側は「宇都宮市など県内主要自治体からスラグの引取り代金(おおむねトンあたり1万円)を貰い、埋め戻しの工事費にあてる算段をしていた」(毎日宇都宮県央版07年10月29日付)。しかし間が悪いというべきか、06年7月、溶融スラグはJIS指定され、路盤材など土木資材に使用できる有価物に“格上げ”されたのである。宇都宮市のある幹部は「大谷特区構想は『無価物としてのスラグ』が前提だった。有価物であれば『処分費用を行政から貰って埋め戻し費用に充てる』という特区計画の根底が崩れることになる」との見解を示した。議会からも採算の合わない事業を市が認めるのかと特区申請に否定的な意見が続出した。
もともとスラグ埋め戻し構想は地元2つの自治会の了承が得られず、すでに07年1月時点で「9回目の特区申請見送り」になっていた。大谷地区には6つの自治会があり、その中で瓦作、立岩の2つが「溶融スラグの中身に不安がある」「地下水汚染が出たらどうする」と強硬な姿勢を貫いた。JIS化の流れがそれを加速させた。
大谷地区に限らず、たとえば岐阜県御嵩町のように「亜炭(質の悪い石炭)の廃坑で地盤崩落」といったケースが全国には数多い。宇都宮で特区事業が成功すれば前記の建設会社には洋々たる前途が開けた筈である。

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