東方不敗の幻想

インターネットのジャーナリズムについての覚書

touhou_huhai@gemini.livedoor.com

情報格差についての徒然(2)

2006-09-07 01:43:00 | Weblog
Crossing Fingersの情報格差
http://www.keiyu.com/cf/archives/2006/09/01/post_50.html
にコメントしようと思ったが、長くなったのでこちらに書く。

相変わらず「他人事」でかっこつけの発言をする。

私の周囲にも複数の情報弱者、具体的にはネットを利用することができない人がいる。
私はネットを利用「する」ことが必ずしも幸せとは思わないが、する、しないの選択以前に「できない」ことは不利であり、あらゆる人間にとって機会は可能な限り平等でなくてはならないと考えている。
これは実行動を伴わない、実感の薄いお題目に過ぎないが、それでも私はそのように教育を受けたし、キリスト教徒が神を信じるように、現在までそれを信じている。

以上を踏まえて、次のように石田氏の「情報格差」記事にコメントする。



私は、「慈しみ」とは少し違う視点で考えてみようと思います。
現在、ネットを利用できる層は間接的に、ネットを利用できない層に対して不便をもたらしています。

例えば、旅客の数が一定の場合、楽天トラベルなどのネット旅行予約が増加すれば、店頭の旅行予約は減り、既存の旅行代理店は採算のために、窓口業務を縮小します。

Amazonによる書籍の通信販売が拡大すれば、街の書店はその分の顧客をとられます。

情報強者と情報弱者が等しく利用していた「不便な」サービスが、情報強者だけが利用できる「便利な」サービスに置き換えられる際、情報弱者があとに取り残されます。

こうした出来事は、ネットに限らず、昔からさまざまな局面でおきています。
(自家用車の普及で、地方の鉄道や路線バスが事業を縮小するなど)
#06/09/08 この場合は「交通弱者」と「交通強者」と言うべきかもしれない。

この場合、例えば自治体などの行政機関が書店や旅行代理店に助成金を出すべきでしょうか?それは行政にとって負担が非常に大きくなりすぎるでしょう。現実的なのは、むしろAmazonや楽天トラベルに、情報弱者を取り込めるようなサービスを要求することです。
しかし、行政が民間企業にそれを求めるのは、不自然です。そのような支配力を及ぼすべきかどうか大いに疑問があります。

企業にも、こうした情報弱者を「ロングテール」として取り込もうとする動きはあります。これは以前、映画配給会社シグロを最近の例として挙げました。

しかし多くの企業が、最も市場として大きな情報強者に対して最もサービスを手厚くすることは、営利組織として当然です。個人的な印象ですが、インターネット関連サービスが、既存サービスのシェアを奪っていく速度は、情報弱者に対する手当ての進ちょく速度をはるかに上回っているようです。

今が過渡期であるにせよ、こうした格差の拡大は望ましくありません。

さて問題を列挙しておいて、よい解答はないのですが、
(あいにく、私には学問もなく、愚鈍な性質ですので)
あえて卑近の分野にひきつけていうならば、
一つには、IT分野のジャーナリストの多くが、この問題により自覚的であるべきこと。
すでにネットがサービス業の「前衛」から「主流」に移りつつある現状、圧迫を受ける側に、悪の「既存・守旧勢力」だけでなく、情報弱者が居ることを考え出すべきです。

具体的に、Amazonやセブンアンドワイなどの販売高と、書店や中次ぎの販売高の推移をグラフにしたり、書籍の総流通数(つまり市場規模)は拡大しているのか、縮小しているか、などを調べるのは、私のような者には無理ですが、教養があり、頭のいいジャーナリストには可能です。
それを朝日新聞とか日経ビジネスといった既存メディア側でなく、CNETやITmedia、あるいはブログ上で発表することは意義があると思います。

書籍というサンプルの選択が、必ずしも情報弱者の需要に一致しているかどうかは不明ですが。(このあたりが、私のように他人事をしゃあしゃあと語る人間のダメなところです)

重要なのは世論の形成を通じて、IT企業側に情報弱者への配慮が重要と認識させることです。
「情報弱者なにかしてあげよう」というのは、私も含めて、いい気なもので、傲慢きわまりない態度ですが、それでも、問題を無視するよりはわずかにマシだと考えています。

少なくともIT系のサービス企業がプレスリリースに、「インタラクティブ」「Web2.0」と同じくらいの頻度で、製造/建築業者が好きな「ユニバーサルデザイン」「バリアフリー」といった単語を載せるようになるまで(どうせもっと気の利いた単語を思いつくでしょうが)努力して欲しいと願います。
あるいは米国でそうした動きが始まるまで待つというのでは、やや怠慢でしょう。

…あまり、ジャーナリズムの社会的意義を信じていないので、こうした解答は説得力に欠けますが…。

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2 コメント

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アクセシビリティ界について (石田優子)
2006-09-09 06:13:56
全部とは言いませんが、多くのアクセシビリティ界人の間では、ネットを使える障害者がこんなにも多いと統計情報をねじまげて、数が多いように見せています。



なぜなら、こんなにも使っている人がいるからアクセシビリティに力を入れようという話を組み立てるためです。



こんなところでも情報操作がなされているんですよ。
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Unknown (東方不敗)
2006-09-09 13:55:02
「さもありなん」というお話ですね。



まぁ…統計情報というのは…その…

マクロミル「データ係長」しりあがり寿

http://www.macromill.com/contents/datakakaricho/img/manga_27.gif

というようなものですので…。



アクセシビリティ業界に限りません。

特にジャーナリストがよく使う帝国データバンクや商工リサーチの調査など…まず結論ありきというか…いやいや、企業への名誉毀損かな…取り消します。



ただ、現状、定量的な数値なくして、

官公庁に対しても、一般読者に対しても、

主張に説得力は持ちえないというのは

事実でもあります。

これも「文化」でしょうか。
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