
先の18、19日に行われたレイチェル・ポッジャー(vln)による「トリフォニーホール・バッハ・フェスティバル2012」は二日間、7ステージに渡る豪華なものであった。
18日
*コンサート1(11時~)
無伴奏ヴィオリン・ソナタ第一番
無伴奏チェロ組曲第三番(アリソン・マクギリヴレイ)
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第一番
*コンサート2(13時30分~)
ゴルトベルク変奏曲 ト長調 ディエゴ・アレス(チェンバロ)
*コンサート3(15時30~)
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第二番
無伴奏チェロ組曲第一番(アリソン・マクギリヴレイ)
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第二番
*コンサート4(18時30分~)
ヴァイオリン協奏曲BWV1041
チェンバロ協奏曲BWV1054
ヴァイオリン協奏曲BWV1055
ブレコン・バロック・アンサンブル
・アリソン・マクギリヴレイ[チェロ]
・ボヤン・チチッチ[ヴァイオリン]
・ヨハネス・プラムソラー[ヴァイオリン]
・ジェーン・ロジャース[ヴィオラ]
・ヤン・スペンサー[ヴィオローネ]
・マルチン・スフィオントケヴィッチ[チェンバロ]
19日
*コンサート5(11時~)
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第三番
無伴奏チェロ組曲第二番(アリソン・マクギリヴレイ)
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第三番
*コンサート6(13時30分~)
ゴルトベルク変奏曲 ト長調 ディエゴ・アレス(チェンバロ)
*コンサート7(15時30分~)
ヴァイオリン協奏曲BWV1056
ヴァイオリン協奏曲BWV1053
テレマン/3つのヴァイオリンのための協奏曲
テレマン/ヴァイオリン協奏曲BWV1042
ブレコン・バロック・アンサンブル
壮観である。連日のモーニング・コンサート。それが、小気味よいテンポよろしく、清々しい気持ちで朝からタップリと堪能してしまう。セカンド・ステージに小ホールでのチェンバロによる「ゴルトベルグ変奏曲」というのがこれまた宜しい。ボクは、チェンバロの生演奏を初めて聴いたのだけど、小ホールという抜群の空間のなかで響く、それはもしかしたらサロン的な音楽の場を連想させつつ、若き奏者、ディエゴの溌剌とした演奏がとても印象的だった。18日のステージでは、あろうことかミスが出てしまう。そんな瞬間を目の当たりにし、アンコールではその時の説明を交えて再演するのであった。二日目は幾分テンポを早くしたのだろうか、これまた違う印象が浮き彫りになる。
ポッジャーのヴァイオリンは闊達にして、バッハの魅力をとても「分かりやすく」という表現が正しいのか分からないけれど、そんなスタイルがあったと思う。ステージ毎にバッハの世界へ身を委ねるとき、演奏の始まりと同時にその瞬間から終わりのない演奏といった響きが脳内を駆け巡る。この不思議な体感がとても快感なのだ。それがCDの場合、演奏の作品の終わりは分かっている。だけど、このステージを聴いていると作品の持つ永遠性のようなものを感じるのであった。
ボクは、18日のステージ4だけ聴けなかった。それでも、この企画が音楽の素晴らしさと楽しさを伝えるだけでなく、「バッハ」を通して体感できるところ、そしてとても魅力的で得難いものであったということに尽きると思う。