今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

竜喰山・大常木山・飛竜山

2007年04月30日 | 山登りの記録 2007
平成19年4月29日(日)
竜喰山2,011.8m、大常木山1,962m、飛竜山2,077m

 奥秩父でまだ未登の山はいくつもあるが、普通に登れる一般コースの山というと
余り多くはない。その中でもビッグネーム?といえるのは飛竜山(大洞山)と笠取山かな。どっちにしても、一昨年雲取山の山頂から見た飛竜山の見事な山容はやはり一度は登っておきたい山だ。

 飛竜山に登ろうと計画したとき、始めに考えたのは後山林道から三条の湯を起点にするオーソドックスなルートだったが、このルートを辿った場合、日帰りだと飛竜山のみになってしまう。それにこのルートは東京都起点なので、どう考えても土日に登った場合「金魚のうんこ」状態は免れそうもない。

 和名倉に登った時に採った将監峠からピストンすれば、奥秩父縦走路が巻いてしまっている竜喰山と大常木山にも登ることができそうだ。そう考えて、今回はこのコースを採ることにした。GWだから当然人出も多いだろうが、竜喰山や大常木山なんか登る人はあまりいないだろうし、人が多い中でも静かな山を楽しめそうな予感がした。

 竜喰山と大常木山は唐松尾山と飛竜山に挟まれ、同じ様な高さで余り目立たない山容をしている。三峯雲取ルートから眺めると、特に目を惹く所もない幾つかのコブくらいにしか見えない。ネットで情報を探したら、このコースを辿っているものがあったが、奥秩父の2,000㍍級の山だけに、道が無くても普通に登れるレベルであるようだ。飛竜山ピストンだけでもエアリアで片道5時間弱だから、あまり難コースだと時間切れになる可能性もあるが、そういうことなら特に問題はないだろう。
 正確に言うと,今回はピストンではなくて微妙に周回コースになる。一ノ瀬から牛王院平に上り、将監峠を経由して竜喰山と大常木山の稜線を忠実に辿って、飛竜の鞍部に下り、飛竜山は一般コースどおりに登る。復路は竜喰と大常木を巻いて将監小屋を経由して林道を一ノ瀬に下る。ピストンだけど、同じ所は飛竜の部分だけで少しは変化を楽しめるかな?

 土曜の夜に家を出た。土曜は午前中晴れていたけど、昼頃から急に雨や強風で荒れた天気になった。高い山では雪が降った所もあったようだ。
 GWでも夜間に移動するので一般道の渋滞無し。青梅から奥多摩に向かうダム湖沿いを過ぎると、車も疎らになった。山梨県に入り、丹波山村を過ぎ、甲州市という名前になった旧塩山に入って直ぐに一ノ瀬キャンプ場入口から舗装された林道を行く。和名倉に登った時以来、2年ぶり。遠いから大分時間がかかってしまい、1時半に駐車場に車を停めて、シュラフにもぐって仮眠した。アラームは5時にセットした。外気温は1度で、ちょっと寒い感じ。

 目が覚めたらすっきりと雲一つ無い快晴。幸先の良いスタートだ。他に車は一台しかなく、GWにしては人も多くないようだった。5時半に出発。将監小屋に上っている林道に入る。急な林道に汗をかくが、結構風が吹いていて寒い。登り出しに寒くてフリースを着てしまったが、昼過ぎまでは気温が低くて脱げなかった。
 林道から牛王院平に上る尾根道を行く。林道を辿って将監小屋を経由するコースはだらだらして冗漫なので、こっちの方が一気に高度を稼げて早い。遠目に見えている金峰山は新雪が積もったのか真っ白。背後に下の方まで真っ白になった富士山が大きい。今年は富士山を見ながら山に登ることが多いなあ?

 6時50分に牛王院平着。雪がうっすらと積もって白くなっている(後で聞いた将監小屋のおじさんが言うには霰が降ったとのこと)。そのまま将監峠に向かう。

 将監峠には先客がいた。まさか、いくらなんでも竜喰山方面に向かうのか?と、思う間もなく、彼は膝丈の笹を漕いで急斜面を上って行くではありませんか。シカ避けのネットが山梨県側にぐるっと張り巡らしてあるその脇を、ダブルストックで上に向かって行ったのだった。こんなとこ登る人も…GWだからいるのか、少し消沈。彼が登っていって少ししたら、上の方で話し声がする。上から降りてくる人と彼が話をしているようだ。と言うことは、他にもこんなとこ登る人がいたんだ。ものすごい急斜面を登りながら、今日はちょっと『静寂境』は無理かなと思っていた。
 下ってきたのは肩からカメラをぶら下げた普段着のおじさんだった。えっ。と思ったが、直ぐ下に見える将監小屋の人であったので納得。今日はあまりにお天気が良いからカメラを持って上がって来たとのこと、昨日は霙が降ったあいにくのお天気だったとのことだ。もう、ここまで上がってくると、南アルプスや富士山が真っ白い姿でくっきりと勢揃い。春なのに、秋のように澄み渡って遠くの山もくっきりと見える。こんな晴天もそうはないだろう、とにかくこの日は午後になっても遠くの山が霞まずに見えていた。

 将監峠の直ぐ上の1,883mピークに着くと、そこは岩の上だったから素晴らしい展望台だった。先着の彼はまだ若く、話をしてみると航空測量で三角点の位置が分かるように、プレート板(例のプロペラの羽みたいなやつ)を設置している方ということだ。今日はこの先の竜喰山と唐松尾山にそのプレートを設置すると言うことらしかった(矢張り、いくらGWでも山登りの対象にここは選ばないよなあ…と納得)。竜喰山に向かった彼が去った後も、しばらく最高の展望台を楽しんだ。

 7時45分に1,883ピークを出発して竜喰山に向かう。カヤトに疎らに木々が生えた稜線はうっすらと踏跡があって緩く上下する。岩が点景の様に配置され、展望もいいけど景観もいい。でも木々が疎らなのはシカが食害した為のようだ。食害から保護するために、若木には保護ガードがしてあった。一度大きく下って登り返した樹林の中が竜喰山の山頂。周囲は鬱蒼とした、いかにも奥秩父といった原生林の片鱗が埼玉県側には残っているが、山梨県側はカヤトが広がりだしていた。樹林の小平地で全く展望が無い山頂には、二等三角点標石だけがあって、先行した彼は早くも仕事を一つ片づけて、お帰りの支度中だった。竜喰山8時10分着。木に「竜喰山」と書かれた達筆名板が一枚ぶら下がっていた。休む程の所でもないので、先に進む。この先は全くの単独になった。

 竜喰山を過ぎると基本的には埼玉県側は原生林・山梨県側のカヤトはそのままながら、トレースも無く歩きにくくなった。倒木に何度も膝をぶつけて、その度に誰も居ない山の中で「イテー」と大声を上げる。シカがあちこちにいて、人には会わないけれどシカはそこいら中にいた。足元にも糞がたくさん…。シラビソの樹皮はおいしいらしく、ぐるっと剥かれていたから、そのうち枯れてしまうだろう。コメツガなどの松類はまずいから食べないようで、そのうちシラビソは無くなってしまいそうだ。

 岩場とシャクナゲやアセビの薮も邪魔をする。ほんの時たま赤ペンがあったりするが、それはルートを示す標示としての意味は全くなかった。ルートとしては稜線を忠実に辿るだけ、今日のように見晴らしが利く晴天ならRFの問題もなかった(…ハズだった)。竜喰山を下ってからは、幾つもの岩混じりのピークを上ったり降りたりする。1,999ピーク以外は良くわからない。地図上のピークより数が多い感じ。この付近一帯が大常木山というのだろうか?1999ピークの次に高いかなと思った岩峰に上るとKUMOさんの「大常木山」の標識があった。ここは素晴らしい展望台で、秩父方面(東面)が良く見えた。東仙波と和名倉山が左手に、三峯から雲取までの稜線と飛竜山が右手に囲むように連なっていた。9時35分大常木山着。

 朝から荷物を置いて休んでいないので、ここで小休止とした。人の気配もしない山はここまでで、下って一般ルートに降りれば休日だから人も一杯だろう。これから登る飛竜山は当然人も多そうだ。10時15分に大常木山の岩を降りて飛竜山の鞍部に向けて下り始める。遠目に見えているカヤトが鞍部らしいがこの付近踏跡は全くない。

 今日はGPSを持参しているが、あらかじめ入力してあったデータの不備で全く役に立たなかった。
 2,500図を参考に辿るが、良い調子で岩場を下っていったら、どうも降りる方角を間違っていた事に気づいた。このまま下ると鞍部には行けない。登ることも降りることも容易ではない、かなりシビアな岩場をやっとこ降りてから気付いたから登り返すのもちょっとためらった。見上げると20㍍くらいの岩棚を降りてきた訳だけれど、どう考えてもこれは正規ルート(そんなものがあれば?)ではありえない。このあたり笹藪が結構深いし、巻いて逃げようとしたらガレた岩場になってしまった。でも、よく考えたら、わざわざ大変な思いをして稜線に戻らなくても、このまま下れば直に巻き道の縦走路に降りられるハズだからそのまま下ることにした。案の定、50㍍くらいで縦走路に降りた。大常木と竜喰を巻く縦走路も、奥秩父主稜の一般道としてはやや頼りない細道だった。あまりこの道は多くの人が歩かない様だ。

 幾つかの沢を忠実に巻き、カヤトの鞍部に着いた。大常木からかなり東寄りに進路を取らなければならなかったのを、西に下ってミスした訳だ。やはり主稜線の一般道だから、何人もの人とすれ違う。飛竜山の北面にはかなり雪が残っている。このまま直登するのは雪があるのでしんどそうだから、巻いていく道を行くことにした。登山道も固まった雪で滑りやすかった。禿岩分岐から東に進路を取って下からの道と合わさり、東西に長い頂上部の一角に出た。団体さんや行き交う何人もの人とすれ違う。一番高い頂上は山頂標示がなく、その先の樹林の中に飛竜山の標柱と三等三角点があった。11時30分飛竜山頂着。

 南の雲取方面にほんの少し眺めがあるが、展望は無きに等しかった。幸い今のここには誰も居ない。前後して到着した単独行者が2人いたが、休んでいるときにはそれだけで、意外に静かな山頂だった。

 飛竜山の山頂部でもシカが沢山いて、ぼくが来たときも逃げていったヤツがいたし。ここも矢張りシラビソは樹皮を剥がされているものが多かった。本日のまったりタイムで恒例のカップ蕎麦を食べた。

 12時丁度に山頂を降りる。禿岩に寄ろうと思ったらここは休んでいる人たちが一杯だった。ここから金峰山方面の大展望があったが、もうこの時間になるとさすがに霞んではいないけれど朝の澄み切った展望には及ばなかった。富士山から和名倉まで、ほぼ西から北まではパノラマだった。

 12時36分に禿岩から鞍部に下る。下りは更に雪が滑る。鞍部付近で団体さんや数人の登山者を抜いてそのまま長い巻き道を坦々と辿っていく。いつになっても富士山は真っ白い姿を曇り無く見せていた。数カ所桟橋で岩の剥き出た沢を渡る所もあったが、大体は単調で退屈な巻き道だった。

 竜喰山真下辺りの樹林の中でちょっと座って休んでいたら、小さくてかわいらしいイイズナ(オコジョの仲間)が出てきて、しばらくこっちを見ていたが、その後ぼくの直ぐ側を素早く走って森に消えた。それにしても、かわいい顔してたな(実はどう猛な動物ですが)。単独行だと山の動物に出会うことが多い。こんな稀少種が見られるのも一人でいるから…です。

 2時23分に将監小屋着。泊まりの手続きをしている人や、テン場にも2張りのテントがあった。休むことなく、林道を坦々と下り続ける。林道でも下っていくハイカーを数人抜いて、早足で降りていった。林道の途中から禿岩を西に突き出した台形の飛竜山が遠く望まれた。結構な距離がある。

 将監峠登り口の一軒家の前で、朝会った三角点マーカーを設置していた彼が休んでいた。「行ってきましたか?」と微笑んだ。3時33分に車に戻ってきた。駐車場にも3,4台の車しか無く、どっちにしてもGWにしては静かな山だったろう。
一日中晴れ渡ったこの上ない快晴で、念願の飛竜も道の無い2山も登れたからとても満足。久しぶりに満ち足りた山登りでした。

 帰りは丹波山村の「のめこい湯」とかいう日帰り温泉に寄ったが、ここばかりは混んでいてイマイチだった。帰路は時間的にもずっと渋滞で家まで4時間以上も掛かってしまった。9時少し過ぎに家に到着。

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